マリー・アントワネットが愛したハープの音色…

オーストラリアン・ブランデンブルク・オーケストラ
定期演奏会「モーツァルトのジュピター」開催(9/3~12)

ABO1409-1ヴィクトリア芸術学院(メルボルン大学)を出た後、英仏の名門コンセルヴァトワール(パリ)、王立音楽院(ロンドン)で学んだハープ奏者マーシャル・マグワイア

 

 バロック音楽専門の室内楽団オーストラリアン・ブランデンブルク・オーケストラ(ABO)が定期演奏会「モーツァルトのジュピター」を9月3日(水)から12日(金)まで、シティのシティ・リサイタル・ホール・エンジェル・プレイスで開催します。

 コンサート・タイトルにある通り、モーツァルト最後の交響曲として名高い「交響曲第41番ハ長調ジュピターK551」を筆頭に、オペラ「ルーチョ・シッラ」より序曲、「フルートとハープのための協奏曲K299」といういずれもモーツァルト3作品が演奏されます。

abo1409-2ヴェルサイユ宮殿の王妃の寝殿でハープを演奏するマリー・アントワネット(1776年作/ゴーティエ・ダゴティ画/ヴェルサイユ宮殿美術館蔵)。自身の寝室で、しかもゆったりとしたガウン姿でくつろぐ王妃を描いた作品はほかにはなく非情に貴重な一枚

 

 今回のコンサートの話題のひとつは、現代で一般的なダブル・アクション・ペダル・ハープではなく1791年当時のシングル・アクション・タイプを復元した極めて珍しいハープが使用されること。上部が華麗な流線形でそれ自体が芸術品のようなハープは、特に18世紀後半のフランス王妃マリー・アントワネットが愛した楽器として知られます。今回用いられるのは、マリー・アントワネットが自分用に注文したハープ職人のハープを復元したもの。結婚前のオーストリア大公女時代の音楽教師が大作曲家グルックだったという恵まれた音楽環境で育ったマリー・アントワネットは、素人のたしなみとしては当時でも非情に珍しかったハープを巧みに弾きこなしたことから(右に掲載の、ハープを演奏する王妃の肖像画も残されています)、ハープは18世紀ヨーロッパ王侯貴族の間で“習い事”のひとつとしてもてはやされました。

 モーツァルトもマリー・アントワネットも6歳だった時(マリー・アントワネットは7歳というのが定説ですが、実際には誕生日を迎える数十日前でまだ同じ6歳でした)、モーツァルトがウィーンのシェーブルン宮殿に招かれ御前演奏した際に、磨かれた宮殿の床に滑って転んだモーツァルトをマリー・アントワネットがとっさに駆け寄って助け起こし、その優しさにモーツァルトが「大きくなったら僕のお嫁さんにしてあげる」と言ったのは歴史に残る有名なエピソードです。

 そんな二人でしたが、なぜかその後二度と会うことはなく、マリー・アントワネットはフランスへ嫁いだ後、恩師であるグルックをウィーンからパリに呼び寄せ絶大な庇護を与えたにもかかわらず、モーツァルトが成人後パリを訪れた際には子供時代に言葉を交わしたモーツァルトをヴェルサイユ宮殿へ招くことさえしませんでした。同じオーストリア出身の、しかも当時既に有名人だったモーツァルトを、なぜ自身も音楽愛好家だったマリー・アントワネットが全く相手にしなかったのかはクラシック音楽史の謎とも呼ばれます。モーツァルトはパリ滞在中、フルートの名奏者だったドゥ・ギーヌ伯爵から「(ハープが得意な伯爵の娘と)一緒に演奏できる曲を」と依頼を受けて「フルートとハープのための協奏曲」を作曲しましたが、ドゥ・ギーヌ伯爵はマリー・アントワネットのお気に入りの廷臣のひとりでもあったので、ハープ好きの王妃の気を引きそうなその曲とドゥ・ギーヌ伯爵を通してモーツァルトがマリー・アントワネットに接近できる可能性は大いにあったことになります。モーツァルトがパリに滞在したのは1778年の4月から9月までで、マリー・アントワネットは第1子出産を同じ年の12月に経験しています。長らく待ち望まれていた世継ぎの王太子誕生をフランス中が見守っていた中、身重だった彼女はモーツァルトどころではなかったのかもしれません(この時産まれたのは王女で、王太子は3年後の1781年に誕生)。

1762年10月13日(モーツァルトもマリー・アントワネットも6歳の時)、ウィーンのシェーンブルン宮殿で女帝マリア・テレジアとその夫・神聖ローマ皇帝フランツ1世夫妻一家のために御前演奏した際のモーツァルト(女帝の腕に抱かれているのがマリー・アントワネット)
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 シングル・アクション・ハープは現代のものより繊細な音色を持つといい、オーストラリアにおけるハープ奏者の第一人者で英「ザ・タイムズ」紙絶賛のマーシャル・マグワイア(Marchall McGuire)が、こちらもABOの第一フルート奏者であるメリッサ・ファロウ(Melissa Farrow)のフルートとともに演奏します。なお、同演奏会はシドニー公演の後メルボルンに巡演(9月13日と14日)。

Australian Brandenburg Orchestra: Mozart’s Jupiter – info

●会場:シティ・リサイタル・ホール・エンジェル・プレイス(City Recital Hall Angel Place)●日程:9月3日(水)、5日(金)、6日(土)、10日(水)、12日(金)●開演:全日程7pm、9月6日のみマチネ2pm公演もあり ●料金:*大人/プレミアム席$160、A席$133、B席$106、C席$68 *コンセッション(学生/30歳未満)/A席$54、B席$44、C席$31 *コンセッション(シニア・カード保持者)/A席$111(マチネのみ割引あり)、B席$99(マチネのみ割引あり) *コンセッション(年金受給者/失業者)/A席$80(マチネのみ割引あり)、B席$68、C席$42 www.brandenburg.com.au