パティシエって人を笑顔にさせられる、夢のある仕事
パティシエ(「シェラトン・オン・ザ・パーク」勤務)
伊藤実佳子さん(33)
Mikako Ito
「地元札幌の高校を卒業してすぐ学生ヴィザで来豪し、ケアンズの語学学校へ通いました。イルカが好きで、オーストラリアの大学に進学して海洋生物学を勉強するつもりでした。なので実はパティシエになるつもりは全然なかったんです(笑)。でもオーストラリアがとても気に入り、当時はシェフやパティシエで永住権が取りやすかったということもあり、お菓子も好きだから、とりあえず第一目標を永住権取得に切り替えブリスベンのTAFEのパティシエ養成コースで学びました」
実佳子さんがスウィーツすべてを担当するシェラトン・オン・ザ・パークのハイ・ティー(手前に見えるナプキンで包まれたスコーンも含まれる)
シドニー・シティの5スター・ホテル「シェラトン・オン・ザ・パーク」ロビー隣にあるティー・ラウンジ「ザ・ギャラリー」でハイ・ティー専門のスー・シェフ・ペイストリーとして働くパティシエの実佳子さん。TAFE卒業と同時にブリスベンの5スター・ホテル「ソフィテル」でパティシエの職を得て1年間の職場経験を積み永住権申請、実際に永住権が取れたのは申請から2~3年後でした。その間も常にパティシエとして働きましたが…。
「ずっと迷ってました。パティシエをやめて、本来やりたかった海洋生物学の研究の道に進んだほうがいいんじゃないかと。ただ、ソフィテルでは尊敬できるフランス人シェフ・ペイストリーの下で働くことができ、彼からとても大きな影響を受けました。そんな時、母の知人の投資家の方が、『この道(パティシエ)でやっていく覚悟があるなら費用を全額出してあげるからフランスでみっちり学んできなさい』と信じられないような幸運なオファーをくれ、前述のフランス人シェフからも『フランスのちゃんとした学校や、いろいろためになる人物を紹介するからぜひ行ったほうがいい』と言われ、決意を固めました」
こうしてフランスへ半年間留学。最初の2カ月はフランス語の語学学校へ、その後リヨンの近くにある有名なパティシエの学校で学び、日本にも進出しているリヨンのショコラティエ「フランソワ・ジメネーズ」でインターンを経験。ですが、すぐにはオーストラリアへ戻りませんでした。日本の現場も知っておきたいと、まずは地元札幌の一流フレンチ・レストラン「ミクニ サッポロ」で働きました。
「それまで日本では一度も社会人経験がなかったんですが、職場が男性ばかりだったおかげか先輩は皆さん優しく、フランスともオーストラリアとも異なる日本の確立されたスウィーツ文化に触れることができてとても勉強になりました」
実佳子さんが手がけるシェラトン・オン・ザ・パークのデザート・ビュッフェ
既にプロとして12年、同じお菓子作りの中でもこれは誰にも負けないというジャンルにおける自信も着いてきました。
「ホールケーキももちろん作れますが、個人的にはプティ・フールやミニャルディーズと呼ばれるハイ・ティー用の小さいサイズのスウィーツが得意です。手先の器用さが求められますので、この分野に関しては特に『日本人の、それも女に生まれてよかったなあ』と思います(笑)」
将来の夢はこれら小さめサイズのスウィーツ専門店を出すこと。
「いろんなちっちゃいお菓子を同時にあれこれ楽しんでもらえるお店が出せればいいなと。パティシエって人を笑顔にさせられる、夢のある仕事だと思います」
The Gallery
●Located at the lobby level at the Sheraton on the Park, 161 Elizabeth St., Sydney ☎ (02)9286-6000 ■ハイ・ティー(月~金)12pm-4pm、デザート・ビュッフェ(土日)12pm-2pmと2:30pm-4:30pmの2交代制 *料金(ハイ・ティー/デザート・ビュッフェ共通):コーヒー、紅茶、またはホット・チョコレート付き1人$59、オーストラリア産スパークリング・ワイン(ドメーヌ・シャンドン)1杯付き$72、フランス産シャンパン(ルイナール)1杯付き$80 sheratonontheparksydney.com/thegallery