自分のことがもっと好きになれる映画「ミュリエルの結婚」

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ミュリエルの結婚

Muriel’s Wedding

(オーストラリア1994年、日本1996年公開/101分/M15+/コメディ・ドラマ)

監督:P.J.ホーガン
出演:トニ・コレット/レイチェル・グリフィス/ビル・ハンター/ジーニー・ドライナン/ダン・ワイリー

 ジュリア・ロバーツ主演の「ベスト・フレンズ・ウェディング(My Best Friend’s Wedding)」(97)でハリウッド進出を果たしたP.J.ホーガン監督の出世作として、その3年前の1994年に劇場公開されたオーストラリアとフランス出資のコメディ・ドラマ映画。ストーリーの核となるのはタイトルにもある通り主人公ミュリエルの“結婚”、それも純白のドレスをまとった花嫁が登場するお馴染みの華やかな挙式で、同じテーマがそのまま「ベスト・フレンズ・ウェディング」にも受け継がれたとみられる。同年度オーストラリア・アカデミー(AFI)賞(現AACTA賞)で主要10部門11候補となり(助演女優賞にヒロインの親友役と母親役がダブル・ノミネイションを受けた)、作品、主演女優(トニ・コレット)、助演女優(レイチェル・グリフィス)、音響賞の4部門受賞に輝いた。ちなみに残念ながら受賞を逸したのは監督、助演男優(ビル・ハンター)、本作からのもうひとりの候補者に敗れた助演女優(ジーニー・ドライナン)、脚本、美術、衣装デザイン、編集賞。翌年には全米でも公開されヒットし、本作を機にハリウッドに進出したのは監督だけでなく、タイトル・ロールである主人公ミュリエルを演じたトニ・コレットは本作で米ゴールデン・グローブ賞主演女優賞候補となり、その後「シックス・センス(The Sixth Sense)」(99)で、ミュリエルの親友ロンダ役のレイチェル・グリフィス(「ケリー・ザ・ギャング」)も「ほんとうのジャクリーヌ・デュプレ(Hilary and Jacky)」(98)でそれぞれ米アカデミー助演女優賞にノミネイトされる大出世ぶり。映画の公開から20年以上を経た2017年にミュージカル舞台化、11月にシドニーで初演の幕を開け、ミュージカル版も絶賛を博した。

映画の宣材写真用と思われ実際の映画の中にはこんな和やかなスナップ撮影をするシーンはないが…(左からレイチェル・グリフィス、ダニエル・ラパイン、トニ・コレット、ビル・ハンター)
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ミュリエル(トニ・コレット:写真左)は旅先で再会した高校時代の同級生ロンダ(レイチェル・グリフィス)と意気投合し…
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 撮影はゴールド・コーストなどクイーンズランド(QLD)州とシドニーで行われ、ホリデイのシーンのハイビスカス島は海外ロケではなくQLD州ハミルトン島で、そして意外なことにQLD州にあるはずのミュリエルの実家のシーンはシドニー郊外ナラビーンで撮影された。

 ストーリーそのものは、極端な例えであるが76年の有名なホラー映画「キャリー」のコメディ版といったところ。ブスで根暗な女子高生キャリーが学園祭の女王に選ばれてクライマックスを迎える「キャリー」に対して、こちらはブスでデブのミュリエルが、父親や周囲の女友達など自分を馬鹿にしてきたすべての人を見返す最高の手段として、誰もが羨む男性とついに結婚することでクライマックスへと至る。両作品ともそこからの展開がさらなる見どころである点も共通している。

ミュリエルを馬鹿にする女友達のグループを演じる女優陣もピッパ・
グランディソン(左)やソフィー・リー(中央)など豪華キャストだった

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ミュリエルの母親役を演じたジーニー・ドライナンも
本作で同年度オーストラリア・アカデミー助演女優賞候補に

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 その後「演技派女優」としての地位を確立したコレットとグリフィスはそれぞれ主役、準主役として映画をグイグイと引っ張る見事な演技力を見せる。ほかもミュリエルの両親役でそれぞれ助演男女優賞にノミネイトされた故ビル・ハンター(「オーストラリア」「プリシラ」)とジーニー・ドライナン(「ペイパーバック・ヒーロー」)を筆頭に全豪映画TVドラマ界のオール・スター・キャストだが、中でもミュリエルの理想の男性である水泳選手デイヴィッド役のダニエル・ラパインはその後活動の拠点を英国に移し主にTVドラマで活躍、近作に2015年に始まりシリーズ化された人気の連ドラ「ヴェルサイユ」の英国王チャールズ2世役などがある。また、ミュリエルを馬鹿にするビッチな女友達集団のリーダー格にソフィー・リー(「ヒー・ダイド・ウィズ・ア・ファラフェル・イン・ヒズ・ハンド」)が扮しているほか、その女友達のグループが旅先で知り合う男の子たちの一人として、本作と同じ94年公開の「プリシラ」の監督ステファン・エリオットが出演しており、エリオット監督は自身の監督作品「プリシラ」でもリゾート・ホテルのドアマンとして登場、両作品でイケメンぶりを披露している。ほかにもミュリエルの弟でミュリエル同様、両親の家でだらしないパラサイト生活を送るペリー役にダン・ワイリー(「ハーケンクロイツ/ネオナチの刻印」)。

ミュリエルがついに見つけた理想の男性である水泳選手デイヴィッド
(ダニエル・ラパイン:左)とそのコーチ(クリス・ヘイウッド)には
実はある思惑があり…

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 ミュリエルはABBAの大ファンという設定で、90年代半ば当時でも若い女性が憧れるグループとして既にABBAは流行遅れだったが(※後述)、それがミュリエルの野暮ったい性格を物語るだけでなく、きらめきたるABBAのヒット曲の中にこそミュリエルの理想の世界があるというキャラクター設定にもなっていて効果的。ABBAの曲は本作に何曲も登場するが、中でも最大のヒット曲「ダンシング・クイーン」は3回も、だがいずれも非常に印象的に流れる。特に2回目は壮大なオーケストラ・ヴァージョンで、ミュリエルが初めて憧れのウエディング・ドレスを着た自分自身を鏡の中に見るシーン(映画を観てのお楽しみだが、決して結婚が決まったから着るわけではないところもポイント)で感動的に使用されている。

旅先のホテルで開催されたモノマネ大会でABBAに扮し、クチパクでABBAの
ヒット曲「恋のウォータールー(Waterloo)」を披露するロンダ
(レイチェル・グリフィス:左)とミュリエル(トニ・コレット)

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シドニーに移り住んだミュリエル(トニ・コレット:左)に
思いを寄せる青年ブライス(マット・デイ)

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 誰もが認めるブスでデブなミュリエルが、話が進むにつれて少しずつ綺麗な女性に見えてくる。実際、コレットは前半のシーンのために7週間で体重を増やし(しかも18キロも!)、おそらく脚本に沿った順撮りに従って体重を元に戻すという驚異的な女優魂で撮影に取り組み、メイクも徐々に洗練されたものに変えていったことからくる明らかな外見の変化もあるが、それだけではないミュリエルの内面の美しさがスクリーンを通して観る者にも伝わってくるからだろう。観終わった時に「自分のことがもっと好きになれる」映画だ。

【セリフにおける英語のヒント(その1)ミュリエルがABBAのファンであることを女友達に時代遅れだと馬鹿にされるシーンで、女友達の一人が「私たちはニルヴァーナとかベイビー・アニマルズを聴くのよ」と言うセリフがある。ニルヴァーナは日本でも知名度の高い米国のグループで、ベイビー・アニマルズ(Baby Animals)は本作が公開されたのと同じ90年代前半にオーストラリア国内で一世を風靡したオージー・ロック・バンドのことである。

【セリフにおける英語のヒント(その2)再会したロンダに自分は婚約していると嘘をついたミュリエルは、フィアンセの名前を聞かれ、とっさに思いついたティム・シムズだと答え、ロンダもそれ以上は突っ込まないが、ゴロとしては飲茶の点心の複数形を意味する「ディム・シムズ(Dim Sims)」と酷似しているというジョーク。

Story

 ビーチ・リゾートとして観光客で賑わうオーストラリア・クイーンズランド州のとある町に住むミュリエル(トニ・コレット)は、妹と弟ともども成人しても両親の家で仕事もせずのパラサイト生活の毎日で、父親をはじめ女友達のグループからも馬鹿にされている。そんなある日、旅先で高校時代の同級生ロンダ(レイチェル・グリフィス)と再会し意気投合、旅行から戻った直後、ロンダを頼ってシドニーに移り住む。名前もミュリエルからマリエルに変え、いつかきっと純白のウエディング・ドレスを着ることを心に誓い…。

「ミュリエルの結婚」予告編

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