※2023年1月6日更新
「ワイルド・ボーイズ」
(連続ドラマ)
Wild Boys
(オーストラリア2011年TV放映、日本未公開/1話42〜44分・全13話/PG/アクション・ドラマ/DVDで観賞可能なほか、チャンネル7系の公式配信サイト、7プラスで無料配信、全話無料観賞可能!→ 7plus.com.au/wild-boys)
監督:ジェフリー・ウォーカー(1・2話)/ケン・キャメロン(3話)/アーニー・カスト(4・6話)/ミシェル・オッフェン(5話)/イアン・バリー(7・8話)/シャーリー・バレット(9・10話)/マーク・ジョフィ(11話・12話)/イアン・ワトソン(13話)
出演:ダニエル・マクファーソン/ゾイ・ヴェントゥーラ/マイケル・ドーマン/デイヴィッド・フィールド/ナサニエル・ディーン
(※以下、文中の紫色の太字タイトルをクリックすると該当作品の本コーナーでの紹介記事へとジャンプします)
オーストラリアにおけるゴールド・ラッシュで賑わう1860年代、シドニーが州都であるニュー・サウス・ウェールズ(NSW)州の架空の田舎町ホープトンを舞台に繰り広げられる娯楽アクションで、2011年に全豪オンエアされたチャンネル7系列のオーストラリアの連続ドラマ(※チャンネル7系の公式配信サイト「7プラス」で全話無料配信!→ 7plus.com.au/wild-boys)。全13話に対しエピソードごとに8人の監督が起用され、ほとんどがTVドラマ畑専門だがマーク・ジョフィ監督(「ハウス・オブ・ボンド」「ドリッピング・イン・チョコレート」)は日本でも公開された1996年版「ハーモニー」など劇場映画の監督でもあり、また、イアン・バリー監督はどちらも日本から加藤雅也を主演男優に招きシドニーで撮影された豪日英3カ国合作の2時間ドラマで日本では東映ビデオ「Vワールド」シリーズとしてソフト化のほか劇場公開もされたジャクリーン・ビセット共演の「クライムブローカー〜仮面の誘惑〜」(93)とブルック・シールズ共演の「セブンスフロア」(94)を監督したこともある(※両作品の撮影でシドニーに滞在していた加藤雅也に記者が独占インタヴューした際の彼の印象などについて語ったYouTube投稿はこちら!)。ほか、本コーナーで過去に紹介した別のTVドラマを手がけたケン・キャメロン監督(「シークレット・メンズ・ビジネス」「ブライズ・オブ・クライスト」)も名を連ねている。
主要キャラとなる4人のブッシュレンジャーたち(左からコンラッド役のアレクサンダー・イングランド、ダン役のマイケル・ドーマン、主人公ジャック役のダニエル・マクファーソン、キャプテン・ガンパウダー役のデイヴィッド・フィールド)
日本のような時代劇専用の“映画村”といった撮影スタジオが存在しないオーストラリアでは、劇場映画は別として、TVドラマでコスチューム・プレイ(時代劇)を取り上げることが容易ではない。セットはもちろん衣装や小道具などを一から用意しなければならず、そうなると莫大な製作費がかかるからだ。そんな中、チャンネル7が通常オーストラリアで製作されるTVドラマの相場から考えるとまさしく“空前の巨費”を投じ、NSW州ウィンザーに隣接するウィルバフォースに保護されている19世紀後半の開拓者村(※開拓者村をジャパラリアが取材したブログ記事はこちら!)をさらに拡張し、大がかりなセットを組んで撮影したのが本作である。一方で町長の華麗な屋敷のシーンはシドニーに現存する植民地時代の大邸宅で現在は歴史建造物基金運営の下、内部が一般公開されているヴォークルーズ・ハウスを使用するなど時代考証もかなりしっかりしている。
シドニーのヴォークルーズ・ハウスで撮影された町長の邸宅のシーン(中央の3人は左から4話と5話にゲスト出演のシャーロット役のローラ・ブレント、町長ジェイムズ・ファイフ役のクリストファー・ストラリー、町長の令嬢エミリア役のアナ・ハッチソン)
ブッシュレンジャーのジャック(ダニエル・マクファーソン)はホープトンの町でパブ兼売春宿を経営するメアリー(ゾイ・ヴェントゥーラ)と密かに付き合っていて…
全編の衣装デザインを手がけたのはジャパラリア誌上グルメ・コラム「オージー・レシピ」でお馴染みのネヴィちゃんことネヴィル・カー(「ハーモニー <2018年版>」「パルス」「ハウス・オブ・ボンド」「ドリッピング・イン・チョコレート」「イースト・ウエスト101 ② ③」「バッド・コップ、バッド・コップ」)で、ネヴィちゃんにとってもここまで衣装代に巨額の予算が組まれた作品に携わるのは初めてだったそうだがその分やりがいもあり、楽しんでできた仕事だったとのこと(※本作撮影当時、ロケ現場でジャパラリアがネヴィちゃんに取材したブログ記事はこちら!)。
後にブッシュレンジャーとなる馬丁のコンラッド(アレクサンダー・イングランド)は町長の娘でお嬢様のエミリア(アナ・ハッチソン)と相思相愛の仲だが…
ブッシュレンジャーのキャプテン・ガンパウダー(デイヴィッド・フィールド)は自分に優しく接してくれる町の小学校の教師キャサリン(キャロライン・ブレイジアー)に恋心を抱き…
というわけでオーストラリアのTVドラマ界では珍しい時代劇ということもあって見どころ満載の本作、なんといっても一番の魅力は出演者陣にある。といってもこちらもほとんどが映画よりTVドラマでの活躍が目立つが、主人公ジャックを演じるダニエル・マクファーソンを含む4人のブッシュレンジャー(盗賊)たちを筆頭に、彼らを追う地元警察、そしてむさ苦しい田舎町に華とロマンスの要素を添える女性たち、と全体的に美形男女優でそろえているが、必ずしもそうでない場合も主要キャラは全員印象に残る。さらに1話ごとにゲスト俳優を迎え、メインもゲストも“キャラ分け”が明確で分かりやすく、アクション活劇はそうこなくっちゃという点を押さえた脚本もなかなかのもの。時代も設定も全く異なるが、フランスの小説「三銃士」シリーズに出てくる主人公ダルタニャンと3人の銃士たちはもちろん4人を取り巻くそのほかの登場人物も皆が個性的だったように、本作の4人のブッシュレンジャーたちとそれ以外のキャラクターも非常にうまく描き分けられていて、それぞれにファンが付いてもおかしくないほど魅力的だ。
その点を踏まえると、1話目から続けて観ればどんどんハマっていけるドラマだったにもかかわらず、観ているオージーたち自身が19世紀半ばのオーストラリアを舞台にした時代劇に慣れていなかったせいもあるのだろうか、第1話の視聴率は180万人突破とまずまずだったものの、2話目150万人、3話目130万人と回を追うごとに視聴率が低下し、5話以降、最終話まではいずれも100万人に満たなかったため、本来予定されていたシーズン2は製作されず1シーズンで終わってしまったのが残念。
4人のブッシュレンジャーの中では唯一、特定の好きな女性がいるわけではないダン(マイケル・ドーマン)だが、シドニーから人気舞台女優シャーロット(ローラ・ブレント)が彼のことを追ってくるなど何気に女性にモテる
町の警察の巡査部長ミック(ナサニエル・ディーン)はジャックとメアリーが付き合っていることを知りながらメアリーに片思いしており…
前述の通り出演者はほとんどがTVドラマをメインに活躍しているが、4人のブッシュレンジャーたちのひとりコンラッド役のアレクサンダー・イングランドと町の警察の巡査部長ミック役のナサニエル・ディーン(「イースト・ウエスト101 ①」「キャンディ」)はどちらもリドリー・スコット監督の「エイリアン:コヴェナント」(17)でイングランドがアンカー役、ディーンがハレット軍曹役で出演、本作ではジャックの恋敵でもあるミックを演じるディーンはルックスだけでなくしゃがれ声も十分魅力的だ。やはりこちらもブッシュレンジャーのひとりキャプテン・ガンパウダー役のデイヴィッド・フィールドはヒース・レジャー主演の「トゥー・ハンズ/銃弾のY字路」(99)でブライアン・ブラウンがボスを演じたギャング団の一味の冷酷なキャラ、アコー役が印象に残るが「トゥー・ハンズ」から10年以上を経た本作では初老の域に達したルックスながらキャロライン・ブレイジアー(「ドリッピング・イン・チョコレート」)演じる町の小学校の教師キャサリンに淡い恋心を抱くブッシュレンジャー役がこれまたほのぼのとしてサマになっている。ジャックたちブッシュレンジャーは旅人が乗る馬車を襲って金品を奪ったりする盗賊ではあるものの、襲うのは見るからに裕福そうな旅人限定だし町の人々の生活を脅かすようなことはしない一方、ミックの上司の警察本部長でありながらあれこれ悪事を企む、メイン・キャラの中で唯一の悪人ともいえるフランシス・フラー役にジェレミー・シムズ(「シークレット・メンズ・ビジネス」)。ちなみに主人公ジャック役のダニエル・マクファーソンとジャックの恋人で町でパブ兼売春宿を営むメアリー役のゾイ・ヴェントゥーラは本作での共演を機に実生活でも付き合い始め2015年に結婚、19年に長男に恵まれたが翌2020年に離婚。
ゲストを除き、毎回のエピソードに登場する主要キャラの中で唯一の悪役ともいえる町の警察本部長フランシス・フラー(ジェレミー・シムズ:右から2人目)
メイン・キャラ以外のゲストには、4話と5話に登場のシドニーからホープトンの町に来る若手人気舞台女優シャーロット役に「ナルニア国物語/第3章:アスラン王と魔法の島(The Chronicles of Narnia: The Voyage of the Dawn Treader)」(10)のローラ・ブレント(「ア・フュー・ベスト・メン」)が扮しており、町長宅での晩餐会のシーンでは美声で歌も披露しているほか、やはり5話にアーロン・ジェフリー(「パーム・ビーチ」「イースト・ウエスト101 ③」「ストレンジ・プラネット」)が表向きは牧師だが実は盗っ人という役でゲスト出演。ジェフリーは日本でもオンエアされたオーストラリアの連ドラ「ウェントワース女子刑務所(Wentworth)」をはじめ、オーストラリア国内では01年から09年まで8シーズン続いた高視聴率の連ドラ「マクレオズ・ドーターズ」にメイン・キャラクターの一人としてレギュラー出演するなど正統派のイケメン男優としてオージー女性たちの間で絶大な人気を博した。また11話のゲストでこちらも悪人のマッド・ドッグ役にオスカー候補女優ジュディ・デイヴィスの夫コリン・フリールズ(「台風の目」「ハーモニー <1996年版>」)が登場。ゲストも男優メインの中、ローラ・ブレントと並んで数少ないゲスト女優として7話と8話に男装の麗人ジェシー役で出演のミラ・フォークス(「ザ・プリンシパル」「アニマル・キングダム」)も印象に残る。
馬を疾駆させるチェイス・シーンや派手に転倒する馬車、家屋爆発など大がかりなアクションもふんだんに盛り込みつつ、ストーリー自体はごく分かりやすいので、安心してハラハラドキドキしながら観ることができる娯楽作品としておすすめ。
【ドラマに登場するキーワード】“ブッシュレンジャー(bushranger)”は植民地時代のオーストラリアの田舎にいた盗賊で、複数形は“ブッシュレンジャーズ(bushrangers)”。主に脱走犯が郊外のブッシュ(森林)に身を隠して盗賊になったことからそう呼ばれるようになった。不当な扱いを受けていた元流刑移民やその子孫も多かった当時の世間一般のオーストラリア人たちからは、反体制的なブッシュレンジャーの存在はむしろ好意的に受け止められていた面もある。オーストラリア国内だけでなく世界的にも最も有名な実在のブッシュレンジャーにネッド・ケリー(1855〜1880)がいて、彼の生涯はヒース・レジャー主演の「ケリー・ザ・ギャング」(03)を含みこれまでに何度も映画化されている。
STORY
1860年代オーストラリア、ゴールド・ラッシュで賑わうニュー・サウス・ウェールズ州の田舎町ホープトンに鉄道路線の誘致を狙うホープトンの町長ジェイムズ・ファイフ(クリストファー・ストラリー)は、ブッシュレンジャーのジャック(ダニエル・マクファーソン)やダン(マイケル・ドーマン)たちが巻き起こす問題に頭を抱えている。ジャックはホープトンでパブ兼売春宿を経営するシングルマザーのメアリー(ゾイ・ヴェントゥーラ)と密かに付き合っているが、二人の幼馴染で町の警察の巡査部長ミック(ナサニエル・ディーン)もメアリーに思いを寄せていた。ホープトンの警察本部長として新たに赴任してきたフランシス・フラー(ジェレミー・シムズ)はファイフ町長の一人娘エミリア(アナ・ハッチソン)に一目惚れするが、エミリアは馬丁のコンラッド(アレクサンダー・イングランド)とこちらも密かに相思相愛の仲であることを知り、フラーはコンラッドに馬泥棒の濡れ衣を着せ、ジャックとダンとともに逮捕。同じ護送車に乗せられた3人は、機転を利かせて護送車から脱出することに成功、森の中の粗末な一軒家でひっそりと暮らす男やもめキャプテン・ガンパウダー(デイヴィッド・フィールド)のもとに逃げ込む。ガンパウダーはむさ苦しい身なりの自分のことを常に優しい笑顔とともに彼の本名であるフレデリックと呼んで気さくに話しかけてくれる町の小学校の教師キャサリン(キャロライン・ブレイジアー)に恋心を抱いている。かくしてジャック、ダン、コンラッド、ガンパウダーの4人はブッシュレンジャーとしてチームを組むことになり…。
※連続ドラマ「ワイルド・ボーイズ」はチャンネル7系の公式配信サイト、7プラスで無料配信、全話無料観賞可能!→ 7plus.com.au/wild-boys
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