爆破事故で死んだ男が全話の鍵を握る連ドラ「イースト・ウエスト101(シーズン2)」

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※2021年9月13日更新

イースト・ウエスト101(シーズン2)」
(連続ドラマ)

East West 101(Season 2)

(オーストラリア2009年オンエア、日本未公開/1話52分・全7話/MA15+/刑事ドラマ/DVDで観賞可能なほかSBSの公式配信サイトSBSオンディマンドで無料配信されて全シーズンの全エピソードが無料観賞できるようになっていましたが現在配信停止中のようでまた配信再開されることを祈ってURLはこちら!sbs.com.au/ondemand/program/east-west-101

監督:ピーター・アンドレキディス
出演:ドン・ハニー/スージー・ポーター/アーロン・ファーオソ/ジェラルド・レプコウスキ/タズニーム・ロック

(※以下、文中の紫色の太字タイトルをクリックすると該当作品の本コーナーでの紹介記事へとジャンプします)

 国営TVラジオ局SBS製作の下、2007年末から2008年初めにかけて全豪オンエアされ人気を博した連続刑事ドラマ「イースト・ウエスト101(※数字の読みは“ワン・オー・ワン”)」の続編となるシーズン2として2009年に放映された作品。シーズン1と同じくピーター・アンドリキディス(「パルス」)が全話監督したほか、主人公の刑事でドン・ハニー演じるゼイン以下、主要キャラクターもほぼ全員シーズン1と同じ顔ぶれだが、6人の刑事たちのうち1人だけ、シーズン1のレイ・クロウリー(ウィリアム・マッキネス)が抜け、シーズン2ではジェラルド・レプコウスキ演じる、刑事であると同時に国家安全保障機構(NSO)の調査官でもあるリチャード・スケリットが捜査班に仲間入り。シーズン1同様、シーズン2も高視聴率を記録しただけでなく作品としても高い評価を受け同年度オーストラリア・アカデミー(AFI)賞(現AACTA賞)TVドラマ部門主要5部門にノミネイトされ、作品、監督、主演女優賞(刑事局長パトリシア・ライト役のスージー・ポーター)の3部門を受賞した(受賞を逸したのはドン・ハニーの主演男優賞と脚本賞で、ハニーはシーズン1でも主演男優賞候補となった)。撮影はシドニー各地のほか、シドニーから車で約3時間の首都キャンベラでもロケが行われ、キャンベラの観光名所としても名高いピラミッド型の外観が印象的な国会議事堂も出てくる。

主人公の刑事ゼイン(ドン・ハニー:左)とシーズン2で主要キャラの一人として新登場のリチャード・スケリット(ジェラルド・レプコウスキ)
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 ドラマ自体の概要についてはシーズン1の本コラム紹介記事「イースト・ウエスト101(シーズン1)」を読んでいただくとして、シーズン2では1話目にいきなり車の爆破事故のショッキングなシーンで始まり、その車の持ち主で爆破とともに命を落とす最初の犠牲者が全話の鍵を握る。犠牲者が町の小さな印刷会社の経営主だったというのは仮の姿で、実は彼自身NSOの調査官として特別な任務に就いていたが、同時に犯罪にも手を染めていた疑いがあり何者かに消されたのではないかというのがシーズン2全体を通してのテーマとなり、だが同時に毎回のエピソードでまた別の犯罪事件が起こるという展開だ。

左から刑事ゼイン役で同年度豪アカデミーTVドラマ部門主演男優賞候補のドン・ハニー、刑事局長パトリシア役で同主演女優賞受賞のスージー・ポーター、ゼインの相棒刑事ソニー役のアーロン・フォーオソ
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 レギュラー・キャラクターではもう一人、主人公ゼインの母親でシーズン1に登場していたマリアムは母国イラクの親戚のところに里帰り中という設定になっていてシーズン2には出てこない。逆に主要6人の刑事の中の2人でオープニング・クレジットにも名前が出ていながらシーズン1ではあまりこれといった出番がなかったギリシャ系ヘレン役のダニエラ・フェリナッキ(「LION/ライオン 〜25年目のただいま〜」)と中国系ジュン役の中国/マレイシア系オージー女優レネー・リム(「パーム・ビーチ」「パルス」)が本作ではそれぞれフィーチャーされるエピソードがある。ヘレンはシーズン2では妊娠中という設定になっており、ヘレンを演じたフェリナッキは実際シーズン2の撮影中、妊娠していた。シーズン1では仕事以外の面が一切描かれなかったヘレンはレズビアンだということもシーズン2では明らかにされる(たまたまレズビアンという設定にしたわけではなく、レズビアンであることがちゃんと意味を持つ脚本になっている)。

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 また、シーズン2で初登場の、冒頭の爆破事故で夫を失うソフィア(アリン・スマルワタ)は、夫が果たして本当に犯罪者だったのかをゼインの協力の下に独自に調査するうち、妻子持ちのゼインと引かれ合っていく展開にも注目(※本作の撮影で初めて出会ったドン・ハニーとアリン・スマルワタは本作での共演を機に実生活で付き合い始め、結婚した)。

左からドン・ハニー、アーロン・ファーオソ、アリン・スマルワタ
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 同様にシーズン1からの主要キャラクターの中で唯一、シーズン1でプライヴェイトでの色恋も描かれたスージー・ポーター(「パルス」「リトル・フィッシュ」「トゥー・ハンズ/銃弾のY字路」)演じる刑事局長パトリシア・ライトは、シーズン1でのそれは“一夜限りの出来事”だったのに対し、シーズン2では新たに出会った男性とバッチリ恋愛する。

 さらにシーズン2ではパトリシアの弟でガイトン・グラントリー(「ハウス・オブ・ボンド」「リベンジャー 復讐のドレス」)演じるクレイグと、2人の父親で元刑事のミック・ディーキン(リチャード・カーター)が新たに登場する。父も姉も刑事であるにもかかわらず、クレイグは若いころから問題ばかり起こし、今では犯罪組織に命まで狙われているが、パトリシアとクレイグ姉弟は幼いころ、母親が自殺するという悲しい過去を持ち、母が死んだのもクレイグが問題児になったのも仕事一筋で家庭を顧みなかった父ミックのせいだとパトリシアは思っている。父を憎むパトリシアは、姓も父親のディーキンではなく亡き母の名字だったライトを名乗っている。シーズン2ではもうひとり、ゼインが覆面捜査で潜り込む犯罪組織のリーダー、アクマル役のマイケル・デンカー(「ザ・プリンシパル」)が7話中の5話に登場、アクマルのキャラクター設定そのものは敵に回すと怖い悪役そのものだが、演じたデンカーはどことなく30〜40代だったころの加藤茶に通じるルックスだと思うのは記者だけだろうか?

 それらシーズン2の主なゲスト・キャラクターのほか、1話ごとに起こる事件でそのエピソードだけ出演するゲスト俳優では、ドラッグでハイになった若者に息子を殺されてしまうマオリ系のメリ役に1994年のニュー・ジーランド(NZ)映画「ワンス・ウォリアーズ(Once Were Warriors)」の主演により世界各国でその演技を絶賛されたNZを代表する大女優でNZだけでなくオーストラリアでも活躍するリーナ・オーウェン、ストリップ・クラブのオーナー役でダミアン・ウォルシュ・ハウリング(「ケリー・ザ・ギャング」「ヒー・ダイド・ウィズ・ア・ファラフェル・イン・ヒズ・ハンド」)、幼い息子を誘拐されてしまうムスリムの女性役に「君といた丘(The Year My Voice Broke)」(87)のヒロイン役で知られるローエン・カーメンが出演。また、モスクで信者たちに教えを説くイマーム(イスラム教の指導者)として4話と7話に登場のトニー・ニコラコポロス(「ヘッド・オン!」)は、上記ゲストたちほどの出番はないが印象的なシーンを演じている。

NZを代表する大女優リーナ・オーウェン(中央)も4話にゲスト出演(左はアーロン・ファーオソ)
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 そんなシーズン2の一番の見どころは、ドン・ハニー演じる主人公の刑事ゼインが覆面捜査官として犯罪組織に入り込んで調査することで、ゼインの正体が実は刑事だとバレるのではないかとハラハラさせられるシーンもいくつかある。

 2009年オンエア当時の時代背景としては、2001年から現在に至るまで続くアフガニスタン紛争に関連し、世界各地でイスラム系過激派による爆破テロ事件などが勃発しており、イラクなどに派遣されていたオーストラリア軍人たちもいたことからオーストラリア国内でも中東出身者やムスリムの人々に対する嫌がらせが社会問題となっていた。特にムスリムの女性たちは宗教上の理由により外出時にヒジャブというスカーフのような被り物を頭にまとっているためムスリムだということが一目瞭然でなおさら標的にされやすく、シーズン2でもイラク系ムスリムのゼインの妻でタズニーム・ロック(「キャス&キムデレラ」)演じるアミーナがアングロサクソン系の若い男子の集団にヒジャブを剥ぎ取られるシーンが出てくる。

 そんな時代背景を絡めつつ、毎回のエピソードで起こる事件も身代金目当ての誘拐殺人や、身代金目当てでもなく単にムスリムだからという理由で幼い男の子が誘拐されたり、ドラッグでハイになった若者による殺人、若いロシア人女性たちをオーストラリアでベビーシッターの仕事に就けると騙してロシアから不法入国させての強制売春など、実際にオーストラリアでも似たような事件が起こっており、シーズン1同様、考えさせられるテーマが少なくない。

 なお、シーズン2とシーズン3の衣装デザイナーを務めたのはジャパラリア誌上グルメ・コラム「オージー・レシピ」でお馴染みのネヴィちゃんことネヴィル・カー(2018年版「ハーモニー」「パルス」「ハウス・オブ・ボンド」「ドリッピング・イン・チョコレート」「ワイルド・ボーイズ」「バッドコップバッドコップ」)で、オープニング・クレジットにもネヴィちゃんの名前が登場する。ネヴィちゃんいわくシーズン1の人気を受けシーズン2以降は衣装にもより大きな予算が組まれ、例えば主人公ゼインが履いているジーンズはシーズン1では安物だったがシーズン2ではG-Star RAWにグレイドアップされたりしたといい、また、ゼインの妻アミーナも頭に被るヒジャブを含めシーズン1の時より華やかな色合いの服を選んだという。もう一つ、後に実生活で結婚するドン・ハニーとアリン・スマルワタが本作の撮影で初めて会った日、車内の片方の壁一面に鏡が設置されたメイク専用のトレイラーにハニーとスマルワタとともに乗り合わせたネヴィちゃん、ハニーとスマルワタがメイクさんにメイクしてもらっている間、鏡越しにお互いをチラチラ見て明らかに意識し合っていたというほのぼのエピソードも教えてくれた。つまり二人は互いに一目惚れだったというわけだ。

【セリフに出てくるアラビア語ゼインが父親のことを“ババ(baba)”と呼ぶのはアラビア語で“お父さん”。同様に妻アミーナに“ハビブティ(Habibti)”と呼びかけるのは女性に対する“愛しい人”、英語でいうスウィートハートやマイ・ラヴなどと同じで、男性に対しての場合は“ハビビ(Habibi)”。

【セリフにおける英語のヒント(その1)4話で気が立っている妻アミーナなをなだめるために「俺が夕食を作るよ」とゼインが言うと、アミーナが「何言ってるのよ、料理できないくせに」とクスッと笑う。それに対しゼインが「俺は料理の鉄人だぞ(I’m iron chef)」と答える。そう、日本の有名な料理番組「料理の鉄人」はオーストラリアでも「アイアン・シェフ(Iron Chef)」というタイトルで英語吹き替え版がオンエアされ人気を集めた。ほかにも2話の誘拐殺人事件の犠牲者となる中国からの女性留学生の所持品に実際に来豪コンサートが開催されたアメリカ人ミュージシャン、ジャスティン・ティンバーレイクのシドニー公演のコンサート・チケットがあったり、6話の殺人事件の犠牲者である医師の娘が刑事ジュンに父の死のことで話している際に「私はバカじゃないわ、CSIを観たもの」と言うのはオーストラリアでも放映されていたアメリカの連ドラ「CSI:科学捜査班(CSI: Crime Scene Investigation)」のことだったりと、当時のオーストラリアで流行っていたTV番組やセレブの名前が実名でセリフに盛り込まれている。

【セリフにおける英語のヒント(その2)本作に出てくるDIMAとは1996年から2001年までの移民局(移住省)の正式名称(Department of Immigration and Multicultural Affairs)の略で、2001年以降は正式名称が異なるが、本作がオンエアされた2009年当時も、そして現在もいわゆる政府・警察関係者などの間ではDIMAという名称のままで通っている。ちなみに在住日本人の間では移民局のことを“イミグレ”と呼ぶのが一般的。

Story

 シドニー郊外の商店街にある小さな印刷店のオーナーが車の爆破事故で死亡、同事件を調査することになったイラク系ムスリムの刑事ゼイン・マリク(ドン・ハニー)は被害者の店の2階にあった金庫の中から現金10万ドル(※感覚として1,000万円)や拳銃、いくつかのパスポートやアラブ系の人名リストなどを発見、被害者が偽名で印刷会社を経営しており、本名はジョン・アングルトンといって実は国家安全保障機構(NSO)の調査官だったことを突き止める。アングルトンは外国人に対してオーストラリアの査証を金と引き換えに不法発行していた疑いが浮上するとともに、アングルトンの死の裏に別の大きな組織が動いている可能性が濃厚になる。ゼインたち捜査班はNSOと共同捜査することになりNSOの別の調査官リチャード・スケリット(ジェラルド・レプコウスキ)が赴任してくるが、スケリットはゼインのことをあまり良く思っていないようで、犯罪組織の中に潜り込んでの覆面捜査という危険な任務をゼインにすすめ…。

【本コーナーでの紹介記事】
イースト・ウエスト101(シーズン1)
イースト・ウエスト101(シーズン2)
イースト・ウエスト101(シーズン3)」(最終シーズン)

「イースト・ウエスト101」予告編

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