研ぎすまされ凛とした能楽の世界へ誘われ…(9/14まで)

特別展「夢の舞台、雅(あそび)の舞台~日本の能と狂言」

読者プレゼント!(ペア3組)
ペア入場チケット($20相当)
※詳細は「月刊ジャパラリア」2014年7月号P25に掲載!

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 現存する日本最古の伝統芸能であると同時に重要無形文化財、ユネスコ無形文化遺産にも登録されている能楽(能と狂言を含んだ総称)をテーマに、日本の文化庁、日本文化振興会(国立能楽堂)の協力の下、歴史ある能面や華麗なる舞台衣装・同背景画、楽器、台本など165点の関連品を一堂に集めた特別展「夢の舞台、雅の舞台~日本の能と狂言」が9月14日まで、NSW州立美術館で絶賛開催中です。

1407-1能面「喝食(かっしき)/小喝食(こかっしき)」(桃山時代/16世紀作、文化庁蔵)

 

 21世紀の現在では日本人であっても果たして何パーセントの人が生の歌舞伎公演を観たことがあるかというと、残念ながらそれほどでもないのではないでしょうか。能楽となると、その数はさらに減ると思われます。

1407-2狂言面「乙(おと)」(江戸時代/18世紀作、国立能楽堂蔵)

 

男女役どちらも役者たちの派手なメイクに衣装や、やはり見栄を切ったりという大きな立ち回りが見られる“動”の印象が強い歌舞伎と比べて、能楽(特に能)はより“静”の部分の印象が色濃く、また、能面と呼ばれる仮面を付けることが多いため、つまり役者の顔が観客には分からないことから歌舞伎のような“スター”が生まれにくいこともあり、確かに歌舞伎と比べると地味にとらえられがちかもしれません。1407-4

しだれ桜と尾長鶏を折り込んだ絢爛豪華な女性役の舞台衣装「唐織(からおり)」(江戸時代/18世紀作、国立能楽堂蔵)

 

 しかしながら、もともとの歴史は能楽のほうがはるかに古く、平安時代にさかのぼります。当初は“猿楽”と呼ばれ宮中の式典などで演じられており、京の都を中心に近畿地方一体へと広まりました。戦国時代に国内の動乱によりいったんは衰退の兆しを見せるものの、徳川将軍家の庇護によって息を吹き返しました。ただ、猿楽の持つ芸術性や格式を重んじたためか一般庶民向けに演じられることはなく、娯楽に飢えた庶民たちのため江戸時代に登場したのが町人文化のひとつと呼ばれる歌舞伎だといわれています。やはり明治維新によって徳川幕府お抱えだった猿楽役者たちは無職となり、ここで再度存続の危機に瀕しましたが、明治政府要人や華族たちの資金援助により無事、現在まで継承される日本の伝統文化として残ることができました。歌舞伎は花道がある以外は前方に舞台があるいわゆる西洋式とほぼ同じですが、能楽はせり出した正方形の舞台を客席が囲む相撲の土俵に近いという違いもあります(相撲と違って後方を除く正面と左右)。

1407-3能面「赤般若」(江戸時代/18~19世紀作、国立能楽堂蔵)

 

 能楽を観たことがない人はもちろん、観たことがある人にとっても、日本古来の伝統芸能の関連品を間近に、それもオーストラリアで観賞できる貴重な機会です。物言わぬ能面の数々は、それでも研ぎすまされ凛とした能楽の世界へと誘ってくれるでしょう。

【日本語ガイド・ツアー開催!】●開催曜日:期間中の毎週水・土(7月30日を除く)●時間:11am ●参加方法:展覧会チケットを購入の上、同展会場入口に集合(予約不要)

Theatre of Dreams, Theatre of Play: Nō and Kyōgen in Japan – info

●会場:NSW州立美術館(Art Gallery of New South Wales, Art Gallery Rd., The Domain)●期間:9月14日まで絶賛開催中 ●開館時間:10am-5pm(水曜は10pmまで/7月28日、29日、30日の3日間は展示作品入れ替えのため閉館だがそれ以外は週7日無休で開館 ●料金:大人$10、コンセッション$8、ファミリー(大人2人、子供3人まで)$28、5歳未満無料 ☎ 1800-679-278 www.artgallery.nsw.gov.au