オール・セットの絢爛たる世界「ムーラン・ルージュ」

unnamedムーラン・ルージュ

Moulin Rouge!

(オーストラリア・日本ともに2001年公開/122分/MA15+/恋愛ミュージカル)

監督:バズ・ラーマン
出演:ニコール・キッドマン/ユアン・マクレガー/リチャード・ロクスバラ/デイヴィッド・ウェナム/カイリー・ミノーグ

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 ハリウッド女優となって久しかったニコール・キッドマン(「LION/ライオン 〜25年目のただいま」「虹蛇と眠る女」「オーストラリア」「デッド・カーム/戦慄の航海」「BMXアドベンチャー」)が挑戦した初のミュージカル映画で、前夫トム・クルーズとの離婚の翌年、こちらも初の米オスカー主演女優賞候補となった作品。5,000万ドルの予算に対し1億8,000万ドル以上の興収を弾き出し、「バットマン・フォーエヴァー」(95)や「アクアマン」(18)など助演作ではなく純然たる主演作としても彼女の最大のヒット作として有名(※数字だけを見ると実際には興収2億ドルを突破した08年の「オーストラリア」の方が上だが、「オーストラリア」は製作費も1億ドル以上投じられている)。米豪合作映画とはいえ、キャストもスタッフも主要どころはほとんどがオーストラリア人で占められ、全編シドニーのフォックス・スタジオにセットを組んで撮影されたから、“アメリカも出資したオーストラリア映画”と例えてもいいだろう。オリジナル楽曲のほかマドンナやエルトン・ジョン、ビートルズなどのヒット曲を盛り込んでいる点も話題を集めた。

互いに引かれ合うサティーヌ(ニコール・キッドマン)とクリスチャン(ユアン・マクレガー)
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 監督は日本でもヒットした「ダンシング・ヒーロー(Strictly Ballroom)」(92)、レオナルド・ディカプリオ主演の「ロミオ+ジュリエット」(96)のバズ・ラーマン(「オーストラリア」)で、その2作と本作までを合わせてラーマン監督の“ミュージカル三部作”と呼ばれている。ラーマン監督夫人で夫が監督したすべての映画の美術監督を務めているキャサリン・マーティンが本作でも美術監督と衣装デザインを担当、同年度オーストラリア・アカデミー(AFI)賞(現AACTA賞)では作品、監督、主演男優(ユアン・マクレガー)、主演女優(キッドマン)、助演男優賞(公爵役のリチャード・ロクスバラ)など10部門にノミネイトされ、衣装デザイン、音響、編集、美術、撮影賞の5部門受賞に輝いた。米オスカーでもキッドマンの主演女優だけでなく作品賞を含み8部門で候補となり、美術、衣装デザイン賞の2部門を受賞した。ちなみにキャサリン・マーティンは本作と「華麗なるギャツビー」で2度オスカー受賞、「オーストラリア」「ロミオ+ジュリエット」を含めこれまでに合計4回オスカーにノミネイトされている(いずれも衣装デザイン部門)。

米豪のアカデミー衣装デザイン賞と美術賞を受賞した華麗な衣装やアクセサリー、セットにも注目(右はサティーヌに言い寄る公爵役のリチャード・ロクスバラ)
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 キッドマンは本作の翌年、「めぐり会う時間たち(The Hours)」(02)で再度オスカー主演女優賞候補となり見事受賞、史上初のオージー・オスカー女優となったが、キッドマン最大の当たり役という意味では圧倒的に「ムーラン・ルージュ」のインパクトの方が強い。見終わった時に、さてキッドマンの演技は上手だったのか下手だったのか、そんなことなどどうでもいいと思わせるほど、本作におけるキッドマンの美貌は光り輝いている。歌って踊れるという隠れた才能を発揮した点でも高く評価されるに値する。

 スコットランドから招かれて撮影参加のもう一人の主人公を演じたユアン・マクレガーも本作の出演者の中で一番の歌唱力を披露、また、キッドマン演じるサティーヌを我がものにしようと狙う公爵役のオージー男優で「ヴァン・ヘルシング」(04)のドラキュラ伯爵役が有名なリチャード・ロクスバラ(「ブレス あの波の向こうへ」)も好演(※日本では“Roxburgh”という綴りからか彼の名字を“ロクスバーグ”と書かれるが、エディンバラ<Edinburgh>と同じ発音でロクスバラが正解)。特にロクスバラは本来正統派のハンサムかつ知的な雰囲気の役柄が多い中、本作では裏声も使ったりして情けない公爵を違和感なく演じて笑わせてくれる。オージー男優ではほかにも、二枚目から三枚目まで何でもこなすデイヴィッド・ウェナム(「LION/ライオン 〜25年目のただいま」「ドリッピング・イン・チョコレート」「オーストラリア」)が本作では女装キャラクターで登場、ファンでもしばらくはそれがウェナムだと気づかないかもしれない。オージー男優勢ではさらにもう一人、性格俳優ヤセック・コーマン(「ブレス あの波の向こうへ」「オーストラリア」)が野太い声の野性味溢れる男臭い魅力を持つアルゼンチン人に扮しているのが印象的(※日本では“Jacek”という綴りから彼のファースト・ネイムを“ジャセック”と書かれるが、ポーランド出身のオージーであるためヤセックが正解)。

デイヴィッド・ウェナムは女装の作家役(中央)で前半の数十分のみ登場
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ムーラン・ルージュの一座の愉快な仲間たち(右端がニコール・キッドマン、その隣がユアン・マクレガー、前列中央にアルゼンチン人役のヤセック・コーマン)
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 キッドマン以外の女優で一番美味しい役どころを演じたのは1シーンだけ登場のカイリー・ミノーグで、出番こそわずかながらコケティッシュな魅力を振りまき、フレッシュな印象を残すことに成功している。本作とは関係ないが、キッドマンとミノーグといえば、UKミュージシャンのロビー・ウィリアムズのシングルでそれぞれデュエットしたオージー女性アーティストという共通点を持つ。ほか、ムーラン・ルージュの踊り子たちの世話をする、踊り子たちにとっての母親的存在のマリー役にヴェテラン・オージー女優ケリー・ウォーカー(「ホールディング・ザ・マンー君を胸に抱いてー」「オーストラリア」「アリブランディを探して」)。

1シーンだけ登場のカイリー・ミノーグ
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あえてオール・セットと観客に分かるよう意識されたセットはすべてシドニーのフォックス・スタジオに組まれた
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「椿姫」を題材にしたストーリー自体は決して新鮮ではないが、ラーマン監督の斬新な手法によって、圧巻のカンカン・シーンを含み絢爛たるパリのムーラン・ルージュを非常にシュールに、デカダンの要素たっぷりに描いている。ドタバタ・コメディ調の前半から、俄然大きな盛り上がりを見せるドラマティックなクライマックスまで、観る者の目をとらえて離さない。ヴァレンタインがテーマの映画ではないが、きらめきたる衣装やセットも含み、ヴァレンタインデイに恋人と観るにふさわしいミュージカル映画としておすすめ。

【シーンに見るライフスタイル】クリスチャン(ユアン・マクレガー)が仲間たちと緑色の飲み物を飲み、幻覚として目の前に現れるグリーン・フェアリー(カイリー・ミノーグ)を見るシーンで出てくる“アブサン”は1900年当時、広く愛飲されていた非常にアルコール度数の高い実在のリキュール。

Story

 1900年、花の都パリへやってきた作家志望の青年クリスチャン(ユアン・マクレガー)は、ひょんなことから高級ナイトクラブ、ムーラン・ルージュで行われるショウの台本を書くことになり、ムーラン・ルージュいちの売れっ子スターであるサティーヌ(ニコール・キッドマン)に一目惚れ。一方のサティーヌは、クリスチャンのことを彼女に思いを寄せる富豪の公爵(リチャード・ロクスバラ)と勘違い。公爵の愛人になって手っ取り早く大女優になりたいと思っていたサティーヌは、クリスチャンの正体が作家の卵にすぎないことを知り失望するが、徐々にクリスチャンに引かれていく。公爵の目を盗んで束の間の幸せを噛みしめる二人だったが、人気絶頂のサティーヌは血を吐くようになり…。

「ムーラン・ルージュ」予告編

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