往年の大女優・田中絹代監督作品の4Kデジタル復元版/映画「月は上りぬ」上映(4/29 & 5/1)

 原節子と並んで昭和の、それも戦前から戦後にかけての日本映画界を代表する往年の大女優で監督としても活躍した田中絹代(1909〜1977)が監督した1955年(昭和30年)公開の映画「月は上りぬ(英題:The Moon Has Risen)」(102分/レイティング:MA15+/英字幕付き)が、世界各国の名作クラシック映画の数々を集めシドニーで開催される本年度シネマ・リボーン映画祭選出作品のひとつとして4月29日(金)と5月1日(日)の2回、ランドウィックの映画館リッツにて上映される。

浅井家の三姉妹を中心に描かれる田中絹代監督の映画「月は上りぬ」(左から長女・千鶴役の山根寿子、次女・綾子役の杉葉子、三女・節子役の北原三枝)
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「月は上りぬ」は日本映画史上2人目の女性監督となった田中絹代が監督した6本の映画の中の第2作で、こちらも日本映画界の巨匠・小津安二郎が斎藤良輔とともに脚本を手がけた。製作・配給の日活が保存していたオリジナルの35ミリフィルムを最新技術である4Kデジタル・リマスターによって復元、昨年開催された第74回カンヌ国際映画祭クラシック部門に選出され、オーストラリアでも今回が4Kデジタル復元版の初上映となる。

後に石原裕次郎と結婚し女優業を引退した石原まき子(女優時代の芸名・北原三枝)が三女・節子役で出演
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 物語は第二次世界大戦中に東京から奈良に疎開してきた浅井家の主とその3人の娘たちの姿を描いたドラマで、三女役には石原裕次郎との結婚により女優業を引退して石原まき子となる女優時代の芸名・北原三枝が、また監督の田中絹代自身も浅井家の下働き役で出演している。古都奈良の美しい街並みや風景を背景に、それぞれ性格は異なるが育ちの良い美しい三姉妹、その三姉妹も和装が似合うしっとりとした姉たちと違って末娘だけは現代的な服装で少々おてんばという設定は、同じく昭和初期を舞台に旧家の四姉妹を描いた谷崎潤一郎の小説「細雪(ささめゆき)」に通じるものがあり、白黒映画とはいえ4Kデジタル復元版となってみずみずしくよみがえった映像美はそれだけでも劇場の大画面で堪能するに値する。

The Moon Has Risen” – Screening info

●会場:リッツ(Ritz, 45 St Pauls St., Randwick) ●上映日時:4月29日(金)3:40pm、5月1日(日)12:45pm ●料金:大人$21、シニア$12、コンセッション/学生$16.50、年金受給者$13 cinemareborn.org.au

映画「月は上りぬ」予告編