日本語レヴューこれが世界初!? 映画版第2弾「ダウントン・アビー:ア・ニュー・エラ」

 poster2402022年4月28日のオーストラリアでの一般劇場公開の2日前の26日に開催された劇場映画版第2弾「ダウントン・アビー:ア・ニュー・エラ(Downton Abbey: A New Era)」のシドニー試写会に行ってきました。普段記者は新着劇場映画コラムではなく「オージー映画でカウチ・ポテト」担当なのですが(そちらもよかったらぜひご覧ください♪)、ダウントン・アビー・ファンということで(笑)張り切って参加。シティの映画館イヴェント・シネマズ・ジョージ・ストリートでの試写会前のプレ・パーティも豪華でしたが、特に著名人がいたりしたわけではないので、そちらも興味がおありの方はジャパラリア公式Facebookまたは同インスタグラムの2022年4月26日の写真投稿をご覧ください。「ダウントン・アビー:ア・ニュー・エラ」の劇場公開は3月18日のアラブ首長国連邦が世界初で、次いで4月27日のフランス が2番目、翌28日のアルゼンチン、ブラジル、ドイツ、ハンガリー、イタリア、メキシコ、オランダ、シンガポールそしてオーストラリアが3番目(英語圏の国では最初!)ということは、もしかして日本語でのレヴューはこれが世界初かもしれないと思い、一番乗りになれたらと、こちらも張り切って投稿することにしました。

映画版第2弾のオープニング・シーンは、映画版第1弾で初めて知り合ったこの2人の結婚式!
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グランサム伯爵夫人コーラ(エリザベス・マクガヴァン:左)とその次女ヘクサム侯爵夫人イーディス(ローラ・カーマイケル)
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 さて、劇場映画版第2弾「ダウントン・アビー:ア・ニュー・エラ」、これまでのストーリーをご存じない方が知らないまま観てもそれなりに楽しめるでしょうが、今回新たに登場するキャラクターを除くと主要登場人物は全員が過去に何かしら重要な役どころを与えられていて、それぞれに(過去に)ドラマがあり、やはりそれを知った上で観るとさらに断然楽しめるはずです。主要登場人物の数がかなり多いことも初めての人を混乱させてしまう要素かと。かといって観ていない人のハードルを上げたくもないので、まずは日本でも2022年9月に劇場公開されるという本作を観て、興味がわけば過去の連ドラ全6シーズンと映画版第1弾を観賞するというのもいかかがでしょう? 何より、20世紀前半の架空のイギリス貴族グランサム伯爵家の大邸宅ダウントン・アビーを舞台に繰り広げられる、セットも女優陣の衣装も豪華なドラマを劇場の大画面で観賞できるというのは、それだけでも圧巻で感動ものです。

グランサム伯爵夫妻の長女でダウントン・アビーの実質的な現在の女主メアリー(ミシェル・ドッカリー)
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メアリーの亡くなった最初の夫の実母マートン男爵夫人イザベル(ペネロピー・ウィルトン:左)と、メアリーの祖母に当たる先代グランサム伯爵夫人ヴァイオレット(マギー・スミス)
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 サブタイトルにある「ア・ニュー・エラ」とは“新時代”という意味で、ストーリーの大筋は映画版第1弾の2年後の1929年、先代グランサム伯爵夫人ヴァイオレット(マギー・スミス)が若いころ、ヴァイオレット自身は既に結婚していたがヴァイオレトに熱烈に恋したフランスの貴族が亡くなり、彼もその後結婚し妻子がいるにもかかわらずその後何十年も会うことのなかったヴァイオレットに彼の南フランスの瀟洒な別荘を譲るという遺言を残した事実が発覚したことがまずひとつ。もうひとつはサイレント映画の関係者たちが大邸宅ダウントン・アビーを新作映画のセットとして使いたいと申し出てくること。屋敷の主でヴァイオレットの息子である現グランサム伯爵ロバート・クロウリー(ヒュー・ボネヴィル)や屋敷のお堅い元執事チャールズ・カーソン(ジム・カーター)らは映画の撮影にダウントンを使わせることには断固反対。だが屋敷を撮影場所として提供することにより謝礼としてそれなりの収入が入ることを見越したグランサム伯爵夫妻の長女メアリー(ミシェル・ドッカリー)は、ヴァイオレットにフランスの別荘を譲るという遺書を残したフランス貴族の息子がロバートを別荘に招待していることを理由に、ダウントンのハウスキーパーでカーソンとの結婚後も旧姓のミセス・ヒューズとして知られる柔軟なエルシー・カーソン(フィリス・ローガン)の協力の下、父ロバートと母コーラ(エリザベス・マクガヴァン)のグランサム伯爵夫妻、メアリーの妹のイーディス(ローラ・カーマイケル)とその夫ヘクサム侯爵(ハリー・ハデン・ペイトン)たち数人を、彼らの世話をするために同行してほしいとカーソンにも頼み、首尾よくフランスへと送り出す。

 というわけで、映画は南フランスとダウントンの2個所に主要登場人物が分かれて展開する。映画版第2弾で初めて登場するキャラクターでダウントンに押しかけてくる映画人の中では、近隣のホテルではなくダウントンの客室に寝泊まりする3人、監督のジャック・バーバー(ヒュー・ダンシー)、彼が撮影するサイレント映画の主演男女優でともに大スターのガイ・デクスター(ドミニク・ウェスト)とマーナ・ダルグレイッシュ(ローラ・ハドック)がフィーチャーされる。

映画の撮影のためダウントン・アビーにやってくるサイレント映画スター、マーナ・ダルグレイッシュ(ローラ・ハドック)と、彼女を出迎えるダウントン・アビーの下僕で映画版第1弾で料理長助手のデイジーと結婚したアンディ(マイケル・C・フォックス)
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ダウントン・アビーの料理長助手デイジー(ソフィー・マクシェラ:左)と料理長ミセス・パトモア(レズリー・ニコル)ももちろん登場
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 英語版を最初に観た記者には少し分かりづらかったのがアクセント。ハリウッド・スターのガイも、そしてマーナもアメリカ人ではなくイギリス人ながら、イギリス上流階級の人々が話す“クイーンズ・イングリッシュ”をこなすガイと異なり、マーナはロンドンでも“コックニー”と呼ばれる労働者階級英語バリバリで、サイレント映画時代は美貌だけで生き残れたが映画界がトーキーに移行しつつある中、自身の垢抜けない下町訛りに焦りを感じ始め、それが彼女の高飛車で傲慢な言動に拍車をかけている、というのが伏線。

 また、映画の中で起こるハプニングとして観ている分には楽しいが現実的に考えるとあり得ない展開はいくつかあって、1つ目は本来サイレント映画の撮影だったはずが途中から突然トーキーになること(※最初はトーキーの予定だったが諸問題からより簡単に撮影できるサイレントになることはあっても逆パターンは無理。似たような例として最初はカラー作品として撮影が始まったが予算がかさんで白黒になってしまったノーマ・シラターとタイロン・パワー共演の1938年公開のハリウッド映画「マリー・アントワネットの生涯<Marie Antoinette>」などが実在する)、2つ目はマーナがクイーンズ・イングリッシュの発音を操れないことからなぜか素人のメアリーがマーナのセリフの吹き替えを行うこと(※プロの俳優でさえ後で自分の口の動きに合わせてセリフを吹き替えるのは高度なテクニックを求められる)、3つ目は映画のエキストラたちが給料の支払いが遅れているため仕事を拒否したことからダウントンの使用人たちが晩餐会のシーンのエキストラとして急遽駆り出され、美しい衣装に身を包みディナーの席に着くことなどである(※1人や2人ならまだしも10人単位でとなるとこちらもかなり非現実的)。やはり撮影現場であるダウントンの屋敷内に監督と主演男女優の3人が寝泊まりすることも、特に俳優は自分の出番でない時も朝から晩まで大勢の関係者が出入りする撮影現場にいるのは気が休まらないはずで、通常は近隣のホテルまたは撮影が行われない近隣の別の邸宅に宿泊するものだ。事実、こちらも似たような設定としてアガサ・クリスティー原作のミス・マープルものの映画化「クリスタル殺人事件(The Mirror Crack’d)」(80)があり、イギリスの田舎町へハリウッドの撮影隊が映画を撮りに来た際、ロック・ハドソン扮する監督とその妻でエリザベス・テイラーが演じた主演女優は撮影中、ホテルではないが撮影現場でもない地元の大邸宅を個人から借り受けそこに滞在した。

 こうした明らかな映画上の嘘がいくつか堂々と盛り込まれているとはいえ、「ダウントン・アビー」はTV版の最初から一貫して、ロンドン郊外にあるという設定のイギリス上流社会を舞台にした贅沢な“ソープ・オペラ(メロドラマ)”である。というのも、性格の悪いキャラクターがひとりも出てこないわけではないが、レギュラー・キャラクターの中にはひとりもいないのだ。通常の昼メロだって悪役はいるのにである。なので今回の映画版第2弾も最初から最後まで安心して観ることができる。物語自体は誰が観ても分かりやすいストーリー展開となっている分、ウィットに富んだ会話、特にマギー・スミス演じる先代グランサム伯爵夫人ヴァイオレットの“毒舌”が本作の魅力でもあり、映画版第2弾の試写会でも多くのシーンで客席から笑いが漏れた。英語がネイティヴではない記者にとっては「え、ここも笑えるツボなの?」という場面も多く、劇場で大勢のオージー観客たちと一緒に観たからこその発見で、後にDVD化や配信されてから初めて家でひとりで観ていたら気づかなかっただろう。

本作でも正装からカジュアルまでファッションも見どころ
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 2010年に最初のTV版シーズン1がオンエアされたということは、映画版第2弾である本作は本来は昨年公開予定だったのが延期されたとはいえ、それでもシーズン1から10年以上が過ぎていることになる。それぞれの主要キャラクターを演じる男女優たちも、当時から既に高齢だったマギー・スミスなどを除き、それなりに年を重ねているが、ダウントン・アビー・ファンにとってはそれすらも愛おしい、愛すべき映画版第2弾「ダウントン・アビー:ア・ニュー・エラ」である。

映画「ダウントン・アビー:ア・ニュー・エラ」予告編