不協和音が完璧なハーモニーを織りなす時…(映画「ハーモニー」)

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※2023年1月18日更新

ハーモニー

Cosi

(オーストラリア1996年、日本1997年公開/100分/M15+/コメディ・ドラマ/DVDNetflixApple TVAmazonプライムYouTubeムービーで観賞可能なほかSBSの公式配信サイトSBSオンディマンドで無料配信!sbs.com.au/ondemand/movie/cosi/2143689283620

監督:マーク・ジョフィ
出演:ベン・メンデルソーン/トニ・コレット/レイチェル・グリフィス/ジャッキー・ウィーヴァー/デイヴィッド・ウェナム

(※以下、文中の紫色の太字タイトルをクリックすると該当作品の本コーナーでの紹介記事へとジャンプします)

 精神科病院の入院患者たちに“演劇療法”としてモーツァルトのオペラ「コジ・ファン・トゥッテ」を演じさせるという無謀な試みを描いた、笑いたっぷりの人情ドラマ映画。オージー作家ルイ・ナウラ執筆の舞台劇の映画化で、映画版の脚本もナウラが手がけた。ナウラ自身、本作の主人公のようにかつてメルボルンの精神科病院で入院患者たちによる公演をプロデュースした経験があるといい、そこからヒントを得て本作を書き上げたという。映画より圧倒的にTV畑での活躍が目立つマーク・ジョフィ監督(「ハウス・オブ・ボンド」「ドリッピング・イン・チョコレート」「ワイルド・ボーイズ」)の数少ない劇場映画として全編シドニーで撮影され、同年度オーストラリア・アカデミー(AFI)賞(現AACTA賞)で脚色賞を受賞したほか、助演男優賞(バリー・オットー)と編集賞にもノミネイトされた。

入院患者たちによる芝居の公演の演出家として雇われたルイス(ベン・メンデルソーン)
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 主要登場人物には精神科病院での公演の演出家として雇われる主人公の青年ルイス役にベン・メンデルソーン(「美しい絵の崩壊」「アニマル・キングダム」「オーストラリア」「シークレット・メンズ・ビジネス」)、ルイスの同棲中の彼女で法学部の現役大学生ルーシー役にレイチェル・グリフィス(「ケリー・ザ・ギャング」「ミュリエルの結婚」)、ルイスの友人で売れない舞台演出家兼俳優ニック役にエイデン・ヤング(「ザ・プリンシパル」「イースト・ウエスト101 ③」)、そしてトニ・コレット(「ミュリエルの結婚」)、ジャッキー・ウィーヴァー(「ペンギンが教えてくれたこと」「アニマル・キングダム」「ピクニックatハンギングロック」)、デイヴィッド・ウェナム(「LION/ライオン 〜25年目のただいま〜」「ドリッピング・イン・チョコレート」「オーストラリア」「ムーラン・ルージュ」)、ミランダ・オットーの実父バリー・オットー(「リベンジャー 復讐のドレス」「華麗なるギャツビー」「オーストラリア」「ダンシング・ヒーロー」)の4人が演じる精神科病院の入院患者役に加え、病院の主任看護師役にはオスカー候補女優ジュディ・デイヴィスの夫コリン・フリールズ(「ワイルド・ボーイズ」「台風の目」)、と全員が本作の前または後にハリウッド進出も果たしているオージー・オール・スター俳優を起用(エイデン・ヤングはカナダとオーストラリアのハーフ)、グリフィス、コレット、ウィーヴァーの3人に至ってはいずれも本作の後とはいえ米オスカーにもノミネイトされたほど(3人とも助演女優賞枠で候補に)。やはり世界的な人気を集めたオージー・ロック・バンド、メン・アット・ワークのリード・ヴォーカリストで俳優としても活躍しているコリン・ヘイも入院患者役で出演している。

ルイスは薬物依存症で精神科病院に入院中のジュリー(トニ・コレット)が気にかかるようになり…
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ヴェテラン女優ジャッキー・ウィーヴァーも強烈なキャラクターの入院患者チェリー役を好演
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ルイスと同棲中の彼女ルーシー(レイチェル・グリフィス)
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 上記以外でも、鬱病で入院中のルース役に別のオージー映画「女と女と井戸の中(The Well)」(97)の主演や日本でもオンエアされた2013年から続くオーストラリアの連続ドラマ「ウェントワース女子刑務所(Wentworth)」シーズン2〜5とシーズン8に主要キャラのひとりとして登場する受刑者ジョーン・ファーガソン役が有名なパメラ・レイブ、精神科病院の院長役に不朽の名作オーストラリア映画「ピクニックatハンギングロック」(75)で本作にも出演のジャッキー・ウィーヴァー扮した女学院の住み込みメイドの恋人役を演じ同年度豪アカデミー助演男優賞候補となったトニー・ルウェリン・ジョーンズ、同病院の主任作業療法士役に名脇役女優ケリー・ウォーカー(「ホールディング・ザ・マン—君を胸に抱いて—」「オーストラリア」「ムーラン・ルージュ」「アリブランディを探して」「ベイブ」)、看護師役でダン・ワイリー(「アニマル・キングダム」「バッドコップバッドコップ」「ミュリエルの結婚」「ハーケンクロイツ/ネオナチの刻印」)が起用されている。また、こちらはカメオ出演といってもいいようなチョイ役だが、病院内での公演に当たってオーディションを受けるそのほかの入院患者役に、若かりしころはハリウッド映画界で売れっ子美人女優のひとりだった時期もあるグレタ・スカッキ(「パーム・ビーチ」「アリブランディを探して」)と、日本でもヒットした社交ダンス映画「ダンシング・ヒーロー」(92)の主人公を演じたポール・マーキュリオが顔を出している点にも注目。ちなみにオーディションのシーンではルースがポインター・シスターズの80年代前半の大ヒット「ソー・エキサイテッド(I’m So Excited)」を歌うが、ルースは鬱病のため♪私はとてもエキサイトしているわ♪という歌詞が棒読み状態の歌い方で表情も少しもエキサイトしていなさそうなのも笑いのツボ。

プロ並みの美声で歌も披露するトニ・コレット
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 上記全員、それぞれがとても個性的かついい味を出していて、ベン・メンデルソーンの母性本能をくすぐる美青年ぶりを筆頭に、トニ・コレットのロンパリ気味の目が薬物依存症患者の役としてバッチリだったり、デイヴィッド・ウェナムが最高にイッちゃってる放火癖を持つ患者役をカメレオンのような演技力で見せたり、最初はメンデルソーン演じるルイスに対して上から目線のイヤ〜なヤツにしか見えなかったコリン・フリールズ扮する主任看護師エロールが実はいいヤツだったり、そしてもちろん大御所ジャッキー・ウィーヴァーとバリー・オットーの存在感は言うに及ばず、とにもかくにも全俳優陣の魅力がスクリーンから溢れんばかりに観る者に伝わる。マーク・ジョフィ監督の手腕もあるだろう、男女問わず俳優を魅力的に見せることができる監督である。トニ・コレットに関しては、いつでも本格的なミュージカル映画に出演できそうなプロ並みの美声を、名曲「スタンド・バイ・ミー」のア・カペラなど何曲かで披露しており、エンド・クレジットとともに流されるナンバーでオージー・ロック・バンド、クラウデッド・ハウスの大ヒット「ドント・ドリーム・イッツ・オーヴァー」のカヴァーも彼女が歌っている。

 女性の高潔さを問うモーツァルトの「コジ・ファン・トゥッテ」のストーリーも本作の伏線となっており、人情モノに弱い日本人ならまさしくドンピシャのツボにはまれる作品だ。さまざまな精神疾患を患う患者たちがひとつの舞台を創り上げていく様は当初、てんでバラバラの見えるに耐えない不協和音のようだが、その不協和音がいつしか完璧なハーモニーを織りなしていく過程にジーンとくるものがある。

【セリフにおける英語のヒント(その1)演出家として雇われたルイス(ベン・メンデルソーン)が初めて入院患者のひとりロイ(バリー・オットー)に会った際に名前を聞かれルイスだと答えると「ルイスか、では君と私はジェリー・ルイスとディーン・マーティンのコンビみたいなものだな」と言ったのは、1940年代から50年代に人気を博し、何本もの主演映画まで製作・公開されたアメリカの2人組コメディ・チームで日本でも“底抜けコンビ”として広く知られたディーン・マーティン(1917〜1995)&ジェリー・ルイス(1926〜2017)のこと。ちなみにジェリー・ルイスは日本では英語教材「家出のドリッピー」の主人公ドリッピーの声も担当。

【セリフにおける英語のヒント(その2)一度は公演が中止になったものの、病院関係者らに内緒で練習を続けていた際、舞台衣装の奇抜な被り物を頭に着けていたジュリー(トニ・コレット)が主任作業療法士サンドラ(ケリー・ウォーカー)に見つかり「何をしているの?」と聞かれ、とっさに「カルメン・ミランダです」と答えるとサンドラが「なるほど」といった笑みを浮かべるのは、ポルトガル生まれのブラジル人サンバ歌手・ダンサー・女優として1940年代から50年代にかけてアメリカでも一世を風靡したカルメン・ミランダ(1909〜1955)のことで、カルメン・ミランダは奇抜な帽子姿でも有名だった。

STORY
 大学を中退してなかなか職にもありつけないルイス(ベン・メンデルソーン)がやっと見つけた仕事は精神科病院が入院患者たちに演劇療法として行う素人芝居公演の演出だった。入院患者たちとモーツァルトのオペラ「コジ・ファン・トゥッテ」を英語劇にアレンジして上演することになったルイスは、まとまりのない出演者たちに閉口しつつも辛抱強くリハーサルを重ねるうち、薬物依存症で入院中の出演者のひとりジュリー(トニ・コレット)が次第に気にかかるようになる。一方、ルイスの友人でガールフレンドに家を追い出された友人ニック(エイデン・ヤング)がルイスとその彼女ルーシー(レイチェル・グリフィス)が同棲中の家に転がり込んできて、ニックとルーシーは怪しい関係になりつつあるような…?

※映画ハーモニーはSBSの公式配信サイトSBSオンディマンドで無料配信!→
sbs.com.au/ondemand/movie/cosi/2143689283620

「ハーモニー」の予告編はあいにく見つからなかったが以下、配給会社による公式抜粋シーン

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