「輝く女性たち」:寿司シェフ/似顔絵画家/学生の山田志保さん

新たに何かを始める時に最初の第一歩を
踏み出したら半分達成したようなもの

寿司シェフ/似顔絵画家/学生
山田志保さん(34歳)
Shiho Yamada

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「高校時代にソフトボール部に所属し、地元北海道のソフトボールの強豪である浅井学園大学(現・北翔大学)に進学しました。将来は体育の教師を目指し体育科で学んでいましたが、家の経済的事情により1年で中退せざるを得ず、学生時代からアルバイトをしていた札幌のお寿司屋さんにお願いしてバイトのシフトを増やしてもらいました」

 シドニーのTAFEでデザインを学ぶ学生業のかたわら、シティの一流日本食レストラン松緑の寿司カウンターで寿司を握るシェフとしても働き、注文を受けて似顔絵を描く仕事もしている志保さん。ちなみに現在ジャパラリアの誌面デザインもインターンとして手伝ってくれている。女性の寿司シェフというのは今でも珍しい存在だが、一流店となるとなおさらだ。札幌の寿司店での経験が生かされているわけだが、志保さんが寿司シェフになれたのは決して運が良かったからではない。

「大学を中退して数カ月後にはその店で正社員になれ、せっかくお寿司屋さんで働くからにはいずれは寿司カウンターで寿司を握りたいと思い店長にかけ合いましたが、やはり女性であることから難色を示されました。だったらまずはやる気を行動で示そうと、キッチン・ハンドの私は朝9時に出勤すればいいところを6時とか7時に店に行き、寿司シェフに頭を下げて教えてもらうことにしました。もちろんその時間帯は無給です(笑)。最初は魚の洗い方などから始まり、最終的には寿司の握り方を教えてもらい、1年ほどそんな生活を続けていたある日、店長から『握り(寿司カウンター)に行っていいよ』と言われ。努力が認められたんだと本当に嬉しかったです」

シドニー在住カップルからの注文を受けて志保さんが描いた似顔絵
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 札幌で寿司を握るようになって3〜4年経ったころ、知り合いの女性の「あなた女性でお寿司やってるんだったら絶対海外に行った方がいい。きっと自分の価値が分かるわよ」という言葉が以前から海外に憧れていた志保さんの背中を押し、2012年に退職してワーキング・ホリデイで来豪。手に職があったことからバイトには困らず、ザ・ロックスのサケやサリー・ヒルズのトコといったお洒落な日本食レストランで働いた。こちらもプロのシェフであるインドネシア出身の夫と出会ったのも職場で2015年に結婚、2019年に長女を出産。“夫も妻もシェフ家庭”としてそのまま時が流れるのかと思いきや…?

「私は小さいころから絵を描くのも大好きで、大学で体育科だったりお寿司を握ったりしながらも、デザインやアートの道へも進みたいという夢がずっとくすぶっていました。思いきって夫に話したところ、無条件で応援してくれて、娘が2歳になった2021年にTAFEに入学しました」

image4りんごを食べている当時2歳の一人娘を描いた色鉛筆画

 今年6〜7月の卒業を前に、学校の課題に仕事にと忙しい毎日を送っているが、夫の精神的かつ育児や家事におけるサポートに感謝しながら充実していると満面の笑みで語る。将来は絵本の制作・出版に携わるのが目下の夢だ。

「14歳のころ進路を考えた際に一番進みたかったのは体育系ではなく美大だったんですが、私立の美大は学費が高く最初から無理だと諦めていました。14歳だった当時の私がずっと自分の中にいて、今34歳の私が彼女の夢を叶えてあげているという心境です。寿司シェフの仕事も楽しんでやっていますが、昔からやりたいことが多すぎる性分なようで(笑)。新たに何かを始める時に最初の第一歩を踏み出したら、それはもう半分達成したようなものだと友人が言ってくれた言葉が印象に残っています。そうだ、やらないで後悔するより、やって後悔しよう! 本当にそう思います」

似顔絵の問い合わせ注文は志保さんのインスタグラムから受付instagram.com/s_shihop

●似顔絵料金(※いずれも1人の場合でカップルや家族など1枚の絵の中に1人増えるごとに追加$50):デジタル画(カラー)$70、ペンシル画/ペン画(白黒)$100、水彩画$160

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