「ザ・ターニング」
原題:The Turning
(オーストラリア2013年公開、日本未公開/3時間/MA15+/ドラマ/DVD、Apple TV、Googleプレイ、YouTubeムービーで観賞可能なほかABC iviewで無料配信!→ iview.abc.net.au/show/turning)
監督:ジャスティン・カーゼル/ミア・ワシコウスカ/デイヴィッド・ウェナムほか
出演:ローズ・バーン/ケイト・ブランシェット/ヒューゴ・ウィーヴィング/リチャード・ロクスバラ/ミランダ・オットー
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全豪文学界で最も権威あるマイルズ・フランクリン賞を4度も受賞した、現代オーストラリア文学を代表する作家のひとりティム・ウィントン(1960〜)が2004年に発表した同名短編小説集の映画化で、17話の物語を18人の監督(17話に加え、映画の“冒頭”と“結び”の部分の映像の監督も含め18人)が手がけた2013年公開のオーストラリアのアンソロジー(オムニバス)映画。
DV夫と2人の娘たちとトレーラーハウスで暮らす主婦役でAACTA賞主演女優賞を受賞したローズ・バーン(映画と同じタイトルの第8話「ザ・ターニング」)
それぞれの物語は“第○話”というふうにナンバリングされているわけではないが、ここでは便宜上オープニングとエンディングを除く17話を登場順にナンバリングすると、18人の監督中、第11話のミア・ワシコウスカ(「アリス・イン・ワンダーランド」)と、第13話のデイヴィッド・ウェナム(「ロード・オブ・ザ・リング②③」「300〈スリーハンドレッド〉①②」※ほか彼が出演したオージー映画一覧はこの画面一番下に掲載!)というハリウッドでもその名を知られる2人のオージー俳優が本作で監督デビューを果たしたほか、第15話には「アサシン クリード(Assassin’s Creed)」(2016)などこちらも海外進出を果たしているジャスティン・カーゼル監督も名を連ねている。
ケイト・ブランシェットとリチャード・ロクスバラが夫婦役で共演(第12話「リユニオン」)
俳優陣がこれまた豪華で、日本語版Wikipediaに名前が出てくる俳優だけでもオスカー女優ケイト・ブランシェット(「キャロル」「リトル・フィッシュ」「サンク・ゴッド・ヒー・メット・リズィー」)とリチャード・ロクスバラ(「ムーラン・ルージュ」「サンク・ゴッド・ヒー・メット・リズィー」※ほか彼が出演したオージー映画一覧はこの画面一番下に掲載!)が第12話に夫婦役で共演しているのを筆頭に(※日本では“Roxburgh”という綴りからか彼の名字を“ロクスバーグ”と書かれるが、エディンバラ<Edinburgh>と同じ発音でロクスバラが正解)、後年オスカー候補女優となるローズ・バーン(「ザ・レイジ・イン・プラシッド・レイク」「テイク・アウェイ」「マイ・マザー・フランク」「トゥー・ハンズ/銃弾のY字路」)、ミランダ・オットー、マット・ネイブル(「イースト・ウエスト101 ③」)の3人が第8話で共演、デイヴィッド・ウェナム監督の第13話にはヒューゴ・ウィーヴィング(「プリシラ」「証拠」※ほか彼が出演したオージー映画一覧はこの画面一番下に掲載!)が、第3話にはカラン・マルヴェイ(「ハイ・グラウンド」)が、そしてオープニングとエンディングのナレイションでコリン・フリールズ(「ワイルド・ボーイズ」「台風の目」「ハーモニー <1996年版>」)が出演している。ウェナム監督&ウィーヴィング主演のコンビは「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズで共演したことからできた縁が実現させたのだろう。また、ケイト・ブランシェットとリチャード・ロクスバラは「サンク・ゴッド・ヒー・メット・リズィー」(1997)で既に共演歴あり。
デイヴィッド・ウェナムが監督し、ヒューゴ・ウィーヴィングが主演した第13話「コミッション」
全話ティム・ウィントンの出身地である西オーストラリア(WA)州のとある町を舞台に撮影も一部がシドニーのほかはWA州で行われ、メルボルン国際映画祭でのワールド・プレミアの後、ベルリン国際映画祭、BFIロンドン映画祭など各国の名だたる映画祭にも出品され、全豪映画界で最も栄誉ある第3回オーストラリア映画テレビ芸術アカデミー(AACTAの頭文字から“アークタ”と呼ばれる)賞(旧オーストラリア映画協会賞)において作品、監督(18人全員)、主演男優(ヒューゴ・ウィーヴィング)、主演女優(ローズ・バーン)、助演女優(ミラー・フォークス)、編集賞の6部門で候補となり、ローズ・バーンが見事受賞した。
ティム・ウィントンの小説は、日本でも邦訳本が出版されたものだけでも「ブルーバック」(1997)と「ブレス:呼吸」(2008)があり、やはりこれまでに何作もが映画化されており、その2作もこちらも「ブルーバック あの海を見ていた」(2022)、「ブレス あの波の向こうへ」(2017)へという邦題で日本でも公開、「ブルーバック」はミア・ワシコウスカとエリック・バナ出演、「ブレス」はサイモン・ベイカー監督・出演、エリザベス・デビッキと本作にも出演のリチャード・ロクスバラ共演という豪華さ。
カラン・マルヴェイ主演の第3話「アクィファー(帯水層)」
「ザ・ターニング」はいずれもWA州が舞台とはいえ17話それぞれが独立した異なるストーリーで一切繋がっていないため、3時間という長尺だが1話ずつは各10分程度だから一気に全編観る必要もなく、毎日数話ずつ観ても楽しめる。それぞれの物語の設定も異なれば、こちらもそれぞれの主人公となる登場人物もアングロサクソン系だけでなくアボリジナル系、年齢も幼い子供から大人までとさまざま。繋がってはいないが全話のテーマともなるのがタイトルにある“ターニング”、日本ではターニング・ポイントという言葉でよく知られる“転機”や“転換点”といったものが描かれる。
ミランダ・オットー(右)がローズ・バーンの友人役で出演の第8話「ザ・ターニング」
わずか10分ほどの出演でオスカー候補女優ナオミ・ワッツ(「美しい絵の崩壊」)やキャリー・マリガン(「華麗なるギャツビー」)というその年の有力候補女優たちを抑えて自身初のAACTA賞主演女優賞を受賞したローズ・バーンは、なるほど受賞も納得という演技力を見せる。バーンが演じたのは仕事もろくにしない夫(マット・ネイブル)と幼い2人の娘とともに、トイレもないトレーラーハウスで暮らす主婦レイ役で、しかも夫はDVときたら夢も希望もない状況だが、最近その町に越してきた裕福な、だがレイにも彼女の娘たちにも優しい主婦シェリー(ミランダ・オットー)と友人になり、シェリーを通してレイはある“転機”を迎える。
ローズ・バーン 
上記日本でもその名を知られる俳優たち以外では、まず第5話に出演のミラー・フォークス(「ザ・プリンシパル」「ワイルド・ボーイズ」「アニマル・キングダム」)がAACTA賞助演女優賞候補となり、第6話では「しあわせの百貨店へようこそ」(2018)で主人公の母親役を演じたスージー・ポーター(「ベター・ザン・セックス」「ウープ・ウープ」※ほか彼女が出演したオージー映画一覧はこの画面一番下に掲載!)が、第10話にはニコール・キッドマン主演の「虹蛇と眠る女」(2015)で主要キャラのひとりであるアボリジナル青年役だったメイン・ワイアット、第12話のリチャード・ロクスバラの母親役でロビン・ネヴィン(「最も危険な悪女」)、第17話には普段は脇役での出演が目立つダン・ワイリー(「アニマル・キングダム」「バッド・コップ、バッド・コップ」※ほか彼が出演したオージー映画一覧はこの画面一番下に掲載!)が主役でといった具合に、全豪映画テレビ界ではお馴染みの顔ぶれが何人も出てくる。また、原作者のテイム・ウィントンも第1話で声の出演を果たしており、ウィントンは「ブレス あの波の向こうへ」でも大人になった主人公の声を担当、どちらも声だけとはいえ、映画に深みをもたらす味のある“声優”で彼の多才ぶりに脱帽。
いずれの話も暗かったり重かったりするのだが、前述の通り1話ずつは10分ばかしなので見ていてゲンナリさせられることはなく、あれ? これは結局どういう話だったんだろうという終わり方のものもあるが、短いながらにある種の余韻を残すものばかり。そんな中、ケイト・ブランシェットとリチャード・ロクスバラが夫婦役の第12話だけ笑えるシーンがあり、最終的にはこれは17話の中で唯一のハッピーエンドということなのだろうと思える点で異色でもあるが、その“笑い”こそがそこでは転機となる。ちなみに同エピソードの脚本を手掛けたのはブランシェットの実生活での夫であるアンドリュー・アプトン。
ほとんどがドラマ映画だが前衛的なヴィデオ・インスタレイションを見るようなエピソードもあるし、アートハウス系の映画が好きな人はもちろん、そうでない人も、思い思いに楽しめる一風変わったオムニバス映画として観ておいて損はない。
【セリフにおける英語のヒント(その①)】第8話でローズ・バーンが幼い2人の娘と、友人であるミランダ・オットーとともにお祭りのような会場に足を運ぶシーンで、ミランダ・オットーがローズ・バーンの娘たちに「ショウバッグ見に行きたい?」と訪ねる。このお祭りは毎年イースターの時期に全豪各地で開催される家族向けの農業品評会イヴェント「イースター・ショウ」で(※開催地によって名称が異なることも)、ショウバッグ(showbag)は会場で子供向けに販売されている福袋のようなもののこと。
【セリフにおける英語のヒント(その②)】第12話でリチャード・ロクスバラが妻であるケイト・ブランシェットと自身の母親(ロビン・ネヴィン)とともに叔父の家を訪ねるシーンで「こんな家だったっけ?」と言うと、母が「あなたはユニの時以来、来てないでしょ?」と返す。“ユニ(uni)”は“大学(university)”を略したオージー・イングリッシュで、英語が堪能だったかの故・坂本龍一も、1996年の来豪コンサート時、シドニーで現地ラジオのインタヴューに応えた際、相手の質問の中にあったその単語の意味が分からず「ユニ?」と聞き返したことがある。
●デイヴィッド・ウェナム出演のその他のオージー映画(テレビドラマ含む):「エルヴィス」「LION/ライオン 〜25年目のただいま〜」「ザ・ターニング(監督)」「ドリッピング・イン・チョコレート」「オーストラリア」「ムーラン・ルージュ」「ベター・ザン・セックス」「ハーモニー(1996年版)」
●ヒューゴ・ウィーヴィング出演のその他のオージー映画:「リベンジャー 復讐のドレス」「虹蛇と眠る女」「ザ・ターニング」「リトル・フィッシュ」「ストレンジ・プラネット」「ベイブ(声)」「プリシラ」「証拠」
●リチャード・ロクスバラ出演のその他のオージー映画:「エルヴィス」「ブレス あの波の向こうへ」「ザ・ターニング」「ディア マイ ファーザー(監督)」「ムーラン・ルージュ」「サンク・ゴッド・ヒー・メット・リズィー」
●スージー・ポーター出演のその他のオージー映画(テレビドラマ含む):「しあわせの百貨店へようこそ」「パルス」「ザ・ターニング」「イースト・ウエスト101 ① ② ③」「リトル・フィッシュ」「タップ・ドッグス」「ベター・ザン・セックス」「トゥー・ハンズ/銃弾のY字路」「エイミー」「ウープ・ウープ」
●ダン・ワイリー出演のその他のオージー映画(テレビドラマ含む):「ザ・ターニング」「アニマル・キングダム」「バッド・コップ、バッド・コップ」「ハーモニー(1996年版)」「ミュリエルの結婚」「ハーケンクロイツ/ネオナチの刻印」「スポッツウッド・クラブ」
「ザ・ターニング」予告編


