
※2025年12月25日更新
「マッドマックス」
原題:Mad Max
(オーストラリア、日本ともに1979年公開/88分/R/アクション/DVD、Stan、Apple TV、Amazonプライム、YouTubeムービー、Googleプレイで観賞可能)
監督:ジョージ・ミラー
出演:メル・ギブソン/ヒュー・キース・バーン/スティーヴ・ビズリー/ロジャー・ワード
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ジョージ・ミラー監督(「マッドマックス:フュリオサ」「マッドマックス 怒りのデス・ロード」)とメル・ギブソン(「危険な年」「誓い」「ティム」)の大出世作としてその後シリーズ化されただけでなく、現在に至るまで世界的にも最も知名度の高いオーストラリア映画のひとつとして語り継がれる1979年公開作品。なんといってもジョージ・ミラー監督にとっては劇場映画監督デビュー作、メル・ギブソンにとっても本格的な劇場映画初主演作にして大当たりとなり、全豪映画界で最も権威ある第21回オーストラリア映画協会(AFI)賞(現オーストラリア映画テレビ芸術アカデミー賞)では作品、監督、助演男優賞(暴走族のリーダー役ヒュー・キース・バーン)など8部門で候補となり、作曲、音響、編集、スタント賞の4部門受賞に輝いた。ギブソンは本作では主演男優賞候補にならなかったものの、本作と同じ1979年の別の映画「ティム」でAFI賞主演男優賞を受賞、デビュー早々、弱冠23歳にして演技力も認められたことになる。撮影は全編メルボルンが州都であるヴィクトリア州で行われ、アクションものにしては35万ドルというかなりの低予算作品でありながら最終的には全世界で1億ドルの興収を弾き出し、“予算との対比で最も高額の興収を記録した映画”の座をアメリカのホラー映画「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」(1999)に破られるまで20年間キープした。
正義感溢れる警官マックスを演じ世界的に大ブレイクを果たしたメル・ギブソン

“近未来の荒廃したオーストラリア”が舞台という設定で、なるほど、その雰囲気は十分あるが、都市部からちょっと車を走らせれば21世紀の今現在でも40年以上前の本作公開時からほとんど変わりない田舎町がオーストラリアには存在するので、ある意味それも驚きである。
ストーリーは我が物顔で凶悪事件を起こし人々の生活を脅かす暴走族と、それを追う特殊警察という“善”と“悪”の対立を描いた分かりやすい展開ではあるものの、スーパーマンなどのアメリカン・コミックやSFではなく生身の人間が悪を退治するヒーローとして活躍するアクション映画としては元祖的な存在でもあり、その後多くの映画に影響を与えた。ヒーローである警察官マックス役をギブソンが射止めたのは、オーディションの前日、派手な喧嘩をしておそらく殴られた痕が顔に残り服もボロボロの状態でオーディションに望んだのをミラー監督が気に入ったからだという。デビュー間もないギブソンの本作での演技は、冷静かつ客観的に観直すとアクション・ヒーローとしてはややぎこちなく感じられる部分もあり、本作撮影当時、まだシドニーの国立演劇学院(NIDAの頭文字を取って“ナイダ”と呼ばれ、大卒と同じ学位が取得できる名門校)で演技を学んでいた22歳という実年齢を踏まえると、ギブソンよりもう少し上の年齢の俳優を起用してもよかったのではないかと思えなくもないが、「マッドマックス2」(1981)、同3作目「マッドマックス/サンダードーム(Mad Max Beyond Thunderdome)」(1985)まで3シリーズ連続で立派にマックス役をこなしハリウッドでの地位を不動のものにしたから、ミラー監督の手腕もさることながら、ギブソンあっての大ヒットでもあったのだろう。ちなみにジョージ・ミラーは本作から実に45年後の2024年公開のシリーズ5作目にして最新作「マッドマックス:フュリオサ」まで5作すべてを監督したほか、本作の後、ニコール・キッドマン主演の「デッド・カーム/戦慄の航海」(1989)や子豚の成長記を描いたファミリー娯楽映画「ベイブ」シリーズなどでプロデューサーとしての才能も発揮している。
マックスの同僚で親友の警官グース役のスティーヴ・ビズリー(「華麗なるギャツビー」)も、どちらかというとクールなマックスとは正反対の荒っぽい性格だが好印象で、マックスとグースの上司である隊長フィフィ役のロジャー・ワードはスキンヘッドにゴート髭をたくわえ筋骨隆々、本作の登場人物の中で唯一アメコミに出てきそうな外見と部下思いの言動が印象的だ。
特殊警察の同僚警官で親友同士のマックス(メル・ギブソン:左)とグース(スティーヴ・ビズリー)

マックスとグースの上司である隊長フィフィ(ロジャー・ワード:手前)

対する暴走族のリーダー、トーカッター役のヒュー・キース・バーンも存在感があり、冷酷な悪役になりきっている。バーンは本作から実に36年後に公開されたシリーズ4作目「マッドマックス 怒りのデス・ロード」(2015)でも全く別の役柄だが悪のリーダー役に起用された。
暴走族のリーダー、トーカッター役でAFI賞助演男優賞候補となったヒュー・キース・バーン

そして、男優メインの本作にあって、紅一点にも近いマックスの妻ジェシー役のジョアン・サミュエル(「ニコール・キッドマン in シャドウ・オブ・ブロンド」)が近未来の殺伐とした設定に花を添えている。
仕事ぶりはクールなマックス(メル・ギブソン)も家では妻ジェシー(ジョアン・サミュエル)と一人息子を心から愛し

上記キャラクターたちと比べると端役にすぎないが、修理工グリース・ラット役のニコ・ラサウリス(「ザ・ハートブレイク・キッド」)はもともとジョージ・ミラー監督の学生時代からの友人で、後に脚本家としても才能を開花させ、ミラー監督との共同執筆でシリーズ4作目「マッドマックス 怒りのデス・ロード」(2015)と5作目「マッドマックス:フュリオサ」(2024)の脚本を手がけた。
本作の見せ場であるカー・チェイスのアクション・シーンもふんだんに盛り込まれていて、一方で目を覆いたくなるような残酷なシーンはほとんどないので(全くないわけではないが画面から目をそらさず直視できる範囲)、オーストラリア映画を知る上で一度はぜひ観ておきたい傑作だ。
迫力のアクション・シーンもふんだんに盛り込まれている

STORY
近未来の荒廃したオーストラリアでは、暴走族が人々の生活を脅かしていた。警官を殺害し、奪ったパトカーで逃走中の凶悪犯ナイトライダーは、暴走族専門の特殊警察の警官マックス(メル・ギブソン)によって追い詰められ、ハンドルを切りそこなって事故死する。ナイトライダーの友人で暴走族のリーダー、トーカッター(ヒュー・キース・バーン)は特殊警察に復讐を誓い…。
「マッドマックス」予告編


