ヒュー・ジャックマン31歳の劇場映画デビュー作「アースキンヴィル・キングス」

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アースキンヴィルキングス

原題:Erskineville Kings

(オーストラリア1999年公開、日本未公開/1時間21分/M/ドラマ/DVD、Amazonプライム、Apple TV、Googleプレイ、Foxtel、YouTubeムービーで観賞可能なほかABC iviewで無料配信!iview.abc.net.au/video/ZW4385A001S00

監督:アラン・ホワイト
出演:マーティ・デニス/ヒュー・ジャックマン/ジョエル・エジャトン/ロイ・ビリング

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 主演映画「X-MEN」シリーズ(2000〜)の大ヒットや米アカデミー賞主演男優賞候補となったミュージカル映画「レ・ミゼラブル」(2012)などで知られるオージー・ハリウッド・スター、ヒュー・ジャックマン(「オーストラリア」)の記念すべき劇場映画デビュー、それも主演作として1999年に公開されたオーストラリアのドラマ映画。全豪映画界で最も権威ある第41回オーストラリア映画協会(AFI)賞(現オーストラリア映画テレビ芸術アカデミー賞)において、本作から唯一、ジャックマンが主演男優賞にノミネイトされた。ジャックマンは同年、別のオージー映画「ペイパーバックヒーロー」でもクローディア・カーヴァンと主演、つまり映画デビューした年にいきなりどちらも主役で2本もの映画に起用されたことになる。当時31歳だったというのは映画俳優としては遅咲きだが、それ以前に大作ミュージカルやテレビドラマで主要キャラを演じ俳優としての実績を積んでいた。

2年ぶりに故郷に戻ってきたバーキー(後方右)を連れてパブへ向かうバーキーの兄ウェイス(ヒュー・ジャックマン:手前右)とそのフラットメイトたち

 実は厳密には本作の主人公はジャックマン演じたウェイスではなく、その弟バーキーで、バーキー役のマーティ・デニスは本作の脚本も手がけている。タイトルにあるアースキンヴィルはシドニー在住者なら聞いたことはあるであろうサバーブ名で、“キングス“は映画の中盤以降、大部分のシーンを占める架空のパブ、“キングス・ホテル”を指す。

 ニュータウンなどに隣接するインナー・ウエストのアースキンヴィルはかつて労働者階級の町として知られていた。同じようにかつての労働者階級の町であるサリー・ヒルズが現在ではシドニー屈指の洗練されたサバーブになり、日本でも有名なカフェbills(ビルズ)サリー・ヒルズ店など話題を集めるレストランやカフェも多い一方、アースキンヴィルは今でも特に大きな注目を集めるエリアではなくどちらかというと地味な町だ。映画に登場するキャラクターたちも全員が労働者階級出身で、主人公バーキーの元彼女が主要キャラの中での“紅一点”となる以外は全体的に“男臭い”、悪くいえば“ムサい”映画でもある。主要キャラの男たちは全員、黒い爪垢が溜まっているというのも彼らの職種を物語る。アースキンヴィルという町そのものもいかにも労働者階級エリアといった、どこかさびれた雰囲気と“乾いた空気感”を漂わせる。一方で、キングス・ホテルの地下のビリヤード・ルームは風通しも悪く蒸し暑く、実際、男たちは汗を滲ませながらビールを飲み、ビリヤードに興じる。十分ムサい。

パブでダーツに興じるウェイス(ヒュー・ジャックマン)

 マーティ・デニスはナイーヴな主人公バーキーを好演するが、兄ウェイス役のヒュー・ジャックマンに演技面で“食われた”形となってしまったことは否めない。それが、本来は準主役にすぎないジャックマンがデニスを差し置いて主演男優賞候補となった理由ともいえる。それほどジャックマンが素晴らしい演技を見せる。前述の通り決してデニスに演技力がないわけではなく、映画は全体的に“会話劇”で、特に前述の中盤以降のビリヤード・ルームでは互いに確執を持つウェイスとバーキー兄弟が過去を振り返る会話を中心に展開する。男臭い映画にしては会話が多すぎる気もして、ふと本作は舞台劇の映画化かと思いきや、そうではなさそうで、俳優の仕事のうちとはいえ、また、自分自身が脚本を書いたデニスはともかくジャックマンはセリフを覚えるのもひと苦労だったのではないだろうか。これがまたコテコテの労働者階級のオージー・イングリッシュで日本人には聞き取るのがかなり難解だが、記者が観た無料配信のABC iviewには英字幕が付けられるので救われた。いずれにしてもクライマックスのジャックマンの迫真の演技に誰もが圧倒されるだろう。

ヒュー・ジャックマン(左端)が劇場映画デビュー作にしてAFI賞主演男優賞候補に

 その他の出演者では、同兄弟の幼馴染みでレンタル・ヴィデオ・ショップで働くウェイン役に「スター・ウォーズ」エピソード2(2002)と3(2005)のオーウェン・ラーズ役で知られるジョエル・エジャトン(「華麗なるギャツビー」「アニマルキングダム」※ほか彼が出演したオージー映画一覧はこの画面一番下に掲載!)が、そして、こちらはかなりチョイ役ではあるが映画の冒頭の駅のシーンでの駅員役に「ナルニア国物語/第3章:アスラン王と魔法の島(The Chronicles of Narnia: The Voyage of the Dawn Treader)」(2010)ののうなしあんよの頭(Chief Dufflepud)役などで知られるロイ・ビリング(「ハウスオブボンド」「マニールイス」「バッドコップバッドコップ」「サンクゴッドヒーメットリズィー」)も顔を出している(※ジョエル・エジャトンの名字は“Edgerton”という綴りからか日本では“エドガートン”と記載されるが“エジャトン”が正解)。

 撮影は全編、タイトルにもあるアースキンヴィルやニュータウン、エンモアなどシドニーで行われ、冒頭の駅のシーンはシドニー最大のセントラル駅、キングス・ホテルの地下のビリヤード・ルームではなく地上階のパブのシーンはサリー・ヒルズにあるハリウッド・ホテルで、そしてバーキーの元カノのラニーが働く古書店はニュータウンに実在する有名な古書店グールズ・ブックスが使用された。

STORY
 夜行列車で朝、シドニーのセントラル駅に降り立った青年バーキー(マーティ・デニス)は、公衆電話で実家へ電話するも受話器の向こうから流れる機械音声に、その番号が現在使われていないことを告げられる。そのまま生まれ育ったアースキンヴィルの実家へ向かうが家の前には“For Sale”の看板が立てられ当然、誰も住んでいなかった。実はバーキーは父親のDVが原因で家を出て以来、家族とも友人たちとも疎遠になっていたが、父が亡くなったことを知り、葬儀に参列するため2年ぶりに故郷に戻ってきたのだった。かつての友人ウェイン(ジョエル・エジャトン)が働いていた地元のレンタル・ヴィデオ・ショップに出向くと幸いまだウェインがそこで働いており、ウェインはバーキーの兄ウェイス(ヒュー・ジャックマン)が現在住んでいるユニットへバーキーを案内し、兄弟は2年ぶりの再会を果たすが…。

●ジョエル・エジャトン出演のその他のオージー映画(テレビドラマ含む):「華麗なるギャツビー」「アニマル・キングダム」「ケリー・ザ・ギャング」「トエンティマン・ブラザーズ」「サンプル・ピープル「アースキンヴィル・キングス」シークレット・メンズ・ビジネス

「アースキンヴィル・キングス」予告編

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