長年の親友同士の女2人がどちらも相手の息子と恋に落ちる禁断の世界「美しい絵の崩壊」

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※2021年4月22日更新

美しい絵の崩壊

Adoration(※英米でのタイトルは「Adore」)

(オーストラリア2013年、日本2014年公開/112分/MA15+/ドラマ)

監督:アンヌ・フォンテーヌ
出演:ナオミ・ワッツ/ロビン・ライト/ゼイヴィア・サミュエル/ジェイムズ・フレッシュヴィル/ベン・メンデルソーン

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 ノーベル賞受賞の英国人女性作家ドリス・レッシング(1919〜2013)が03年に発表し日本でも09年に邦訳本が出版された短編小説「グランド・マザーズ」を、「ココ・アヴァン・シャネル」(09)などで知られるルクセンブルク出身の女性監督で主にフランスで活躍するアンヌ・フォンテーヌ監督の下に映画化。「21グラム」(03)と「インポッシブル」(12)で2度のオスカー主演女優賞候補歴を持つ英国出身のオージー女優ナオミ・ワッツ(「ケリー・ザ・ギャング」「ストレンジ・プラネット」「ブライズ・オブ・クライスト」)と、「フォレスト・ガンプ/一期一会」(94)の米国人女優ロビン・ライトの2人がともに主演女優として共演した豪仏合作映画で、全編シドニー及びニュー・サウス・ウェールズ州にて撮影された。同年度オーストラリア・アカデミー(AACTA)賞ではいずれも受賞を逸したが主演女優(ワッツ)、脚色、美術、衣装デザイン賞の4部門にノミネイトされたほか、海外でも米サンダンス映画祭やロンドン映画祭などに公式出品された。

少女時代からの親友同士のロズ(ロビン・ライト:左)とリル(ナオミ・ワッツ)
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ロズの息子トム(ジェイムズ・フレッシュヴィル:左)とリルの息子イアン(ゼイヴィア・サミュエル)も幼いころから実の兄弟のように育ち、固い友情で結ばれ
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 長年の親友同士で40代のリル(ワッツ)とロズ(ライト)が、2人とも相手の一人息子と相思相愛の仲になってしまうという禁断の世界を描いたドラマ映画だが、生理的嫌悪感を抱かせるようなエグさは一切ない。2組のカップルを演じる4人は全員美形で、美形だから禁断の愛が許されるというわけではないが、ワッツもライトも顔に小じわが刻まれかけているとはいえ、英語のスラングでいう“ヤミー・マミー(yummy mummy)”(直訳すると“美味しいママ”)、つまり出産して子供がある程度の年齢になってもまだまだ性的魅力が衰えない“イケてるママ”たちだし、息子たちもイケメンである。決定打はこの2カップル、どちらも最初に誘惑してくるのは息子たちの方なのである。いい歳こいた中年女が息子の親友を誘惑するのはエグいが、本作はそうではないのだ。映画の原題“アドレイション(adoration)”は“憧れ”という意味だが、2人の青年が母親の親友の女性を憧憬するだけでなく、母2人もまた、逞しく成長した息子の親友を眩しい目で見つめ、実際、ビーチでサーフィンする息子とその親友を見ながら2人で「見て、まるで若き神々のようだわ」と言うシーンがある。2組のカップルの大胆な濡れ場もとても美しく描かれ、その点でも好感度が高い。

イアン(ゼイヴィア・サミュエル)とロズ(ロビン・ライト)
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リル(ナオミ・ワッツ)とトム(ジェイムズ・フレッシュヴィル)
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 ワッツとライトの安定した演技もさることながら、リルの息子イアン役に扮したゼイヴィア・サミュエル(「ア・フュー・ベスト・メン」)、ロズの息子トム役ジェイムズ・フレッシュヴィル(「アニマル・キングダム」)、どちらも非常に印象に残る演技を見せる。また、本作では脇役にすぎないがロズの夫でありトムの父親ハロルド役でベン・メンデルソーン(「アニマル・キングダム」「オーストラリア」「シークレット・メンズ・ビジネス」)が脇を固める。ちなみに本作で親子役のメンデルソーンとフレッシュヴィルは、本作の3年前の「アニマル・キングダム」では叔父と甥役を演じた。

 もう一人、リルに言い寄るものの相手にされない中年男ソウル役のギャリー・スウィートは主に全豪TVドラマ界で活躍し、本作で彼を初めて見る人には信じられないかもしれないが、若かりしころはオージー女性たちから絶大な人気を集めたハンサムぶりで、92年にはオーストラリアの人気女性誌が企画した“最もセクシーな男性”としてヌード写真を披露したこともあるほど。

ロズ(ロビン・ライト)は夫ハロルド(ベン・メンデルソーン)との夫婦仲もいいが
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 作中、大きな“事件”に発展するセリフが2回登場する。まず最初はロズの息子トムが母ロズと自分の親友イアンが関係を持ったことを知り、翌日には早々にそのことをイアンの母リルに告げ、自分もリルに迫るシーン。そして2度目は映画のほぼ終盤に近くなって今度はイアンがとある現場を目撃して皆の前で爆弾発言するのだが、どちらも簡単にすぐ言えるようなことではないので少々急すぎる展開だ。また、ロズがイアンと初めて男女の関係になった翌日、今度はリルがトムと結ばれ、そのさらに翌日リルとロズが向き合うシーンで「私たち何をしちゃったの?」と言うロズに、リルが「一線を超えてしまったのよ」と答えるのもあっさりしすぎ。そんなに簡単に割り切れるものではないはず。だがそれらを抜きにすると4人ともとても自然だし、年齢差があっても互いに深く愛し合う2組の男女としてすんなり受け入れて観ることができる。

公然と4人でディナーを楽しんだりする2カップル
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 美しい母親2人が互いの息子の親友と恋に落ちるという設定はどことなくフランス映画的で、フォンテーヌ監督の起用に納得。欲を言えば英語作品としてではなく、フランス人俳優によるフランス映画として制作されていればもっと雰囲気が出たのではないだろうかと思える。オーストラリアのカラッとした海景色は美しくはあるが健全すぎて、これがフランスだったら本作のテーマにふさわしい“背徳感”のようなものが出せただろうし、この手の映画はセリフも英語ではなくフランス語の方がアンニュイ感が漂っていいと思うのは、日本人である記者の勝手な思い込みだろうか。

ビーチでくつろぐロズ(ロビン・ライト:左)とリル(ナオミ・ワッツ)
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 ちなみに本作のように原作・監督・主演いずれも女性というオーストラリア映画に、デビュー当時のジュディ・デイヴィスとサム・ニールが共演した「わが青春の輝き」(79)や、グレタ・スカッキとアンソニー・ラパーリアがヒロインの両親役で登場の「アリブランディを探して」(00)、オスカー女優ケイト・ウィンスレット主演の「リベンジャー 復讐のドレス」(15)などもあり、機会があればそちらもぜひご観賞を。

【セリフにおける英語のヒント】ロズ(ロビン・ライト)が、夫ハロルドが自分とリルの仲の良さに疎外感を感じているとリル(ナオミ・ワッツ)に漏らすシーンで、リルが「彼(ハロルド)は私たちがレゾズだと言ってるわけじゃないわよね?(He’s not saying we’re lezzos)」と言うセリフの“lezzos(レゾズ)”はレズビアンのオージー・スラング“lezzo(レゾ)”の複数形。

【映画に登場する実在の大学】ハロルド(ベン・メンデルソーン)が妻ロズ(ロビン・ライト)に「シドニー大学での仕事をオファーされたんだ」と話すシドニー大学(Sydney University)はシドニーにある実在の一流大学。

Story

 ニュー・サウス・ウェールズ州沿岸のとある町。幼いころから親友同士のリル(ナオミ・ワッツ)とロズ(ロビン・ライト)は結婚してそれぞれが一人息子に恵まれた後も、そしてリルの息子がまだ小さい時にリルが若くして夫を亡くしてからもお互い徒歩で行き来できるビーチ沿いの家に住み、家族ぐるみの付き合いが続いている。ロズは夫ハロルド(ベン・メンデルソーン)との夫婦仲もいいが、ハロルドがシドニーでの仕事を得、一家3人でシドニーへ移り住もうというハロルドの提案にロズは動揺、差し当たってハロルドはロズと息子を残し単身シドニーで暮らし始める。リルの息子イアン(ゼイヴィア・サミュエル)とロズの息子トム(ジェイムズ・フレッシュヴィル)はハンサムな青年に成長し、ある夜、ロズ親子の家に泊まったイアンはトムが酔っ払って先に寝た後でロズに言い寄り男女の関係を持ってしまう。その夜、夜中に喉が渇いてキッチンへ行ったトムは、母ロズがイアンが泊まっている部屋から下半身裸でこっそり出てくるのを目撃し…。

映画「美しい絵の崩壊」日本予告編

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