「障害のあるなしにかかわらず音楽を通して
一つになれるような活動を展開したい」
オーストラリア音楽療法協会認定音楽療法士
(「ミュージカル・ビトゥイーン」主宰)
Registered Music Therapist / NDIS Registered Provider
名郷泉さん
Izumi Nago
「私にとっての音楽療法は自分の人生そのもので、一人ひとりのクライアントがどうあれば幸せなのかを探ることは、自分自身がどうあれば幸せなのかを探ることとも繋がっています。また一言で音楽療法といってもさまざまなセオリーやアプローチがあり、私は実践を通して自分の目指す音楽療法を模索してきましたが、同時にそれは自分自身を探す旅でもあると感じています。セラピストとともに創り出す音楽によってクライアントの中に変化が起こるということは、セラピスト自身にも同時に変化が起こります。言葉や表層意識を超えた本当の気持ちや自分自身が、音楽の中にはごまかしようもなく現れます」
主に障害を持つ人々を対象に音楽療法士としてセッションを行う泉さん。日本で音楽療法を学び5年ほど日本の病院や福祉施設などで実践した後、さらに深く音楽療法を学びたいとの思いから2003年に来豪。UTS音楽療法準修士、WSU創造的音楽療法修士を修めた後、養護学校やノードフ・ロビンズ音楽療法センターなどに勤務、また自身の音楽療法クリニック「Musical Between(ミュージカル・ビトゥイーン)」を起ち上げ、当初はコミュニティ・センターを借りていたのが2018年からは自身のセンターをペナント・ヒルズに構えて活動を広げている。現在は5人のスタッフとともに音楽療法、芸術療法、そして地域に根ざしたコミュニティ活動を提供している。
昨年同センターの庭で開催したコミュニティ・コンサート(左端が泉さん)
「長年音楽療法士をやってきて、障害故にコミュニケイションや自己表現に難しさを抱えている人たちのみならず、障害のあるなしにかかわらず音楽を通して一つになれるような活動を展開したいと思うようになりました。ただ、“臨床即興”と聞くと二の足を踏む人も多く、誰でも手に取りやすい楽器として軽い気持ちで始めたウクレレ・グループが次第に発展し、現在はコミュニティ・プログラムの一環としてウクレレ・コミュニティ・バンドという名前で月1回、日曜日に集まり活動しています。このグループは最初からコミュニティ活動として意気込んで始めたわけではなく、私の友達や近所の人たちが集まって不定期に楽しんでいたところ、次第に私の音楽療法のクライアントやその家族も参加するようになり、最初は障害を持つ人と一緒に何かをする経験がなかった人たちも、音楽によってどのような立場の人たちとも自然に繋がれることが分かったとの声をもらうようになりました。私が日本人であることから日本人のメンバーが多いですが、オーストラリア、ロシア、アメリカ、アフリカなどさまざまな文化的バックグラウンドを持つ人たちも参加しています。また、ウクレレをメインの楽器として使っていますが、ほかのどんな楽器での参加も歓迎です」
昨年クリスマス前にはコロナ以降中断していたコミュニティ・コンサートを音楽療法クライアント、ウクレレ・コミュニティ・バンドとともに催した。
「観客も演奏者も皆が一体となる素晴らしい時間になりました。こうして居合わせた皆が音楽を通して繋がり幸せになれるような空間をこれからも作っていければと思っています。私たちは一人ひとりがユニークな人間で、個としての自分を確立することが大事であるとともに、社会的な生き物であり他人とのかかわりの中で繋がりを感じて生きていくことが欠かせません。私たちのセンターが提供する音楽療法や芸術療法がその両面をサポートし、かかわってくださる方、皆とともにお互い模索しながら生きていくよりどころになることを願っています。音楽療法及び芸術療法は現在NDIS(National Disability Insurance Scheme)によって障害のある方はファンドの申請ができます。私たちが提供しているコミュニティ活動はどなたでも参加でき、ほかに折り紙やズンバのワークショップもありますので、ぜひ一度、お気軽にご参加ください」
Musical Between – Inclusive Music Centre
●Unit 2/370 Pennant Hills Rd., Pennant Hills(ペナント・ヒルズ駅から徒歩4分) ℡: 0421-744-090 E-mail: mbetween@gmail.com 公式Facebookはこちら!
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●シドニー・レストラン取材:ノダヤ