お近づきになりたくない“あぶない刑事“(連ドラ「バッド・コップ、バッド・コップ」)

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※2021年9月23日更新

バッドコップバッドコップ
(連続ドラマ)

Bad Cop, Bad Cop

(オーストラリア2002〜03年TV放映、日本未公開/1話26〜27分・全8話/M15+/コメディ刑事ドラマ/オーストラリアを含む英語圏のAmazonプライムで全話観賞可能

監督:ケイト・ショートランド(3・4・6・8話)/デイヴィッド・シーザー(1・2・5・7話)
出演:マイケル・ケイトン/ダン・ワイリー/ヘレン・トムソン/クリス・ホブス/ロイ・ビリング

(※以下、文中の紫色の太字タイトルをクリックすると該当作品の本コーナーでの紹介記事へとジャンプします)

 国営TVラジオ局ABC製作の下、2002年末から03年初めにかけて全豪オンエアされた1話30分、全8話の連続コメディ刑事ドラマ。ケイト・ショートランドとデイヴィッド・シーザーが4話ずつ監督し、2人ともTVドラマだけでなく劇場映画の監督としても知られ、特に本作でまずTVドラマ監督デビューしたケイト・ショートランドは本作の2年後の2004年に「15歳のダイアリー(Somersault)」で劇場映画監督デビューして以来、「さよなら、アドルフ(Lore)」(12)、「ベルリン・シンドローム」(17)、「ブラック・ウィドウ」(21)など海外でも話題を集めヒットした映画も監督、ジリアン・アームストロングと並んでオーストラリアを代表する女性監督としての地位を築き上げている。コメディながら2002年度オーストラリア・アカデミー(AFI)賞(現AACTA賞)TVドラマ部門において、トラブルに巻き込まれるパブのオーナー役で第8話にゲスト出演のギャリー・ワデルが最優秀ゲスト助演男優賞にノミネイトされた。全編シドニーで撮影され、主要キャラたちがよくビールを飲むパブとしてクロヴェリーというサバーブにある実在のクロヴェリー・ボウリング・クラブが外観・内装ともに何度も出てくる(※ボウリングといっても日本で一般的なテンピン・ボウリングではなく屋外で行うローン・ボウリングのことで、厳密にはパブではなくクラブハウスの中のバーラウンジということになるが、本作を観ると分かる通りオーストラリアのボウリング・クラブのバーラウンジはパブと似たような雰囲気を持つ)。以前本コーナーで紹介した別の刑事ドラマ「イースト・ウエスト101」がシドニーでも英語圏以外からの労働者階級の移民たちが多く住む内陸部のウエスタン・サバーブ(西郊)を主に舞台にしていた一方、本作では比較的アングロサクソン系の富裕層が多い東海岸にあるイースタン・サバーブ(東郊)が主な舞台となり、セリフに出てくるサバーブ名はすべて実在。

主人公の2人の刑事ルー(ダン・ワイリー:左)とレッド(マイケル・ケイトン)
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 主人公は中年刑事レッドと、その相棒の若手刑事ルーの2人で、この2人が刑事でありながらそろいもそろって腐敗しきっているというのが物語の本筋。メイン・テーマとともに主要キャスト/スタッフの名が映し出される毎エピソードのオープニングでは、スーツにネクタイ姿のレッドとルーがどこかで買ったバーガーの包みとソフト・ドリンクのカップを手にビーチを歩いていて、その途中、巨大なスピーカーを肩に抱え騒音公害ともいえる大音量の音楽を流しながら歩く男とすれ違っても、明らかに麻薬の受け渡しをしていそうな2人組が目に入っても、若い女性が男に拉致されそうになって叫んでいても、ひとりの青年が数人組の男たちに殴られていても見て見ぬふり。この冒頭部分だけで2人の性格が一目瞭然だ。レッドもルーも刑事として善良な一般市民を悪から守りたいなんて正義感も義務感もこれっぽっちもないのだ。仕事らしい仕事をしないばかりか、事件現場で発見された証拠品である財布から現金をチョロまかしたりするのは当たり前、さらには犯罪者たちと繋がって口止め料を巻き上げたりする始末。ランチはビーチ沿いに車を停めて2人でバーガーと炭酸飲料水、午後は早い時間から警察署内の自分たちのオフィスでビールを飲み始め、夜も当然パブでビールを飲むのが日課という有り様。さすがにそんな2人に警察内部でも疑惑の目が向けられ、毎回のエピソードで2人の不正がバレそうな何らかの事件が起こり、それをなんとか回避するよう動くというのがある意味、2人の唯一の“仕事”だ。国営放送のABCがよくこんなドラマをオンエアしたものだと拍子抜けするが、そこはコメディなので、さすがにここまで堕落しきった刑事はいないだろうという前提で観る側も安心して笑いながら観ることができる。実際にはオーストラリアでも時代ごとに警察の腐敗・汚職が深刻な問題として取り上げられることもあるから、そこを踏まえてあえてコメディとして笑い飛ばそうというのが製作者が意図したところではないだろうか。

 中年刑事レッドを演じるマイケル・ケイトン(「ザ・キャッスル」)と若手刑事ルー役のダン・ワイリー(「アニマル・キングダム」「ミュリエルの結婚」「ハーケンクロイツ/ネオナチの刻印」)はどちらもいい味を出していて、別の意味でこんな“あぶない刑事“、実生活では決してお近づきになりたくないが、それぞれ憎めない魅力がある。

レッドとルーと仲のいい女弁護士トレイシー(ヘレン・トムソン)
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 レッドとルー以外のレギュラー・キャラクターではまずヘレン・トムソン(「パルス」)演じる女弁護士でレッドとルーと仲のいいトレイシーが光る。各エピソードに1話だけ登場するゲスト出演の女優を除くとトレイシーは主要キャラの中では紅一点の存在となり、トムソンは肩にかかるブロンドの髪をなびかせ、颯爽とした女弁護士を好演。レッドとルー、トレイシーの3人がパブで飲むシーンが何度も出てきて、レッドとルーがビールを飲むのは分かるが、通常映画やドラマでは美人弁護士というとシャンパンやワインを飲みそうなところ、トレイシーも2人と同じく大きなスクーナー・グラスになみなみと入ったビールを飲み、それがまたサマになっているから見事(トレイシーは家ではウイスキーを飲んでいたりもする)。女だからと毎回ドリンクを2人におごらせず、自分でも3人分のビールをカウンターに買いに行って運んでくるところも“男前”なトレイシーだ。また、レッドとルーが終始スーツ姿なのに対し、トレイシーはファッションでも楽しませてくれ、そんな本作の衣装デザインは全編、ジャパラリア誌上グルメ・コラム「オージー・レシピ」でお馴染みのネヴィちゃんことネヴィル・カー(「ハーモニー」「パルス」「ハウス・オブ・ボンド」「ドリッピング・イン・チョコレート」「ワイルド・ボーイズ」「イースト・ウエスト101  」)が手がけた。

レッドとルーにあれこれいいように使われる車の修理工スリム(クリス・ホブス:右下)
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 そのほかのレギュラー・キャラには車の修理工でレッドとルーが自分たちの手先のようにあれこれ用を言いつける情けない便利屋のスリム(クリス・ホブス)が全話に出てくるほか、レッドとルーの上司でロイ・ビリング(「ハウス・オブ・ボンド」「マニー・ルイス」)演じる警視監プッド、同じ警察署のおとぼけ巡査部長フィル(ピーター・ブラウン)の2人もほとんどのエピソードに登場。プッド役のロイ・ビリングは海外でも「ナルニア国物語/第3章:アスラン王と魔法の島(The Chronicles of Narnia: The Voyage of the Dawn Treader)」(10)ののうなしあんよの頭(Chief Dufflepud)役などで知られる。

トレイシーはレギュラー・キャラクターの紅一点としてファッションでも楽しませてくれる
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 そして、各エピソードで起こる事件に関連してゲスト出演する俳優では第1話のラジオDJ役に、本国オーストラリアでは自身が生み出したキャラクター、ノーマン・ガンストンの名を冠したTVコメディ番組も持っていたほど国民的人気を博したコメディアン、ギャリー・マクドナルド(「ムーラン・ルージュ」「ピクニックatハンギングロック」)、3話の検視陪審の際にレッドに審問する女性検視官役にジニー・ネヴィンソン(「ミュリエルの結婚」)、5話の遺体となって発見される被害者の生前の浮気相手役にサラー・チャドウィック(「プリシラ」)が登場する。そして、4話の証拠物件となるヴィデオ・テイプを所持しているシェイン役のマシュー・ウィテットは、バズ・ラーマン監督の映画に脇役でよく起用され、「ムーラン・ルージュ」(01)のエリック・サティ役、「オーストラリア」(08)の修道士フランク役、「華麗なるギャツビー」(13)のウラディミール・トストフ役がある。また、8話ではトニー・マーティン(「キャンディ」「クライ・イン・ザ・ダーク」)が、ルーが電話で話す相手ギャリー・ムーン役で声のみの出演という形で出てくるが、トニー・マーティンは全豪TVドラマ界ではスター級の存在なので、これはある種の“友情出演”のようなものだろう。

左からクリス・ホブス、バズ・ラーマン監督作品の常連脇役で本作第4話にゲスト出演のマシュー・ウィテット、ダン・ワイリー
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 各エピソードに出てくる事件の一つひとつは現実社会でも起こり得なくはないが、レッドとルーが自分たちに不利になるような証拠をあからさまに隠蔽したりするその手口はいくら腐敗した刑事でもあり得ないやり方なので、前述の通りコメディだと割り切って、笑いながら観るのが正解だろう。1話30分、さほど頭を使わずサラッと楽しめる。

セリフにおける英語のヒント】第1話に出てくる言葉“フライバイズ(flybuys)”とはオーストラリアで最も知名度の高いポイント・カードの名称。

シーンに見るオージーライフスタイル】レッドやルーがパブではなく警察署内のオフィスでビールを飲むシーンで、ビール瓶をすっぽり覆っているのは“スタビー・ホルダー(stubby holder)”という名称の保冷カヴァー。真夏の暑い日に家の庭などでバーベキューを楽しむオーストラリアのビール愛好家の間ではごく一般的なアイテムで、海外にも同様の物が存在するが、スタビー・ホルダーというのはオーストラリアでのみ使われている名称。

Story(※本作のストーリーについては上記本文に掲載!)

※連続ドラマバッドコップバッドコップはオーストラリアを含む英語圏のAmazonプライムで全話配信!

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