オーストラリア・デイに観たい大作映画「オーストラリア」

australia_poster1801.jpgオーストラリア

Australia

(オーストラリア2008年、日本2009年公開/165分/M/ロマンス)

監督:バズ・ラーマン
出演:ニコール・キッドマン/ヒュー・ジャックマン/デイヴィッド・ウェナム/ブライアン・ブラウン/ベン・メンデルソーン

 

「ロミオ+ジュリエット」(92)、「ムーラン・ルージュ」(01)、「華麗なるギャツビー(The Great Gatsby)」(13)のオージー監督バズ・ラーマンが、「ムーラン・ルージュ」で組んだオージー・オスカー女優ニコール・キッドマン(「LION/ライオン 〜25年目のただいま」「虹蛇と眠る女」)を再度ヒロインに、その相手役にこちらも「X-メン」シリーズのオージー・ハリウッド・スター、ヒュー・ジャックマン(「ペイパーバック・ヒーロー」)を起用し、1億3,000万ドルという巨費を投じて全編オーストラリアで撮影した米豪合作の大作映画。興行収入も2億ドルを突破する大ヒットとなり、ラーマン監督夫人で夫が監督したすべての映画の美術監督を務めているキャサリン・マーティンが本作でも美術監督と衣装デザインを担当、同年度オーストラリア・アカデミー(AFI)賞(現AACTA賞)では助演男優(ブランドン・ウォルターズ)、音響、音楽賞など6部門で候補となり、美術、衣装デザイン、視覚効果賞の3部門受賞に輝いたほか、米アカデミー賞でも受賞を逸したがマーティンが本作からの唯一のノミネイションを受けた(衣装デザイン賞部門)。ちなみにマーティンは「ムーラン・ルージュ」と「華麗なるギャツビー」で2度オスカー受賞、本作と「ロミオ+ジュリエット」を含めるとこれまでに合計4回オスカーにノミネイトされている(いずれも衣装デザイン部門)。

ニコール・キッドマンとヒュー・ジャックマンが初共演
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サラー(ニコール・キッドマン)が実の子のように可愛がるナラ役のブランドン・ウォルターズが本作の出演者の中で唯一オーストラリア・アカデミー助演男優賞候補になった
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 2時間半以上という長編で、正直、脚本にあれこれテーマを盛り込みすぎたという感想は否めない。メインはニコール・キッドマンとヒュー・ジャックマン演じる男女のロマンスということになるが、アクション、アドヴェンチャー、ファンタジー、戦争、人種差別に男女差別…とてんこ盛りのテーマが絡む。映画は第二次世界大戦勃発と同じ1939年に始まり、だが前半はまだ特に戦争の影響を受けない北部準州ダーウィンでストーリーが展開するが、クライマックスとなる旧日本軍によるダーウィン襲撃シーンは、日本軍がダーウィンに上陸するという史実に反する描写をし(歴史上、日本軍は空爆はしたがオーストラリア大陸に上陸はしていない)、日本人観客の反感を買ったことはいうまでもないが、そもそも襲撃シーン自体、果たして必要だったのか、前半のテーマだけで映画を感動的に終えることもできたのではなかっただろうかと思えるのは事実。要するに全体的にやや散漫とした印象を与えてしまっている。昔の大作映画、例えば「風と共に去りぬ(Gone with the Wind)」(39)などは劇場公開時に幕間(休憩時間)があったことから映画自体が幕間を踏まえ物語も前編と後編にはっきり分かれていて、そういった古き佳き時代のハリウッド映画を意識したとも受け取れるが、現代の一般観客に果たしてどこまでラーマン監督のそんな思いが通じたかは疑問である。

ニコール・キッドマンとヒュー・ジャックマンのロマンティックなラヴ・シーンもあり
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 だが、それを補う魅力に溢れているのもこれまた事実で、2時間半があっという間に過ぎる。主演のキッドマンとジャックマンはもちろん文句なしの演技力で、特に“牛追い”を意味するドローヴァー役のジャックマンの“いい男ぶり”は本作で女性ファンがさらに増えたのもうなずけるほど。当初ドローヴァー役にはラッセル・クロウで話が進んでおり、クロウでもおそらくそれなりにいい映画になっていたはずだが、キッドマン相手に燃えるような恋に落ちる役柄としては、ファンには失礼ながらクロウでは少々“くたびれた感”があったかもしれず、やはりジャックマンで正解だったといえるだろう。

女性ファンのハートをガッチリ掴んだヒュー・ジャックマン
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 英国貴族という役柄のキッドマンはオスカー女優の余裕の演技だけでなく、本作でオーストラリア・アカデミー衣装デザイン賞を受賞したキャサリン・マーティンが手がけた美しい衣装の数々をいつもながら完璧に着こなし、一方でシーンによってはラフな格好もごく自然で目でも十分楽しませてくれる。

豪アカデミー衣装デザイン賞受賞、米オスカーでも同賞にノミネイトされた華やかなファッションも見どころ
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 さらに、「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズや「300〈スリーハンドレッド〉」シリーズのデイヴィッド・ウェナム(「LION/ライオン 〜25年目のただいま」)を筆頭に、「F/X引き裂かれたトリック」(86)のブライアン・ブラウン、「スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃(Star Wars: Episode II Attack of the Clones)」(02)のクリーグ・ラーズ役のジャック・トンプソン、名優バリー・オットー(ミランダ・オットーの実父)、日米でもヒットした「プリシラ」(94)や「ミュリエルの結婚」(94)にも主要キャラの一人として出演していた故ビル・ハンターたち大御所、ほかにも「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男(Darkest Hour)」(17)で英国王ジョージ6世に扮したベン・メンデルソーンや、ハンサムだった若かりしころ名作オーストラリア映画「ピクニックatハンギング・ロック」(75)で使用人アルバート役を演じたジョン・ジャラットといったいずれも実力派のオージー男優が脇を固めている。そして、オーストラリア映画界のみならず、世界的にも最も有名なアボリジニ俳優と言い切っても過言ではないデイヴィッド・ガルピリル(「少年と海」)も重要な役どころで登場。また、「ムーラン・ルージュ」(01)でアルゼンチン・タンゴをバシッと踊るシーンが印象的なジャセック・コーマンは、ラーマン監督作品の常連でもあり、本作では前半のパブのシーンのバーテン役で「ムーラン・ルージュ」の時とは全く違った表情を見せる。

イヤ〜な悪役で登場のデイヴィッド・ウェナム
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 一方、男優と比較してニコール・キッドマン以外の女優陣には大した見せ場はないものの、サンディ・ゴアとケリー・ウォーカー(「ホールディング・ザ・マン ー君を胸に抱いてー」「アリブランディを探して」)という大御所女優に、「マトリックス リローデッド」(03)のマギー役や「真珠の耳飾りの少女(Girl with a Pearl Earring)」(03)のフェルメール夫人役のエシー・デイヴィスといったいずれも演技派オージー女優たちが作品に深みを持たせている。

左からサンディ・ゴア、ケリー・ウォーカー、エシー・デイヴィス
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 広大な大自然の描写も素晴らしく、歴史、ロマンス、人種差別や男女差別に人類愛、そして戦争といった多岐にわたるテーマの数々は、散漫ではあってもさまざまな層の観客にアプローチできる本作の魅力のひとつでもある。史実をねじ曲げて日本人を描いたシーンに日本人として言いたいことはあっても、1月26日の建国記念日オーストラリア・デイに観たいそのものズバリの大作映画であることは間違いない。

 実は記者は本作の(実際の撮影ではないが撮影が終わった後の編集段階で)日本兵の声の吹き替えで参加させてもらい、シドニーのレコーディング・スタジオでその他数人の日本人とともに音声収録を体験した。残念ながらラーマン監督はその場には立ち会っておらず、また、完成した映画を観てもお恥ずかしながら自分でもどの声が自分のものか分からないほどの、要するに「効果音」的な使われ方だったが(苦笑)、とてもいい経験になったことは間違いない。

【セリフにおける英語のヒントその1パブの入り口に立つアボリジニの男性に、パブの中から店員が「原住民は入店禁止だ!(No boongs in here!)」と叫ぶシーンがある。”ブーングス(boongs)”はオーストラリア先住民であるアボリジニを指しての俗語”原住民”の複数形で(単数形はboong)、当時はパブに入店できないなどさまざまな社会的人種差別を受けていた。

【セリフにおける英語のヒントその2パブでケンカを吹っかけられたドローヴァー(ヒュー・ジャックマン)がクールに言い放つ「クライキー(Crikey)」という言葉は、英国でも使われるがオージー英語としても一般的な驚きの感情を表す俗語で、この場合、ドローヴァーは呟くように言ったので「驚きだぜ」といったところだが、大声で言うと「うわあ!」とか「びっくり!」といった表現になる。

【セリフにおける英語のヒントその3パブに入ったサラー(ニコール・キッドマン)が店員に「女は入っちゃダメだ。女性用のラウンジは隣の部屋だよ(No women. Ladies’ lounge next door)」と言われる。このように当時オーストラリアのパブでは男女別々の部屋で飲まなければならなかった。

Story

 第二次世界大戦勃発数カ月前の1939年、英国貴族アシュレイ卿夫人サラー(ニコール・キッドマン)は、アシュレイ家の所有地であるオーストラリア北部準州の牧場に行ったまま1年もロンドンに戻らない夫に合流するため渡豪する。ダーウィンに到着したサラーは、夫が事前に手配していた牛追いでその名も“ドローヴァー(牛追い)”(ヒュー・ジャックマン)の案内により所有地への旅に出るが、サラーがオーストラリアに到着する前に夫は何者かに殺害されており…。

「オーストラリア」日本版予告編

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