イケてるつもりでイケてない母娘のイタリア珍道中「キャス&キムデレラ」

kath_and_kimderella_poster1712.jpgキャス&キムデレラ

Kath & Kimderella

(オーストラリア2012年公開、日本未公開/86分/PG/コメディ)

監督:テッド・エメリー
出演:ジェイン・ターナー/ジーナ・ライリー/マグダ・ズバンスキー/グレン・ロビンス/ピーター・ロウスソーン

 

 2002年から07年まで合計4シリーズ、さらにその間、単発2時間ドラマも全豪オン・エアされた大ヒットTVコメディ「キャス&キム」の劇場映画版で、TV版と同じテッド・エメリー監督の下、こちらも主要キャスト全員TV版と同じオージー俳優たちが扮して2012年に封切られたコメディ・ドラマ。ともにタイトル・ロールであるキャス役のジェイン・ターナーとキャスの娘キム役のジーナ・ライリー、そしてキムの“2番目の親友”シャロン役で日米でも大ヒットしたオージー映画「ベイブ」シリーズの農場主ホゲット夫人役が有名なマグダ・ズバンスキーという3人の人気オージー女性コメディアンが脚本を手がけた。劇場映画版ということでTVシリーズ製作時より豪華予算が組まれたのだろう、初の海外ロケを敢行、舞台となるイタリア半島にある架空の王国パピロマのシーンは実際にイタリア・カンパニア州ポジターノで撮影された。

映画版の主要キャラクターたちが一堂に並んでの宣材写真
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 自分で自分のことを“イケている”と思い込んでいる2人の女性が主人公という共通した設定から、「キャス&キム」は英国のTVコメディ・シリーズ「アブソリュートリー・ファビュラス」(やはりその後劇場映画化された)とよく比較されるが、通称「アブファブ」のヒロインが2人とも一応ロンドンの華やかな芸能/ファッション業界人なのに対し、キャスとキムはメルボルン郊外のごく普通の住宅街に住む専業主婦親子という点がまず笑える。キムは20代またはせいぜい30代前半という設定だが、TV版の1シリーズ目がオン・エアされた2002年の時点でライリーは既に41歳だったから、そのあたりも笑いのツボ。本作でキャスとキムとシャロンの3人がイタリアの田舎町を闊歩するシーンは全米の人気ドラマ「セックス&ザ・シティ」の女性メイン・キャラ4人が並んでNYを颯爽と歩くシーンを意識しているが、3人とも全然イケてないのだ。自称ブランドに詳しいはずのキャス&キムは、ドナテラ・ヴェルサーチの名前をナテラ(日本でも有名なチョコレート風味のペイスト「ヌテラ」のオージー英語読み)、フェンディをオフェンディ(「人の気分を害する」という意味の「offend」に引っかけたと思われる)、ポロもポリオ(日本でもポリオとして知られる病名)と勘違いしている始末。

「セックス&ザ・シティ」の4人よろしくパピロマの町を颯爽と闊歩するもののなぜかイケてない3人(左からシャロン役のマグダ・ズバンスキー、キム役のジーナ・ライリー、キャス役のジェイン・ターナー)
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 TV版の毎回のエピソードに必ず出てきたお決まりのシーンに、母キャスがむくれる娘キムに対し、親が小さい子供を叱るように「(顔をそらさず)ちゃんとこっちを見なさい」と言うセリフがあり、映画版でも登場するが、キャスが言うと「Look at me」が「ルック・アット・ムイ~ッ」と誇張されていて、こちらも何度見ても笑えるシーンだ。

パピロマ国王(ロブ・スティッチ:右端)主催の舞踏会で母キャス(ジェイン・ターナー:中央)が見守る中、キム(ジーナ・ライリー:左)は王子(エリン・マラリー)に求婚され…
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 TV版を観ていない人のために補足しておくと、ターナーとライリーは本作でキャス&キム役のほか、同親子が住む町のショッピング・センターでギフト・ショップを共同経営する白髪のプルーとトゥルード役でそれぞれ一人二役をこなしており、キャス&キムとは全く異なるキャラクター設定のプルー&トゥルードにも注目。

キャス&キム役と同じ女優が一人二役で扮したトゥルード(ジーナ・ライリー:左)とプルー(ジェイン・ターナー)のキャラにも注目
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 パピロマ国王と王子役はどちらもオージー男優が扮したが、国王の従者アラーン役には英国の性格俳優リチャード・E・グラントをゲストに迎え、ほかにもデイム・エドナという奇抜な女装キャラが世界的に名高いオージー男優バリー・ハンフリーズがデイム・エドナ(本人)役で、そしてオーストラリアのイケメン・ファッション・デザイナー、アレックス・ペリーもカメオ出演している。ちなみにTV版にはカイリー・ミノーグやエリック・バナ、レイチェル・グリフィス(「ケリー・ザ・ギャング」「ミュリエルの結婚」)などそうそうたる顔ぶれの豪華オージー・スターたちがゲスト出演していて、機会があればぜひそちらも観てみることをおすすめ。

英国人俳優リチャード・E・グラント(左端)もゲスト出演
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 笑えるだけでなく、財政破綻寸前のパピロマ王国の豪華な城の外では人々が飢えに苦しんでいる姿が描かれていたり、また、パピロマでは同性愛が法律で禁止されているという設定を絡ませているのはいかにもゲイ人口が多いオージー映画ならではで、本作の脚本を手がけた一人シャロン役のマグダ・ズバンスキーが、この映画が封切られたのと同じ2012年に同性愛者であることをカミング・アウトした。

【セリフにおける英語のヒント(その1)オープニング・シーンでキャス(ジェイン・ターナー)が自分自身のことを紹介するモノローグに「彼女(キャス)はテイフのディプロマを18(種類)取得していて」と言い、実際に部屋の壁にズラリと修了証書がかけられている「テイフ」とは、オーストラリア各州・地域に展開する国内最大の専門学校・高等職業訓練学校の頭文字「TAFE」の英語読みで、全国的にこの略称で一般にも知られている。

【セリフにおける英語のヒント(その2)キャス(ジェイン・ターナー)の夫ケル(グレン・ロビンス)が映画の中で欠かさず観ているTV番組は、日本でも「マスターシェフ 天才料理人バトル!」というタイトルで海外版が放映された実在の料理番組「マスターシェフ(MasterChef)」のオーストラリア版のこと。

Story

 メルボルン郊外に住むキャス(ジェイン・ターナー)がイタリア半島にあるスペイン系の王国パピロマへの懸賞旅行に当選し、飛行機恐怖症の夫ケルを家に残し、離婚したばかりの出戻り娘キム(ジーナ・ライリー)とキムの“2番目の親友”シャロン(マグダ・ズバンスキー)とともに旅に出る。現地で国王ハーヴィエの住む城の見学に出かけた3人は王自らに歓迎され、特に王はキャスが気に入った様子で3人に城に滞在するようすすめる。そんな3人を物陰からこっそり見つめる王子フリオはなぜか仮面で顔を隠しており、王子は見るからにふてぶてしい態度のキムにこちらもなぜか一目惚れし…。

「キャス&キムデレラ」予告編