「アバター」主演のサム・ワーシントンの映画デビュー作「タップ・ドッグス」

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※2022年1月18日更新

タップドッグス

Bootmen

(オーストラリア2000年、日本2001年公開/95分/M/タップ・ダンス・ドラマ)

監督:デイン・ペリー
出演:アダム・ガルシア/サム・ワーシントン/ソフィー・リー/リチャード・カーター/ウィリアム・ザッパ/スージー・ポーター

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 2000年シドニー・オリンピックの開幕式でもパフォーマンスを披露したオーストラリアの人気タップ・ダンス集団タップ・ドッグス主宰のダンサー/振付師デイン・ペリーの劇場映画初監督作品として、シドニー五輪と同じ2000年に封切られた豪米合作映画。主人公ショーン役にシドニー五輪の開幕式でタップ・ドッグスとともに踊ったほか、ミュージカル「サタデー・ナイト・フィーバー」のロンドン公演の主演により本作の前年、英ローレンス・オリヴィエ賞のミュージカル部門最優秀男優賞候補にもなった歌って踊れるオージー男優アダム・ガルシアが、そして普段は配管工のタップ・ダンサー、コリン役にもタップ・ドッグスのメンバーであるアンドリュー・カルスキーが起用され、同年度オーストラリア・アカデミー(AFI)賞(現AACTA賞)では作品、主演男優(ショーンの兄ミッチェル役のサム・ワーシントン)、編集賞など8部門にノミネイトされ、撮影、作曲、美術、衣装デザイン、音響賞の5部門受賞に輝いた。本作の9年後の09年に「ターミネーター4」の準主役と「アバター」主演により一気にハリウッドでスターダムを築き上げることになるオージー男優サム・ワーシントンの劇場映画デビュー作でもあり、映画自体は大したヒットにはならなかったが、世界中でオンエアされたシドニー五輪開幕式でパフォーマンスを行ったタップ・ドッグスの映画という話題性もあってか、日本でも翌01年に原題の「ブートメン」ではなく「タップ・ドッグス」という邦題で公開されただけでなくVHS、その後DVDでもソフト化されたほど(※ダンス集団としてのタップ・ドッグスは日本を含み海外公演も行っている)。

タップ・ダンスに情熱を注ぐ主人公ショーンを、自身もプロのダンサーかつ俳優のアダム・ガルシアが好演
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水を張った中で踊ったりと圧巻のタップ・ダンス・シーン
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 ダンス・シーンがメインの映画「サタデー・ナイト・フィーバー」(77)や「フラッシュダンス」(83)同様、本作もタップ・ダンスのシーンがふんだんに盛り込まれているだけでなく、やはりその2作品と同じように主人公ショーンは普段は工業都市ニューキャッスルの製鉄所で働く“肉体労働者”という点も共通しているが、単なるパクリではなくショーンと同じようにニューキャッスル出身でタップ・ダンサーになる前は製鉄所で働いていたデイン・ペリーの実体験が基になっている。兄弟役のワーシントンとガルシア(※実年齢は兄役のワーシントンの方が弟役のガルシアより3歳年下)、若くして妻を亡くし男手一つでその兄弟を育てた父親役のリチャード・カーター(「華麗なるギャツビー」「イースト・ウエスト101   」)、ショーンと引かれ合う町の美容師リンダ役のソフィー・リー(「ヒー・ダイド・ウィズ・ア・ファラフェル・イン・ヒズ・ハンド」「ザ・キャッスル」「ミュリエルの結婚」)、地元のタップ・ダンス教室のオーナーでショーンのダンサーとしての才能を認め、ショーンのことを可愛がるウォルター役のウィリアム・ザッパ(「デッド・ユーロップ」「ヘッド・オン!」)など、ほかもミッチェル(ワーシントン)の商売敵である悪役を演じたアンソニー・ヘイズに至るまで全員魅力的でキャラクター設定とキャスティングはバッチリなのだが、非常に残念ながら脚本がお粗末でストーリーは80年代のB級青春映画並み。80年代だったらまだ許されたかもしれないが、21世紀を迎えた年の映画としては安っぽいといわざるを得ない。ペリーは監督だけでなくダンス・シーンの振り付けに加え本作の脚本を手がけた3人の中にも名を連ねているが、監督と振り付けだけに専念して脚本は腕のいい脚本家を起用して任せるべきだっただろう。

劇場映画デビュー作ながら本作により豪アカデミー主演男優賞にノミネイトされたサム・ワーシントン(中央)
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 上記以外の出演者では前述の配管工ダンサー、コルことコリンの恋人役でスージー・ポーター(「しあわせの百貨店へようこそ」「パルス」「イースト・ウエスト101   」「リトル・フィッシュ」「トゥー・ハンズ/銃弾のY字路」)が登場しているほか、ショーンがオーディションで選ばれたシドニーの一流劇場でのタップ・ダンス公演の主役である人気ダンサー、アンソニー役に監督のデイン・ペリーが、さらにはショーン兄弟の亡くなった実母役にデイン・ペリーの妻リサ・ペリーが扮している。撮影は物語の舞台となるニューキャッスルとシドニーで行われ、映画の中に出てくるシドニーの一流劇場はシドニー市街地にあるステイト・シアターが、スタジアムのシーンはニューキャッスルのマラソン・スタジアム(現ニューキャッスル・スポーツ・センター、通称マクドナルド・ジョーンズ・スタジアム)が使われた。また、ニューキャッスルの有名な観光スポットでもあるストックトン・ビーチのシーンで座礁し半ば朽ち果てた大型船が映っているのは1974年に嵐で難破したノルウェイの貨物船MVシグナで、ニューキャッスルの名所のひとつとして観光客にも人気だったがその後の風化により徐々に船体が崩壊し、2016年にはほぼ完全に海の底に沈んでしまい現在では見ることができない。

左から3人目がアダム・ガルシア、その右隣がサム・ワーシントン
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 タップ・ダンスというと往年の白黒ハリウッド映画などでも男性ダンサーは燕尾服を着て優雅に踊るイメージが強いが、ペリーが生み出したグループ、タップ・ドッグスは労働者階級のごくカジュアルな服を着て、作業用のワーク・ブーツに金具を打ち付けたものがタップ・シューズ代わり。舞台装置も製鉄所さながら、ドラム缶や鉄板、金網を使ったりと、優雅さはない代わりに斬新でダイナミックこの上なく、本作でも公演に向けてのリハーサル、そしてクライマックスとなる公演本番のシーンは圧巻だ。ストーリーはB級青春映画並みとはいえ、タップ・ダンスに情熱を傾けるショーンの姿は感動的で、できればタップに限らず将来ダンサーを夢見る子供たちにもぜひ観てほしい映画なのだが、はなはだもって無意味なエッチ・シーンがあるため子供には見せられず、やはり脚本は失敗と言うしかない。同様に、プロのダンサーを夢見るショーンが喫煙者というのもいかがなものだろう。本作が公開された2000年というと既にオーストラリアでも喫煙者は肩身の狭い思いをしていたという風潮も踏まえると、身体が資本のダンサーになろうという若者がタバコを吸うことには一切好感が持てないし、タバコだけならともかく兄ミッチェルが持っていた大麻を一緒に吸うシーンもあり、こちらも子供に見せられない、それもストーリーとは全く無関係の設定をわざわざ持ち込んだ点も謎。脚本さえ良ければもっとヒットしていたかもしれないと思うとつくづく残念な映画でもある。

Story

 シドニーが州都であるニュー・サウス・ウェールズ州の港湾・工業都市として知られるニューキャッスルで幼いころから兄ミッチェル(サム・ワーシントン)とともにタップ・ダンスを習っていたショーン(アダム・ガルシア)は大人になり、二人とも父(リチャード・カーター)と同じ地元の製鉄所で働いているが、ショーンはプロのタップ・ダンサーになる夢を諦めきれずにいた。そんなある日、ショーンはシドニーの一流劇場で行われるタップ・ダンス公演のオーディションを受け、見事ダンサーのひとりに選ばれシドニーへ向かうが、主役のダンサー、アンソニー(デイン・ペリー)の婚約者がショーンに色目を使うことからアンソニーに嫌われてクビになり、ニューキャッスルに戻ってくる。しかしショーンは夢を諦めず、かつて同じタップ・ダンス教室に通っていた仲間を集めて地元で公演を行うことを思いつき…。

「タップ・ドッグス」予告編

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