ニコール・キッドマンの記念すべきデビュー作(映画「ブッシュ・クリスマス」)

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※2022年12月11日更新

ブッシュクリスマス

Bush Christmas

(オーストラリア1983年公開、日本未公開/92分/PG/ファミリー/DVDApple TVで観賞可能なほかSBSの公式無料配信サイトSBSオンディマンドで無料配信! sbs.com.au/ondemand/movie/bush-christmas/1112562755733

監督:アンリ・サフラン
出演:ニコール・キッドマン/ジョン・イワート/ジョン・ハワード

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 オージー・オスカー女優ニコール・キッドマン(「LION/ライオン 〜25年目のただいま〜」「虹蛇と眠る女」「オーストラリア」「ムーラン・ルージュ」「デッド・カーム/戦慄の航海」「BMXアドベンチャー」)が16歳の時に出演した、彼女にとっての記念すべきデビュー作であるオーストラリア映画「ブッシュ・クリスマス」は英豪合作の同名映画のリメイク版で、1947年のオリジナル版はオージー監督ラルフ・スマート(1908〜2001)が映画用に書き下ろした脚本が児童文学として書籍化もされた。オリジナル版から35年以上を経てのリメイク版は、同じく児童文学を基にした別の名作オージー映画「少年と海」(76)のアンリ・サフラン監督の下、全編ブリスベンが州都であるクイーンズランド州で撮影が行われた。

16歳当時のニコール・キッドマンが農場一家の長女ヘレン役を好演
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 タイトルが示す通りクリスマス・シーズンにオーストラリアのブッシュで起こる出来事を描いたオーストラリアならではのファミリー向けクリスマス映画だが、なにせ舞台は大自然以外は何もないアウトバックのブッシュ、北半球で製作されるクリスマス映画とは一味も二味も異なるところがまず本作の最大の特徴である。農場一家の子供であるヘレン(キッドマン)とジョンの姉弟が、盗まれた一家の競走馬プリンスを盗っ人の手から取り戻すべく、一家の農場で働くアボリジニ男性マナルプイと、クリスマス・ホリデイでイギリスから遊びに来ていたヘレン姉弟の従兄弟マイケルとともに親に内緒で馬に乗り盗っ人を追跡する旅に出るというのが大筋だ。映画は盗っ人を追うヘレンたち4人と、プリンスを含む3頭の馬を盗んで逃げる2人組の盗っ人を交互に描く。

アボリジニのマナルプイとともに馬泥棒を追う旅に出た子供たち
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 子供向け映画なので突っ込みどころとして指摘するべきではないだろうが、ヘレンたち4人も盗っ人2人も食料を持たずに旅に出ている。毛布などは持参しているということは、日帰りでは済まない旅になることが分かっていたはずなのに、いくら子供でも、ましてやマナルプイはれっきとした大人なので道中、野生のブッシュ・トマトや野イチゴでなんとか空腹をしのぐぐらいなら、盗っ人はともかく4人はあらかじめ家から缶詰なりを持ってきていればよかっただけの話。だが、食べ物がないことにより本作の“見せ場”がちゃんと用意されていて、4人が道中、巨大トカゲを捕まえて焼いたものやイモムシを生で食べるシーンがある。ブッシュ・トマトにしたところでオーストラリア原産だし、トカゲやイモムシといったアボリジニの食文化を本作を観るオージーの子供たちに教えている。同様に、4人で野宿していて夜中にふと目覚めたヘレンがマナルプイがいないことに気づきひとりで探しに行くと、小高い丘の上でマナルプイがアボリジニの歌を歌っている姿を見て子供ながらに神聖なものを見るような気持ちになったり、日中、そうとは知らずアボリジニの聖地に足を踏み入れたヘレンをマナルプイが大変な形相でたしなめるシーンもあり、やはり子供たちにアボリジニ文化の尊さを伝えている。

 特に誰が主役という描かれ方はされておらず、盗っ人2人とそれを追うヘレンたち4人、それぞれが重要な役どころを演じる。ニコール・キッドマン扮するヘレンの道中の格好は左右で束ねただけのボサボサの髪にオーヴァーオールという色気もへったくれもないものだが、とても生き生きとした演技を見せ好感が持てる。本作の劇場公開のほんの数日後にはキッドマン2作目の出演作「BMXアドベンチャー」が封切られており、デビュー年度に2本もの劇場映画に出演、しかも「BMXアドベンチャー」は2作目にして主演作でもある。両作品ともに子供向けの映画で作品としての質は決して高いわけではないが、苦節時代ゼロでキャリアをスタートさせたことになる。16歳というと子タレというわけではないが、10代で華々しくデビューした若手俳優がその後、シリアスな役柄もこなせる大人の大スターへと成長する例は決して多いとはいえないので、その後オスカー女優へと至るキッドマンは数少ない大成功例といえるだろう。キッドマンはデビュー翌年以降もコンスタントに主役級の役柄に恵まれたものの最初の数年はヒット作と呼べるほどの作品には恵まれず、だが地道にオーストラリア映画や同2時間ドラマなどでキャリアを積み、デビューから6年後の映画「デッド・カーム/戦慄の航海」(89)で初めて国際的な注目を集めるに至った。

 そのほかの主要キャラも全員魅力的だし、悪役であるはずの盗っ人2人も、これは子供向け映画にありがちとはいえ間抜けな大人という点が憎めない。若い方の盗っ人スライ役のジョン・ハワード(「月に願いを」「クライ・イン・ザ・ダーク」)は、ヒュー・ジャックマンやヘムズワース兄弟などのハリウッド進出組を除くと大部分のオージー男優の例に漏れず中年になって以降は貫禄ある体型とルックスになったが、本作では若かりしころのハンサムぶりと歌の才能まで披露してくれている。

 道中4人が荒れ果てた一軒家を見つけ中に入ると毒蛇がいたりミイラ化した老婆の遺体があったり、深い穴に落ちてしまい、その穴の水位がどんどん上がってきて早く脱出しないと溺れてしまう!といった子供向け映画ならではのさまざまなハプニングに見舞われながら盗っ人を追いかける4人は、果たして無事盗っ人に追いつきプリンスを取り戻すことができるのか? ぜひ童心に返ってハラハラしながらお楽しみを。

【シーンに見る当時のオージーライフスタイル】ヘレンの弟ジョンが自宅で朝、交信用無線ラジオを使って誰かと連絡を取ろうとしているのは、ヘレンやジョンのようにアウトバックなど遠隔地に住む子供たちのためのスクール・オブ・ジ・エア(school of the air)と呼ばれるオーストラリアならではのかつての通信教育で、この一家はそれほど人里離れた不便な場所に住んでいるということ。

STORY
 1950年代、クイーンズランド州の田舎で農場を営むトンプソン一家は愛情溢れる両親と娘のヘレン(ニコール・キッドマン)、その弟ジョンの4人で幸せに暮らしているが、父の仕事の借金のため農場を手放さなければならないかもしれないという事態に直面していた。唯一の望みは一家の競走馬プリンスが村で開催される競馬大会ニュー・イヤーズ・カップで優勝して賞金を得ることだったが、ある夜、2人組の盗っ人がプリンスを含む3頭の馬を盗んでしまう。翌朝、まだ馬が盗まれたことを知らない父は、何十頭もの牛に新鮮な草を食べさせるための牛追いの仕事に出かけ数日間は家に戻らない。一家の農場で働くアボリジニのマナルプイが盗っ人を追ってプリンスを取り戻しに行くと知ったヘレン、ジョン、そしてクリスマス休暇でイギリスから遊びに来ていた姉弟の従兄弟マイケルは母親に内緒で馬に乗り、4人で追跡の旅に出る。

※映画ブッシュクリスマスはSBSの公式無料配信サイトSBSオンディマンドで無料配信!→ sbs.com.au/ondemand/movie/bush-christmas/1112562755733

「ブッシュ・クリスマス」予告編

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