「輝く女性たち」:カフェ・ジャポネのオーナー安田ます美さん

怖そうなお客さんが来ると「このお客さんを
常連にしたい!」とチャレンジ精神を掻き立てられ(笑)

「カフェ・ジャポネ」オーナー
安田ます美さん(59歳)
Masumi Yasuda

masumi「日本に住んでいた27歳の時に離婚しました。地元京都は当時、今以上にシングル・マザーとその子供たちに閉鎖的で、子供が小学校に上がる前にと思って91年(※31歳)、子供2人を連れてシドニーに移住しました。もともと私が外国に住んでみたかったというのもありますが(笑)」

 ジャパラリア今月号(2019年2月号)の巻頭カフェ特集でも紹介の「カフェ・ジャポネ」をランドウィックで経営するます美さん。既にオープンして12年、ます美さんの浴衣姿ともども地元にすっかり根付いていますが、京都の嵯峨美術短期大学で日本画を専攻し教員免許を取得していたことから、来豪当初は幼稚園から高校まで一貫教育の私立校で日本語教師の職を得て15年間、教師として働きました。

「教えることも大好きでした。私が働いた学校がすごく語学に力を入れていたともあり、頑張って教えたら教えた分だけ生徒の上達ぶりが手に取るように分かるのが嬉しくて。夏休みはヴォランティアで補習授業をしたり、本当に楽しかったんですが…」

 ある年、学校の経営陣が変わり、語学重視だったそれまでの方針も変えられ、ます美さんのやる気もなくなっていきました。ちょうど15年勤め上げ、2度目のロング・サーヴィス・リーヴを取る時期に合わせて退職。アラフィフに差しかかっていましたが、ます美さんには次なる目標がその時既にありました。そう、カフェをオープンすることでした。

「教師として働いていたころ、仕事で疲れたからカフェでゆっくり息抜きしたいと思っても、私の行動範囲内にあったカフェはどこもうるさい音楽ばっかで少しもゆっくりなんてできず、クラシック音楽を流して美味しいコーヒーを楽しんでもらえるようなカフェを出したいと」

 ます美さんは当時、カフェ・ジャポネの上の階に親子3人で暮らしていました。カフェ・ジャポネになる以前、下の階は飲食店ではなかったためキッチン設備を導入したりとゼロからのスタートで、カウンシルの許可が下りるまでに8カ月もかかりました。

「幸運なことに建物のオーナーが『カフェがオープンするまで下の階の家賃はいらないよ』と言ってくれて、私も焦ることなくカウンシルの許可が取れるまでは練習期間だと考え、イタリア人の有名なバリスタに1時間$40で教えてもらったり、コーヒー学校も2校通いました」

 こうして12年前にオープンしたカフェ・ジャポネ。食事メニューは丼ものやオムライスに焼き飯、おにぎり、おにぎらずといった和のテイストのものも多いですが、日本人客が一人も来ない日でも昼過ぎにはディスプレイ・カウンターに並んでいたおにぎりが完売になるほど地元のオージーたちにも愛される店へと成長しました。

「ローカルの人たちとすごく仲良くなって、みんな遠い親戚みたい(笑)。『ホリデイどうだった?』とか『息子さん元気?』といった具合にこの店をリヴィング代わりにみんなと話せるのが私にとっての宝物です。おにぎりなどの日本文化を受け入れてくれるのも嬉しいですね」

 どんな客も歓迎、いやむしろ一見怖そうな人こそいいのだそう?

「怖そうなお客さんが来るとチャレンジ精神を掻き立てられ、『このお客さんから笑いを引き出したい!』『このお客さんを常連にしたい!』と思って頑張るんです。そういうお客さんは本当に心強い常連客になってくれることが多いんです」

Café Japone

●1 Canberra St., Randwick ☎︎ 0448-628-190 ■月~土7am-3pm 日休 facebook.com/CafeJapone

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