【☆★☆出演者及び関係者の新型コロナウイルス感染により公演延期!☆★☆】
(※新たな日程は以下の通り)
日本でも日本の有名俳優たちによる日本語版がこれまでに何度も舞台で上演されているミュージカル「ラ・カージュ・オ・フォール」がシドニーでは実に38年ぶりに2023年2月1日から5日までの5日間のみ、チャツウッドのザ・コンコース内ザ・コンサート・ホールで再演される。主役のドラァグ・クイーン“ザザ”ことアルバン役のオージー男優/歌手ポール・カプシスのジャパラリア独占インタヴュー・コメントを含み同作の見どころをご紹介!
「ラ・カージュ・オ・フォール」はもともとはフランスのコメディ舞台劇(ミュージカルではなく純然たる演劇作品)として1973年にパリで初演されるや78年まで5年にわたるロング・ラン・ヒットを記録した。78年にはフランス・イタリア合作で映画化され、映画版は日本でも2年後の80年に「Mr.レディMr.マダム」という邦題で劇場公開されこちらも大ヒット、映画版は第2弾(80年)、第3弾(85年)まで製作・公開されたばかりか96年にはハリウッドでもロビン・ウィリアムズほかの出演により「バードケージ(The Birdcage)」というタイトルでリメイクされた。
ドラァグ・クイーンの“ザザ”ことアルバン役のポール・カプシス
1983年に米ブロードウェイの舞台で歌詞も英語により初めてミュージカル化され、アメリカだけでなくロンドン、そしてオーストラリアでも大成功、アメリカでは再演された分も含めこれまでにトニー賞を11回受賞。
日本では85年に日本語ミュージカル版が邦題も原題と同じ「ラ・カージュ・オ・フォール」というタイトルで岡田真澄(ジョルジュ)、近藤正臣(アルバン)、金田賢一(ジャン・ミッシェル)、遥くらら(アンヌ)、上條恒彦(ダンドン議員)、森公美子(ダンドン夫人)というそうそうたる顔ぶれの一流俳優たちにより東京・帝国劇場で初演、英米以上に日本では何度も再演を繰り返すほどの大ヒット・ミュージカルとして知られ、今年に入ってからも「ラ・カージュ・オ・フォール 籠の中の道化たち」と副題付きで再演されたほど。歳がバレるが記者自身、85年の記念すべき日本語版初演を観ており、個人的にこれまでに観たいくつかの有名ミュージカルの中でも非常に娯楽性の高い楽しい作品である。記者が観た日本語版で最も印象に残っているのは主要キャラ全員が登場してのクライマックスの“ドラァグ・ショウ”の場面、それも意外なことに森公美子のダンドン夫人が強烈なインパクトを持っていたこと。当時からふくよかだった森公美子のド派手なファッションもさることながら、さすがオペラ歌手という彼女の美声に強い衝撃を伴う感銘を受けたものだ。ちなみに日本語版は当然、現在までに何人かの俳優の入れ替わりがあるがダンドン夫人役は一貫して森公美子が演じ続けている。
素顔のポール・カプシス
ゲイ・カップル(一人はドラァグ・クイーン)の息子とお堅いストレート・カップルの娘が恋に落ち、ゲイのことが大嫌いなストレート・カップルが、まさか娘のフィアンセの両親がゲイだとは知らず娘の未来の義両親宅に挨拶に来ることになり、両家の両親が一堂に顔を合わせるとどうなるか!?という抱腹絶倒のドタバタコメディ・ミュージカルの中、一番美味しい役どころはなんといっても主人公のドラァグ・クイーン“ザザ”ことアルバン役で、今回アルバンを演じるポール・カプシスは自身もゲイであることをカミング・アウトしているキャバレー・エンターテイナーだ。キャバレー形式のライヴ・パフォーマンスだけでなく映画にも出演しており、こちらも女装癖を持つゲイの役を演じた98年のオーストラリア映画「ヘッド・オン!」でオーストラリア・アカデミー助演男優賞にもノミネイトされた演技派だ(※ジャパラリアで「ヘッド・オン!」を紹介した記事はこちら!)。「ラ・カージュ・オ・フォール」主演に当たって記者との電話インタヴューに応じてくれたカプシスに、正直に「残念ながらあなたのライヴを観たことはないが、『ヘッド・オン!』は観て、あなたの演技は素晴らしかった」と伝えると、とても喜んでくれた。
「『ヘッド・オン!』は僕のキャリアの中でもとても重要な作品になってくれたから、そんなふうに言ってもらえて嬉しいよ、ありがとう。『ラ・カージュ・オ・フォール』は僕は30年以上前に実際にシドニー公演を観ていて(※正確にはオーストラリア版も日本語版と同じ1985年に初演されたのを最後にシドニーでは今回が実に38年ぶりの再演となるから、記者が観たのと同じ年!)、ジョン・イーウィング(主に舞台で活躍したオーストラリア人俳優)が演じたアルバンは本当に素晴らしかった。今でもはっきり覚えてる」
ゲイであるカプシスにとって、ゲイ・キャラクターが登場するミュージカルの中でも最も有名な作品と言っても過言ではない「ラ・カージュ・オ・フォール」のアルバンはいつか演じてみたい憧れの役だったかと尋ねたところ、意外にもそうではなかったらしい。
「僕がやってみたいなと思ったのは『トーチソング・トリロジー』のドラァグ・クイーン、アーノルド役だったんだけど、演じる機会がないままに、僕はその役をやるには歳を取りすぎてしまった(笑)。でもこうして今、アルバン役が回ってきたんだから、面白いよね」
ポールが「面白いよね」と言ったのはほかでもない、ブロードウェイの舞台劇でその後、映画化もされた「トーチソング・トリロジー」を自ら書き起こし舞台版・映画版ともにアーノルド役で主演したハーヴェイ・ファイアスタインは、「ラ・カージュ・オ・フォール」のミュージカル化に当たって脚本を手がけたのだ。
本作に限らず歌手でもあるポールが喉のコンディションを保つために気をつけていることは?
「話さないようにすること(笑)。水をたくさん飲んでアルコールは飲まないとか、食事にも気をつけたりしてるけど、一番効果があるのは冗談抜きで話さないことなんだよ(笑)」
本作に対する意気込みについては次のように語った。
「『ラ・カージュ・オ・フォール』はゲイとかドラァグ・クイーンとか現代でもごく一般的な人たちにとっては非日常的な存在を描いたコメディ・ミュージカルだけど、人間には誰しもダーク・サイドがあって、それも真実。きらびやかな舞台を通して観客を幻惑したいと思う一方で、しっかり真実味を持たせたいと思ってる。シドニー在住の日本のみんなも大歓迎!」
電話取材でのポールの口調は“オネエ言葉”の英語版という感じではなく、とても知的で教養溢れる落ち着いた雰囲気の男性そのものだったが、電話を切る際に明るく、そしてゲイっぽく「じゃあ、またね〜(Bye, darling)」と言ったのが微笑ましかった。
そんなポール・カプシス主演の「ラ・カージュ・オ・フォール」、前述の通りゲイを毛嫌いしているお堅いはずの中年夫婦まで巻き込んでのクライマックスの“ドラァグ・ショウ”まで抱腹絶倒コメディであると同時に、ドラァグ・クイーンであるザザが女装姿で生きている自分のことを指して歌う「ありのままの私(I am what I am)」など、歌詞の内容がアナ雪の「Let It Go〜ありのままで〜」の元祖的な名曲の数々も散りばめられ、ジェンダーを問わず観る者の胸に響くメッセージも多く、ぜひ観ておきたい心温まる傑作ミュージカルのひとつとしておすすめ。
STORY
南仏サン・トロペのゲイ・キャバレー・クラブ「ラ・カージュ・オ・フォール」のオーナー、ジョルジュ(マイケル・コーミック)と彼の20年来のパートナーで同クラブの看板スターであるドラァグ・クイーン“ザザ”ことアルバン(ポール・カプシス)のゲイ・カップルはここのところ倦怠期。ジョルジュにはかつて一夜だけの過ちで関係を持った女性との間に生まれた一人息子ジャン・ミッシェル(ノア・マリンズ)がいて、アルバンも実の母親のように愛情を持ってジャン・ミッシェルを育て上げた。立派な青年となったジャン・ミッシェルは可憐な女性アンヌ(クロイ・マレク)と恋に落ち二人は結婚を誓い合うが、アンヌの父はゲイに対して否定的な保守政党の政治家ダンドン議員(ラニー・テュプ)で、彼の妻マリー(ゾイ・ヴェントゥーラ)もゲイのことが大嫌い。ジャン・ミッシェルが育った環境について何も知らないそんなダンドン議員夫妻が娘のフィアンセの両親の家に挨拶に来ることになり…。
“La Cage aux Folles” – info
●会場:ザ・コンコース内ザ・コンサート・ホール(The Concert Hall – The Concourse, 409 Victoria Ave., Chatswood) ●日程+開演:2023年2月1日(水)7:30pm、2日(木)1pm & 7:30pm、3日(金)8pm、4日(土)2pm & 8pm、5日(日)1pm & 6:30pm ●料金:*水・木(マチネ)公演…プレミアム席$114.90、A席$84.90、B席$64.90、*木(夜)・金・土・日公演…プレミアム席$129.90、A席$107.90、B席$89.90 ●予約:ticketek.com.au ●公式サイト:lacage.com.au
「ラ・カージュ・オ・フォール」シドニー公演ティーザー映像