日本独自の陶磁器の修復技術で、日本の伝統文化の域にまで昇華した金継ぎを学べるシティのスクール「金継ぎオーストラリア」が人気を集めている。
講師・諸岡淳さんによる金継ぎ作品
1回2時間完結の「モダン金継ぎビギナー講座」では四角い皿を作成
金継ぎは約600年前の室町時代、8代将軍・足利義政が大切に愛用していた、足利家に代々伝わる茶碗が割れた際に修復させたのが起源ともいわれている。本式の金継ぎは漆を使用し接着・補修をした後、接着面に金粉をふりかけて磨き上げる(別の日本の伝統工芸・蒔絵の技術が基になっている)。文化・芸術を愛した義政の時代は茶の湯、生け花、枯山水(かれさんすい)など総称して「東山文化」と呼ばれる今に伝わる伝統文化が花開いた時代でもある。
金継ぎオーストラリアは日本の金継ぎ師5人に師事した諸岡淳(じゅん)さんが2018年にシティに開校するや話題を集め、メルボルン、ブリスベン、キャンベラ、ニューキャッスルなどでも出張開講(メルボルンとブリスベンでは現在も定期的に開講)。
オペラ・ハウスで金継ぎ講座開催!
金継ぎは次第にオーストラリアのメディアも注目するようになり、「ザ・バチェラー」「ザ・リヴィング・ルーム」「シドニー・ウイークエンダ-」といった人気TV番組のほか、つい最近も権威ある経済紙「オーストラリアン・ファイナンシャル・レヴュー」9月初旬発行号で大きく取り上げられた。
さらにシドニー・オペラ・ハウスからも正式に招かれ、完成したばかりの館内多目的ルームで30人の参加者を集めてのワークショップが9月11日に開催され、チケットは早々に売り切れてしまったとのこと。
早々にソールド・アウトとなり30人の受講者を集め9月11日に開催されたシドニー・オペラ・ハウスでのワークショップ(前列中央右に諸岡淳さん、後列右端がひとみ夫人)
金継ぎが今なぜ受け入れられているのか?
ここまでオーストラリアで金継ぎが受け入れられるようになった背景を諸岡淳さんは次のように考察する。「ひとつは、サステイナブルな生き方を支持する人が多い現代オーストラリアの時代の流れがあるでしょう。壊れたら捨てるではなく修復して持続して使う。さらに、直した傷を隠すのではなく美しいものとして受け止める精神や哲学に共鳴できたからだと思います。それは物だけでなく人間の心身、パートナーや周囲との人間関係にも当てはめられます」
楽しく学べる3種類の講座♪
漆を使用した伝統的な金継ぎが学べるのはオーストラリアでは同校だけだが、エポキシ樹脂などを使用して誰でも簡単にできる「モダン金継ぎビギナー講座」もあり、そちらは2時間完結で教材費込み$120という気軽さもあってカップルや友人同士などが相手の誕生日にプレゼントという形で2人以上で参加する人も多い。さらに淳さんの奥さん、ひとみさんによる「金継ぎアクセサリー講座」(2時間/$120/教材費込み)も大人気で、ピアス/イヤリングまたはブローチとペンダント・トップを作る。
淳さんの奥さん、ひとみさんによる「金継ぎアクセサリー講座」も大人気
2018年の開校当初は受講者のほとんどがオージーやローカルの人ばかりだったそうだが、一種の“逆輸入”現象のように最近では徐々に在住日本人の受講者も増えてきているというから、興味がある人はぜひ!
Kintsugi Australia
受講申込・問い合わせE-mail: kintsugi2000@gmail.com 公式サイト:kintsugi-australia.com.au
*シドニー・スタジオ…●Suite 402, 235 Clarence St., Sydney
*メルボルン・スタジオ…●Suite 713, Level 7, 1 Queens Rd., Melbourne
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