「輝くゲイたち」:陶芸アーティストの相川優臣(イッチー)さん

ゲイにこだわりつつも人間として
ちゃんと暮らさなきゃって思う

陶芸アーティスト
相川優臣イッチー)さん
Yuomi Aikawa

240「子供のころから一般的な男性とはアイドルや音楽の趣味なんかも違ったし、中学ぐらいから自分のセクシュアリティは分かってた。生まれ育ちが東京だったこともあるだろうけど、ゲイについての情報がたくさん入ってくるから幸い『自分はおかしいんじゃないか?』などと悩んだことは一度もないよ」

 ジャパラリア巻末の大人気エッセイ「おばゲイDIARY」でお馴染みのイッチーさん。実はその素顔についてはほとんど知られておらず、「イッチーさんてどんな人なの?」という読者の声を受け、今年も3月5日(土)にパレイドが開催されるLGBTの祭典シドニー・ゲイ&レズビアン・マルディ・グラにちなみ、今月号ではいつもの「輝く女性たち」に代わって「輝くゲイたち」として登場してもらった。東京デザイナー学院卒業後、教科書や参考書を手がけるデザイン会社に就職、編集デザインの仕事をこなした。

「新宿2丁目に“デビュー”したのは18歳で、就職した後も2丁目関係のツテで当時あった『Badi(バディ)』というゲイ雑誌のイラストの仕事なんかもちょこちょこもらうようになり、自分にはこっちが合ってるかなと思い10年勤めた会社を辞めて『Badi』の編集部に転職したの。イラストも描けば広告ももらいに行き、締め切り前は会社に泊まってって感じで忙しかったけど仕事柄ゲイ・イヴェントに参加できたり、職場はバイトも入れると10人とか15人、若い男の子ばかりで楽しかったよ」

「Badi」時代の同僚はなんと、有名になる前のマツコ・デラックスだった。

「当時のマツコはまだ荒削りなところもあったけど、やっぱり才能があった。今ほど太ってなかったわね(笑)。和田アキ子のコンサートに一緒に行ったことも」

 ゲイとして公私ともに充実していたイッチーさんが運命の出会いを果たしたのは28歳の時。

「2丁目のバーで友達と待ち合わせたんだけど、早く着いたのでほかの店でまず一杯飲んでから行こうと入ったのが、外国人が多く集まるGBというゲイ・バーだったの。僕は外国人には興味なかったけど、たまたまカウンターの隣の席のオージーに声をかけられて、それが今の旦那のリックだったという(笑)」

出会った当初のイッチーさんとパートナーのリックさん
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 こうしてオージーのパートナー、リックさんと付き合い同棲するようになった。リックさんは東京でモデルや舞台のエキストラとして働いていたが、年齢とともに「この仕事もいつまでもやれない。オーストラリアに帰りたい」と言うようになったことをきっかけに二人でシドニーに移住、イッチーさんが40歳の時だった。日本もオーストラリアも出版業界が手作業からコンピューターに移行する過渡期で、「自分にはついていけないなと思い(笑)」、学生時代のバイトで楽しかったウェイターの仕事を思い出し、シティの東レストランで働き始めた。いったん別の店に移ったりもしながら東に復職し、現在に至る。趣味でリックさんと始めた陶芸も現在ではカフェなどから食器のオーダーが入るほどになり、毎月第1土曜日に開催のサリー・ヒルズ・マーケットでリックさんと仲良く出店するなど楽しく充実した日々を過ごしている。

イッチーさん作の陶芸作品
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「陶芸の魅力は、作品が窯から出ると思いもよらない素敵な肌合いや色味に出合えること。失敗もあるけどね(笑)。僕とリックの場合は運が良かったと思う。両方の親兄弟も僕たちがゲイであることを受け入れ家族の一員として扱ってくれているし。僕自身はアイデンティティで悩まなかったけど、結局ゲイにこだわりつつも人間としてちゃんと暮らさなきゃってことじゃないかな。そして、自分の人生は自分で見つけなきゃダメ。人の意見なんてスパイスかふりかけぐらいに聞いておけばいい。人と自分を比べたり羨まないこと。収入とか外見とか他人と比べて何一つ意味はないと思うから」

陶芸アーティストとしてのイッチーさんのインスタグラムアカウント:ichi_joy

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