「輝く女性たち」:モダン広東レストラン「ザ・ライス・デン」ヘッド・シェフの工藤恵美さん

「私の英語が伝わらないのが歯がゆくて
営業中にキッチンで大泣きしたことも(笑)」

工藤恵美さん(39歳)
モダン広東レストラン「ザ・ライス・デン」ヘッド・シェフ
Emi Kudo

※2020年4月9日現在、レストランはイートイン禁止ですが、ライス・デンでもテイクアウェイを実施しており、もちろん恵美さんもキッチンで頑張っています!

Main–240「29歳のギリホリで来豪する前の日本での職歴は、レストランとは全く無縁の事務ばかりだったんですよ(笑)。シドニーに来て初めて、まずは日本食のお弁当のテイクアウェイ店で働き、次にラーメン屋さんのキッチンなどを経て今に至ります」

 セント・レナーズの駅から徒歩3分ほどの便利な位置にあるしゃれたモダン広東レストラン「ザ・ライス・デン」で働く唯一の日本人であるだけでなく、香港出身のオーナー・エグゼクティヴ・シェフの下、同店での経験わずか3年目にしてヘッド・シェフとして活躍する恵美さん。オーストラリアのレストランでウェイトレスではなくシェフとして働く日本人女性も増えてきたが、中華や広東料理の店となると、もしかして恵美さんただ一人なのではないだろうか。

「広東料理は一切経験がありませんでしたし、つくづくラッキーだったと思うんです。私がシドニーで最初にシェアしたユニットのオーナーの日本人女性がとても優しく面倒見のいい人で、ライス・デンのオーナー・シェフのロイと友達だったこともあり、ちょうどキッチン・スタッフを探しているというロイを紹介してくれたんです。オーストラリアの中華の店は特に、皆さんも経験あると思いますが一流店の飲茶を食べに行っても点心の載ったワゴンを押してくるフロア・スタッフが全く英語を話せないこともあったりと、なので中国語、私の場合、広東語が理解できないと最初から雇ってもらえないことがほとんどだと思うんですが、ロイは小さいころに両親と香港からシドニーに移住してきたため英語もネイティヴで、私のような非中華圏の外国人スタッフを雇うことに抵抗がなかったんでしょうね。ロイにビジネス・ヴィザのスポンサーにもなってもらい、未経験のキッチン・スタッフとしては奇跡に近いとも思っています」

 こうして、当初はキッチン・アシスタントとして働くようになった。

「最初の3カ月はひたすら野菜を切るところからみっちり修行させられました(笑)。そこから魚を切らせてもらえるようになり、次いでロースト・ダックのカットというふうに徐々にできることが増えていくのが嬉しかったです。オーナーとしてのロイは厳しいところは厳しいですが、ちゃんと世話してくれるのでやりがいがあります。ライス・デンでは数種類の点心も春巻きもすべて自家製で、今では私もすべてのメニューを作ることができるようになりました」

 もちろん、大変なことも経験している。

「まず英語ですね(笑)。私自身の英語もですが、キッチン・スタッフもネイティヴではない場合、フロアから回ってくるオーダー表の、しかもメニューに書かれてある英語の料理名なのに、これが私が言ってもスタッフに分かってもらえない。満席の日なんかはただでさえ忙しいので、私の英語が伝わらないのが歯がゆくて、営業中にキッチンで大泣きしたこともあります(笑)」

 よくいわれることだが、恵美さんも中華料理で一番大切なのは火力だという。

「家庭では絶対に店の味が再現できないのが中華料理だと思っています。大きな中華鍋を振る時点で、火の強さがないと美味しい中華は作れません。私が思う、それぞれの中華料理店が美味しいかどうかの基準となるのはチャーハンです。ライス・デンではメニューにある通常のライスと、チャーハンで使うライスは水加減が違うんです。通常のライスだと水分が多すぎてベチャッとした仕上がりになりますが、かといって硬すぎても美味しくないし、炊き上がりが硬い場合は水を足して蒸し直したりと調整しています」

「中華レストランの美味しさはチャーハンで決まる」という恵美さんが自信を持ってすすめるライス・デンの揚州スタイル・ポーク&海老チャーハン($20)
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 将来的には小さくても自分の店を構え、おまかせコースのみの広東レストランが出せたらという夢もある。

「中華料理は使う調味料の数も日本食とは比べ物にならないくらい多いし、中華料理の世界は学ぶのに終わりがないような気がします。キッチンの仕事は辛いことも多いですが、それを乗り越えたらまたひとつ成長できる。私が作った料理を食べて喜んでくれるお客さんの顔を見るのが何よりも好きで、それがあるから頑張れるシェフの仕事に就けて本当に良かったと思います。在住日本人の皆さん、ぜひライス・デンに食事にいらしてください!」

※ジャパラリアが過去にザ・ライス・デンを紹介したブログ記事はこちら

rice-den-int.jpgThe Rice Den

●30-32 Chandos St., St Leonards ☎ (02)9438-3612 ■ランチ(火~金)/11:30am-2pm、ディナー(火〜日)/火水木日5:30pm-9pm、金土5:30pm-9:30pm 月休 ◇酒類ライセンスあり thericeden.com.au