国民的存在のオージー女性作家の息吹を感じて…/メイ・ギブス記念館「ナットコート」

【ここに掲載しきれなかった部屋や景観多数ありの
ナットコート取材YouTube動画はこちら!】

 ニュートラル・ベイに隣接するクラバ・ポイントの海を見下ろす小高い丘に、国民的人気と知名度を誇るオージー女性児童文学作家/イラストレイターのメイ・ギブスが92歳で亡くなるまでの44年間をアトリエ兼住居として暮らしたニュー・サウス・ウェールズ州ヘリテージ指定のメイ・ギブス記念館「ナットコート」がある。在豪歴の長い日本人でも案外知らない人が多い、隠れた観光スポットをご紹介!

May Gibbs2401916年撮影ということは39歳ごろのメイ・ギブスだが、彼女が生み出した童話のキャラクター同様、とても愛らしい女性だったことが分かる

 20世紀オーストラリアを代表する児童文学作家/イラストレイターのメイ・ギブス(1877〜1969)は、90歳で引退するまで精力的に創作活動を行ったことで知られる。彼女が発表したさまざまな児童文学書の数々は、日本でも「森の精霊の冒険ファンタジー スナグルポットとカドルパイ」というタイトルの邦訳本が出版されたこともある代表作で、ユーカリの実(ガムナッツ)を擬人化した“ガムナッツ・ベイビーズ”シリーズのひとつ「スナグルポット&カドルパイ」を筆頭に、没後50年以上を経た今も愛され続けている。

 私生活では1919年に9歳年上の一般オージー男性と結婚、新郎51歳、新婦42歳、どちらも初婚というかなりの晩婚カップルだったが夫婦仲は良く、1939年に夫に先立たれるまで20年間添い遂げ、メイ自身は92歳の長寿を全うした。

Japan日本でも出版されたメイ・ギブスの代表作「森の精霊の冒険ファンタジー スナグルポットとカドルパイ(Snugglepot and Cuddlepie)」

 ナットコートは1925年に当時売れっ子だったオージー建築家B・J・ウォーターハウスにメイ夫妻が依頼して建てられ、通りに面した車2台分のガレイジの奥に中庭、そして母屋、母屋の裏にも海を見下ろす庭園がある。メイ自身も当時既に売れっ子作家になって久しかったにもかかわらず、家屋自体は“人気作家の家”としては非常に小ぢんまりとしており、母屋は2階建てだが下の階はすべて物置だったようで、上の階は応接間を囲むようにダイニング・ルームとメイのアトリエ、キッチン、トイレ併設のバスルームがある以外、寝室は3つだけ。しかも夫妻はそれぞれ別々の寝室で寝ていたから、実質的なゲスト用の寝室は1部屋だけということになる。キッチンに至っては現代オーストラリアの一般的な一軒家のそれと比べても狭い方だが、豪華さよりも合理性かつ機能性を重視したメイの性格が垣間見れるようで微笑ましい。また、こちらもメイの建築家へのリクエストだったと思われるが、どの部屋からも美しい海景色を望めるようになっており、窓が多いことからとても明るいのが特徴。母屋はほとんど手を加えられずメイ夫妻の暮らしぶりが手に取るように分かる。

通りに面した入り口はかつてガレイジだった建物
1

母屋の正面入り口
2

メイが創作活動に勤しんだアトリエ
3

応接間兼リヴィング・ルーム
4

ダイニング・ルーム
6

キッチン
5

 ちなみにナットコートは米オスカー作品賞と主演女優賞を受賞した映画「ドライビングMissデイジー」(89)で知られる大御所オージー、ブルース・ベレスフォード監督の2018年のオーストラリア映画「しあわせの百貨店へようこそ(Ladies in Black)」でジュリア・オーモンドとヴァンサン・ペレーズ演じる夫婦の家として撮影に使用されたこともある(※ジャパラリアで同映画を紹介した際の記事全文はこちら!)。

映画「しあわせの百貨店へようこそ」でナットコートが使用されたシーンは何度も出てくるが、以下は応接間兼リヴィング・ルームで撮影された1シーン(左からアンガーリー・ライス、ジュリア・オーモンド、ヴァンサン・ペレーズ)
8

 一方、かつてガレイジだった建物内部は改装され、ギフト・ショップとカフェになっている。カフェではコーヒー紅茶やサンドウィッチ、手作りスコーンなどのほか、事前予約によりハイ・ティーも楽しめるから、館内を観て回った後は、テラス席でこちらもメイが愛した自慢の中庭の美しい緑を眺めながら、偉大な児童文学作家メイ・ギブスの息吹をぜひ感じてみて。

メイ・ギブスのイラストをあしらった子供服なども充実のギフト・ショップ
8

カフェのメニューで唯一、要事前予約のハイ・ティー(写真)は入館料と好きなコーヒー紅茶込みで1人$55(紅茶はフレンチ・アール・グレイもあり♪)
7

※館内日本語ガイドツアーもあり!(日時を確認の上、事前予約を/詳細はこちら!→ maygibbs.com.au/japanese-tours

【ここに掲載しきれなかった部屋や景観多数ありのナットコート取材YouTube動画はこちら!】

May Gibbs’ Nutcote – info

●5 Wallaringa Ave., Kurraba Point, Neutral Bay ●開館時間:祝日を除く水〜日11am-3pm(最終入館時間2:30pm) ●入館料:大人$12.50、コンセッション$11.50、子供(4歳未満)$6 ℡: (02)9953-4453 maygibbs.com.au

【今月号関連の動画】
ジャパラリア公式YouTubeチャンネル最新投稿
(※動画視聴は以下のそれぞれのタイトルをクリック♪)
●【レストラン取材】スシトレイン・ボンダイ・ジャンクション店
●【シドニー探訪】メイ・ギブス記念館「ナットコート」