ロース・バーンが史上7人目のオージー・オスカー主演女優賞候補に!

 オージー女優ローズバーン(46)がアメリカの第98回アカデミー賞(通称オスカー)において主演女優賞にノミネイトされた3月15日に開催された授賞式では残念ながら受賞は逸したもののオスカー主演女優賞候補となった史上7人目のオーストラリア人女優という大出世ぶりであるオーストラリア在住日本人でもあまり馴染みがない人も少なくないであろうそんなローズバーンの経歴などを紹介

オージー俳優とオスカー

 100年近くも前の1929年に始まった米国のアカデミー賞はアメリカで公開された海外作品も対象とはなるものの、英語圏の映画賞とあって当然のようにノミネイトされるのは圧倒的に英語作品が多い。つまり、日本人を含む非英語圏の俳優がオスカーの演技部門で候補となるのは至難の業だが、日本人ではマーロン・ブランドと共演したハリウッド映画「サヨナラ」(1957)でナンシー梅木が非英語圏出身者初の助演女優賞候補となり、見事受賞した例がある。だがそれ以外は「ラスト サムライ」(2003)の渡辺謙(助演男優賞)、「バベル」(2006)の菊池凛子(助演女優賞)の2人が候補になったのみで、ナンシー梅木を含み3人とも主演ではなく助演部門でのノミネイションである。

 その点、英語圏出身者は断然有利で、特にイギリス勢は多数の俳優がオスカー受賞・候補歴を持つ。オーストラリア人俳優も数多くハリウッドに進出しているからオージー勢もそれなりに健闘しているかと思いきや、主演・助演賞含み男優ではジェフリー・ラッシュ(受賞)、ヒース・レジャー(死後受賞)、ヒュー・ジャックマン(候補)、コディ・スミット・マクフィー(候補)、ガイ・ピアース(候補)に続き、ローズ・バーンと同じ本年度オスカーにて助演男優賞候補となった若手のジェイコブ・エロルディで6人目、俳優としての初期の活動の場がもっぱらオーストラリアだったNZ出身のラッセル・クロウ(受賞)を入れても7人、女優では今回のバーンで10人目、と男女合わせても20人に満たない。

ローズ・バーンが本年度オスカー主演女優賞候補となった2025年のアメリカ映画「イフ・アイ・ハッド・レッグス・アイド・キック・ユー」

長らく中堅どころに甘んじたローズバーン

 さて、今回わざわざスペイスを割いてまでなぜ、それもオスカー候補になったとはいえ受賞を逃したローズ・バーンを改めて紹介するのかというと、過去にオスカー、それも主演女優賞枠で候補となったのはバーンで7人目だが、同じく主演女優賞候補歴を持つほかのオージー女優たちと比ると、バーンが最も“地味な存在”であったからだ。

 オーストラリア人初のオスカー候補者は男優ではなく女優のメイ・ロブソンで、彼女は主演女優賞候補となったが日本ではよほどの映画通でない限り名前も知らないはずで、また既に80年以上前に他界している。ロブソンと、主演ではなく助演女優賞枠で候補となったトニ・コレット、レイチェル・グリフィス、ジャッキー・ウィーヴァーの3人以外の、今もなお“現役で活躍する主演女優賞候補歴保持者”に限定すると、ニコール・キッドマン(受賞)、ケイト・ブランシェット(受賞)、ナオミ・ワッツ(候補)、マーゴ・ロビー(候補)、ジュディ・デイヴィス(候補)の5人である(※ロビーは日本ではマーゴット・ロビーと表記されることが多いがマーゴが正解)。若い世代にピンとこないのは5人の中で最高齢のジュディ・デイヴィスだろうが、デイヴィスは巨匠デイヴィッド・リーン監督の「インドへの道(A Passage to India)」(1984)で主演女優賞、こちらも巨匠ウディ・アレン監督の「夫たち、妻たち(Husbands and Wives)」(1992)で助演女優賞候補にと、若いころはトップ・スターだったし、それ以外のキッドマン、ブランシェット、ワッツ、ロビーに関しては説明の必要もないだろう。

 そんな中にあってのローズ・バーン。1979年生まれ、シドニーはバルメイン育ち、現在46歳のバーンは、芸歴自体は16歳でデビューしたニコール・キッドマンより若い15歳の時にさかのぼる。デビュー作は劇場映画だったがその後オーストラリアのテレビドラマで演技経験を積み、二十歳の時の2作目の劇場映画は後にオスカー助演男優賞を死後受賞することになるヒース・レジャーの相手役に抜擢されたオージー映画「トゥーハンズ銃弾のY字路」(1999)。

ヒース・レジャーと共演した「トゥー・ハンズ 銃弾のY字路」(1999)

 さらにその翌年の21歳の時には日本の川口力哉(旧芸名:RIKIYA/黒川力也)と共演したオーストラリア映画「ザ・ゴデス・オブ1967」(2000)で視覚障害者のヒロインを演じ、なんとヴェネツィア国際映画祭女優賞に輝いている。ヴェネツィア国際映画祭を受賞したオーストラリア人俳優は上記男女優全員の中でローズ・バーンただひとりである。それだけではなく、21歳というのは海外の映画賞を受賞したオージー俳優としては最年少記録でもある。

ヴェネツィア国際映画祭女優賞を受賞したオーストラリア映画「ザ・ゴデス・オブ1967」(2000)

 順調にキャリアを重ね、23歳でハリウッド進出を果たした2002年にはどちらも主役ではないとはいえ「スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃(Star Wars Episode II: Attack of the Clones)」とマット・ディロン監督・主演の「シティ・オブ・ゴースト(City of Ghosts)」の2作ものハリウッド映画に出演。24歳の時には日本でもコアな洋楽ファンにその名を知られるオージー・ミュージシャン、ベン・リーと共演したオーストラリア映画「レイジインプラシッドレイク」(2003)で初めて母国でもその才能を認められ、全豪映画界で最も権威あるオーストラリア映画協会(AFI)賞(現オーストラリア映画テレビ芸術アカデミー賞)の主演女優賞にノミネイトされた。

ベン・リー(右)と共演し、母国オーストラリアで初めてAFI主演女優賞候補となったオーストラリア映画「ザ・レイジ・イン・プラシッド・レイク」(2003)

 20代前半の若さでヴェネツィア映画祭女優賞受賞、本国でもAFI賞主演女優賞候補になったバーンには、それはそれは華々しい未来が待っていてもよさそうなものだったが、その後長らく“中堅どころ”に甘んじることになった。といっても出演作品には事欠かず、ブラッド・ピットの相手役を務めた「トロイ」(2004)、キルスティン・ダンスト演じる王妃マリー・アントワネットの親友ポリニャック公爵夫人役に扮した「マリー・アントワネット」(2006)といった大作・話題作へはコンスタントに出演していたが、“主役級”の役どころ、それも大ヒットになかなか恵まれなかった。

ブラッド・ピットの相手役を務めた「トロイ」(2004)

キルスティン・ダンスト(中央)演じる王妃マリー・アントワネットの親友ポリニャック公爵夫人役(右)に扮した「マリー・アントワネット」(2006)

軌道に乗り始めるものの準主役級がメインのその後

 そんなローズ・バーンに転機が訪れたのは2007年スタートのアメリカのテレビドラマ「ダメージ(Damages)」だった。2012年まで5シーズン続く大ヒットとなった同ドラマの全シーズンで、主演のグレン・クローズに次いで最も重要なキャラを演じたバーンはエミー賞とゴールデン・グローブ賞の助演女優賞にノミネイトされ全米、そして世界規模での注目を集めるようになった。

ハリウッドの大女優グレン・クローズ(左)と共演したアメリカのテレビドラマ「ダメージ」

 劇場映画では「ダメージ」のシーズンがまだ続いていた中、32歳の時に出演した2011年のハリウッド映画「ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン」が彼女にとっての“ブレイク作品”といえるだろう。同映画でもバーンはヒロインではなかったものの、映画自体は全世界で3億ドル近い興収を弾き出し、主要キャラのひとりを演じたバーンも世の映画ファンの間での認知度を高めた。ちなみに同映画は別のオージー女優でこちらも主役級の役ではなかったがレベル・ウィルソンの出世作としても知られる。

主役ではなかったがローズ・バーンの出世作として知られる「ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン」(2011)

2013年のオーストラリアのアンソロジー映画「ザ・ターニング」ではケイト・ブランシェットらを抑えローズ・バーンが同作から唯一、オーストラリア映画テレビ芸術アカデミー(AACTA)賞主演女優賞にノミネイトされ、見事受賞

オスカー女優スーザン・サランドンと母娘役で共演した「マダム・メドラー お節介は幸せの始まり(The Meddler)」(2015)

 とはいえ、その後もバーンは100%主役ではなく準主役級の役柄での出演作がメインだった。「ブライズメイズ」のようなコメディも得意とすることから、シリアスなドラマ映画のプロデューサーや監督からは自身の作品でぜひ起用したくなるような“演技力のある女優”として見られなかったということもあるかもしれない、賞レイス、特にオスカーとは一切無縁だった。前述の現役オージー女優5人がオスカー主演女優賞候補となったのは全員20代からせいぜい30代前半の若さだったのに対し、ローズ・バーンは40代半ばに差しかかっていた。

オスカー主演女優賞候補となった「イフ・アイ・ハッド・レッグス・アイド・キック・ユー」(2025)

 それが2025年のアメリカ映画「イフ・アイ・ハッド・レッグス・アイド・キック・ユー」で46歳にして自身初のオスカー主演女優賞候補となったのは、長年中堅どころに甘んじていたバーンにとってはまさしく快挙中の快挙である。オスカーこそ受賞できなかったもののバーンは同映画でゴールデン・グローブ賞ミュージカル・コメディ部門主演女優賞、そしてベルリン映画祭銀熊賞を受賞した。

 今や押しも押されぬ演技派、“オスカー候補女優”となったローズ・バーンにはこれから準主役ではなく主役級の出演オファーが続々と舞い込むことだろう。バーンが今後、どんな映画を選んでいくのか楽しみではあるが、案外、あっけらかんとしたオージー気質のバーンのことだから、「私は主役よりも脇役の方がやりがいがあるのよね」と律儀に準主役作品に出続けるかもしれない。

【追記】記者はハリウッド進出直前の21歳だったころのローズ・バーンにシドニーで独占インタヴューしたことがあり、その際の彼女の印象などをジャパラリア公式YouTubeチャンネルの投稿で語っているので興味のある人はぜひこちらから視聴を!

【ジャパラリア公式YouTubeチャンネル最新投稿】
●シドニー・レストラン取材:呑み処 いんでぃご
●シドニー・レストラン取材:タイネシア
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