オーストラリア・デイに観たい大作映画「オーストラリア」

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※2026年1月8日更新

オーストラリア

原題:Australia

(オーストラリア2008年、日本2009年公開/165分/M/ロマンス/DVD、Apple TV、Disney+で観賞可能)

監督:バズ・ラーマン
出演:ニコール・キッドマン/ヒュー・ジャックマン/デイヴィッド・ウェナム/ブライアン・ブラウン/ベン・メンデルソーン

(※以下、文中の紫色の太字タイトルをクリックすると該当作品の本コーナーでの紹介記事へとジャンプします)

ロミオジュリエット」(1996)、「ムーランルージュ」(2001)、「華麗なるギャツビー」(2013)、「エルヴィス」(2022)のオージー監督バズ・ラーマン(「ダンシングヒーロー」)が、「ムーランルージュ」で組んだオージー・オスカー女優ニコール・キッドマン(「愛すべき夫妻の秘密<Being the Ricardos>」「めぐりあう時間たち<The Hours>」※ほか彼女が出演したオージー映画一覧はこの画面一番下に掲載!)を再度ヒロインに、その相手役にこちらも「X-メン」シリーズのオージー・ハリウッド・スター、ヒュー・ジャックマン(「ペイパーバックヒーロー」)を起用し、1億3,000万ドルという巨費を投じて全編オーストラリアで撮影されただけでなく、主要キャストはもとより脇役からチョイ役に至るまでほぼ全員オーストラリア人俳優で固めた豪米合作の大作映画。興行収入も2億ドルを突破する大ヒットとなり、ラーマン監督夫人で夫が監督したすべての映画の美術監督を務めているキャサリン・マーティンが本作でも美術監督と衣装デザインを担当、全豪映画界において最も権威ある第51回オーストラリア映画協会(AFI)賞(現オーストラリア映画テレビ芸術アカデミー賞)では助演男優(少年ナラ役のブランドン・ウォルターズ)、音響、音楽賞など6部門で候補となり、美術、衣装デザイン、視覚効果賞の3部門受賞に輝いたほか、米アカデミー賞でも受賞を逸したがマーティンが本作からの唯一のノミネイションを受けた(衣装デザイン賞)。ちなみにマーティンは「ムーランルージュ」と「華麗なるギャツビー」で2度オスカー受賞(両作品とも美術賞と衣装デザイン賞の2部門を制覇)、本作と「エルヴィス」「ロミオジュリエット」を含めるとこれまでに合計5作品(つまりハリウッド進出後のすべてのラーマン監督作品)でオスカーにノミネイトされている。

ニコール・キッドマンとヒュー・ジャックマンが初共演
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サラー(ニコール・キッドマン)が実の子のように可愛がるナラ役のブランドン・ウォルターズが本作の出演者の中で唯一、オーストラリア映画協会賞助演男優賞候補になった
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 2時間半以上という長編で、正直、脚本にあれこれテーマを盛り込みすぎたという感想は否めない。メインはニコール・キッドマンとヒュー・ジャックマン演じる男女のロマンスということになるが、アクション、アドヴェンチャー、ファンタジー、戦争、人種差別に男女差別…とてんこ盛りのテーマが絡む。映画は第二次世界大戦勃発と同じ1939年に始まり、だが前半はまだ特に戦争の影響を受けない北部準州ダーウィンでストーリーが展開するが、クライマックスとなる旧日本軍によるダーウィン襲撃シーンは、日本軍がダーウィンに上陸するという史実に反する描写をし(歴史上、日本軍は空襲はしたがオーストラリア大陸に上陸はしていない)、日本人観客の反感を買ったことはいうまでもないが、そもそも襲撃シーン自体、果たして必要だったのか、前半のテーマだけで映画を感動的に終えることもできたのではなかっただろうかと思えるのは事実。要するに全体的にやや散漫とした印象を与えてしまっている。昔の大作映画、例えば「風と共に去りぬ(Gone with the Wind)」(1939)などは劇場公開時に幕間(休憩時間)があったことから映画自体が幕間を踏まえ物語も前編と後編にはっきり分かれていて、そういった古き佳き時代のハリウッド映画を意識したとも受け取れるが、現代の一般観客に果たしてどこまでラーマン監督のそんな思いが通じたかは疑問である。

ニコール・キッドマンとヒュー・ジャックマンのロマンティックなラヴ・シーンもあり
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 だが、それを補う魅力に溢れているのもこれまた事実で、2時間半があっという間に過ぎる。主演のキッドマンとジャックマンはもちろん文句なしの演技力で、特に“牛追い”を意味するドローヴァー役のジャックマンの“いい男ぶり”は本作で女性ファンがさらに増えたのもうなずけるほど。当初ドローヴァー役にはラッセル・クロウで話が進んでおり、クロウでもおそらくそれなりにいい映画になっていたはずだが、キッドマン相手に燃えるような恋に落ちる役柄としては、ファンには失礼ながらクロウでは少々“くたびれた感”があったかもしれず、やはりジャックマンで正解だったといえるだろう。

女性ファンのハートをガッチリ掴んだヒュー・ジャックマン
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 英国貴族という役柄のキッドマンはオスカー女優の余裕の演技だけでなく、本作でオーストラリア映画協会賞衣装デザイン賞を受賞したキャサリン・マーティンが手がけた美しい衣装の数々をいつもながら完璧に着こなし、一方でシーンによってはラフな格好もごく自然で目でも十分楽しませてくれる。

オーストラリア映画協会賞衣装デザイン賞受賞、米オスカーでも同賞にノミネイトされた華やかなファッションも見どころ
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 さらに、ハリウッド映画「F/X引き裂かれたトリック」(1986)に主演したブライアン・ブラウン(「パームビーチ」「トゥーハンズ銃弾のY字路」「デッドハート」「英雄モラント傷だらけの戦士」)が悪役キング・カーニー役で、カーニーの手下でもっと陰湿なイヤ〜な悪役ニール・フレッチャー役で「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズや「300〈スリーハンドレッド〉」シリーズのデイヴィッド・ウェナム(※彼が出演したオージー映画一覧はこの画面一番下に掲載!)が、「スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃(Star Wars: Episode II Attack of the Clones)」(2002)のクリーグ・ラーズ役のジャック・トンプソン(「人生は上々だ!」「英雄モラント傷だらけの戦士」※ほか彼が出演したオージー映画一覧はこの画面一番下に掲載!)がアル中だが憎めない会計士フリン役で、ベン・メンデルソーン(「アニマルキングダム」「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男<Darkest Hour>」※ほか彼が出演したオージー映画一覧はこの画面一番下に掲載!)が実直なダットン大佐役で、ミランダ・オットーの実父バリー・オットー(「ハーモニー <1996年版>」「ダンシングヒーロー」※ほか彼が出演したオージー映画一覧はこの画面一番下に掲載!)がオールソップ行政官役で出演、それぞれが印象を残す。そして、オーストラリア映画界のみならず、世界的にも最も有名なアボリジナル俳優と言い切っても過言ではないデイヴィッド・ガルピリル(「デッドハート」「クロコダイルダンディー」「少年と海」)もナラの祖父で神秘的なアボリジナル、キング・ジョージという重要な役どころで登場。

 男優ではほかにも、「マッドマックス2」(1981)と同シリーズ3作目の「マッドマックス/サンダードーム」で(1985)で主人公マックスに協力するジャイロ・キャプテン役のブルース・スペンス(「君といた丘」)や、日米でもヒットした「プリシラ」(1994)と「ミュリエルの結婚」(1994)にも主要キャラの一人として出演していた大御所ビル・ハンター(「ダンシングヒーロー」「誓い」)、ハンサムだった若かりしころ名作オーストラリア映画「ピクニックatハンギングロック」(1975)で使用人アルバート役を演じたジョン・ジャラット(「デッドハート」)といったいずれも実力派が脇を固めている。また、「ムーランルージュ」(2001)でアルゼンチン・タンゴをバシッと踊るシーンが印象的だったヤセック・コーマン(「ブレス あの波の向こうへ」「イーストウエスト101 ③」「ディア マイ ファーザー」「サンクゴッドヒーメットリズィー」)は、ラーマン監督作品の常連でもあり、本作ではダーウィンの街のパブのオーナー、アイヴァン役で「ムーランルージュ」の時とは全く違った表情を見せる(※日本では“Jacek”という綴りから彼のファースト・ネイムを“ジャセック”と書かれるが、ポーランド出身のオージーであるためヤセックが正解)。もうひとり、フランク神父役のマシュー・ウィテット(「バッドコップバッドコップ」)も、「ムーランルージュ」(2001)のエリック・サティ役で初めてバズ・ラーマン監督に起用されて以来、本作、そして「華麗なるギャツビー」(2013)、とヤセック・コーマンと並び3作続けてラーマン監督作品に出演。やはり“酔っ払いの老人(Old Drunk)”役のヴェテラン・オージー俳優マックス・カレン(「キスオアキル」「わが青春の輝き」※ほか彼が出演したオージー映画一覧はこの画面一番下に掲載!)も本作の後、「華麗なるギャツビー」では同作の象徴的なキャラクター“フクロウ眼鏡の男(Owl Eyes)”役で起用されている。

イヤ〜な悪役で登場のデイヴィッド・ウェナム
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 一方、男優と比較してニコール・キッドマン以外の女優陣には大した見せ場はないものの、ブライアン・ブラウン演じるキング・カーニーの妻役に「マッドマックス」シリーズのジョージ・ミラー監督の元妻としても知られるサンディ・ゴア(「ブライズオブクライスト」「クライインダーク」)、バリー・オットー演じるオールソップ行政官の妻役にケリー・ウォーカー(「ハーモニー <1996年版>」「ピアノレッスン」※ほか彼女が出演したオージー映画一覧はこの画面一番下に掲載!)という大御所女優に加え、カーニー夫妻の娘でデイヴィッド・ウェナム演じるニール・フレッチャーの婚約者キャス役に「マトリックス リローデッド」(2003)のマギー役や「真珠の耳飾りの少女(Girl with a Pearl Earring)」(2003)のフェルメール夫人役のエッシー・デイヴィスといったいずれも演技派オージー女優たちが作品に深みを持たせている。以上、前述の通りラーマン監督作品では劇場映画監督デビュー作「ダンシングヒーロー」(1992)と並んでキャスティングに当たっては海外から招かれて参加の俳優は一人もおらず、全員オージー男女優が起用された。アメリカも出資した豪米合作映画なのでアメリカを含む海外でのさらなる観客動員を狙って米国サイドがアメリカ人俳優の起用を主張してこなかったはずはなく、特にオスカー女優ニコール・キッドマンの主演は異論の余地がないとはいえキッドマン演じたヒロインはイギリス人という設定、ということはオージー女優でなくともよかったが、オーストラリアを舞台にした「オーストラリア」というタイトルの映画を撮影するに当たって、ラーマン監督のこだわりだけでなく、「オーストラリアには素晴らしい俳優がこんなに大勢いるんですよ」と海外に知らしめたいというラーマン監督の熱い、そして自分を育ててくれたオーストラリア映画業界とその俳優たちに対する義理堅い思いもあってのことだろう。

左からサンディ・ゴア、ケリー・ウォーカー、エッシー・デイヴィス
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 広大な大自然の描写も素晴らしく、歴史、ロマンス、人種差別や男女差別に人類愛、そして戦争といった多岐にわたるテーマの数々は、散漫ではあってもさまざまな層の観客にアプローチできる本作の魅力のひとつでもある。史実をねじ曲げて日本人を描いたシーンに日本人として言いたいことはあっても、1月26日の建国記念日オーストラリア・デイに観たいそのものズバリの大作映画であることは間違いない。

【余談】実は記者は本作の(実際の撮影ではないが撮影が終わった後の編集段階で)日本兵の声の吹き替えで参加させてもらい、シドニーのレコーディング・スタジオでその他数人の日本人とともに音声収録を体験した。残念ながらラーマン監督はその場には立ち会っておらず、また、完成した映画を観てもお恥ずかしながら自分でもどの声が自分のものか分からないほどの、要するに“効果音”的な使われ方だったが(苦笑)、とてもいい経験になったことは間違いない。

【セリフにおける英語のヒント(その1)パブの入り口に立つアボリジナルの男性に、パブの中からオーナーのアイヴァン(ヤセック・コーマン)が「原住民は入店禁止だ!(No boongs in here!)」と叫ぶシーンがある。“ブーングス(boongs)”はオーストラリア先住民であるアボリジナルの人々を指しての俗語“原住民”の複数形で(単数形はboong)、当時はパブに入店できないなどさまざまな社会的人種差別を受けていた。

【セリフにおける英語のヒント(その2)ドローヴァー(ヒュー・ジャックマン)の口癖で、その後サラー(ニコール・キッドマン)も使うようになる“クライキー(crikey)”という言葉は、英国でも使われるがオージー英語としても一般的な驚きの感情を表す俗語で、大声で言うと「うわあ!」とか「びっくり!」、呟くように言うと「驚きだぜ」といった表現になる。通常サラーのような上流階級の女性は使わないので、最初はツンとしていたサラーが徐々にオージーたちに溶け込んでいくことを表し微笑ましい。

【セリフにおける英語のヒント(その3)パブに入ったサラー(ニコール・キッドマン)がオーナーのアイヴァン(ヤセック・コーマン)に「女は入っちゃダメだ。女性用のラウンジは隣の部屋だよ(No women. Ladies’ lounge next door)」と言われる。このように当時オーストラリアのパブでは男女別々の部屋で飲まなければならなかった。

STORY
 第二次世界大戦勃発数カ月前の1939年、英国貴族アシュレイ卿夫人サラー(ニコール・キッドマン)は、アシュレイ家の所有地であるオーストラリア北部準州の田舎の牧場に行ったまま1年もロンドンに戻らない夫に合流するため渡豪する。ダーウィンに到着したサラーは、夫が事前に手配していた牛追いでその名も“ドローヴァー(牛追い)”(ヒュー・ジャックマン)の案内により所有地への旅に出るが、サラーがオーストラリアに到着する前に夫は何者かに殺害されており…。

●ニコールキッドマン出演のその他のオージー映画(テレビドラマ含む):「LION/ライオン 〜25年目のただいま〜」「虹蛇と眠る女「オーストラリア」ムーラン・ルージュ」「ニコール・キッドマンの恋愛天国」「デッド・カーム/戦慄の航海」「最も危険な悪女(おんな)」「ニコール・キッドマン in シャドウ・オブ・ブロンド」「ウインドライダー」「BMXアドベンチャー」「ブッシュ・クリスマス

デイヴィッド・ウェナム出演のその他のオージー映画(テレビドラマ含む):「エルヴィス」「LION/ライオン 〜25年目のただいま〜」「ドリッピング・イン・チョコレート「オーストラリア」ムーラン・ルージュ」「ベター・ザン・セックス」「ハーモニー(1996年版)」

●ベンメンデルソーン出演のその他のオージー映画(テレビドラマ含む):「美しい絵の崩壊」「アニマル・キングダム「オーストラリア」「サンプル・ピープルシークレット・メンズ・ビジネスエイミーハーモニー(1996年版)」「泉のセイレーン」「君といた丘

●ジャックトンプソン出演のその他のオージー映画:「ハイ・グラウンド」「華麗なるギャツビー「オーストラリア」人生は上々だ!」「英雄モラント/傷だらけの戦士」「サンデイ・トゥー・ファー・アウェイ

●バリーオットー出演のその他のオージー映画:「リベンジャー 復讐のドレス」「華麗なるギャツビー「オーストラリア」キス・オア・キル」「ハーモニー(1996年版)」「ダンシング・ヒーロー

●ケリーウォーカー出演のその他のオージー映画:「ホールディングマン君を胸に抱いて「オーストラリア」ムーランルージュ」「アリブランディを探して」「ハーモニー(1996年版)」「ベイブ(声)」「ピアノ・レッスン

●マックスカレン出演のその他のオージー映画:「華麗なるギャツビー「オーストラリア」ジンダバイン」「キス・オア・キル」「わが青春の輝き」「サンデイ・トゥー・ファー・アウェイ

「オーストラリア」日本版予告編

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