「レイルウェイ 運命の旅路」
原題:The Railway Man
監督:ジョナサン・テプリツキー
出演:コリン・ファース/ニコール・キッドマン/真田広之/ジェレミー・アーヴァイン/石田淡朗
(オーストラリア、日本ともに2013年公開/1時間56分/M/歴史ドラマ/DVD、Amazonプライム、Apple TV、Googleプレイ、YouTubeムービーで観賞可能なほかABC iviewで無料配信!→ iview.abc.net.au/show/railway-man)
(※以下、文中の紫色の太字タイトルをクリックすると該当作品の本コーナーでの紹介記事へとジャンプします)
第二次世界大戦に従軍した実在の元イギリス軍将校エリック・ローマクス(1919〜2012)が戦後50年の1995年に発表した自叙伝を、英・豪・スイス・タイ4カ国出資の下、後に「チャーチル ノルマンディーの決断(Churchill)」(2017)などにより海外でも才能を認められるに至ったオージー監督ジョナサン・テプリツキー(「ベター・ザン・セックス」)が映画化、2013年にトロント国際映画祭、チューリッヒ映画祭、東京国際映画祭などに出品され、全豪映画界で最も権威ある第4回オーストラリア映画テレビ芸術アカデミー(AACTAの頭文字から“アークタ”と呼ばれる)賞(旧オーストラリア映画協会賞)で作品、脚色、撮影、音響、衣装デザイン賞など6部門にノミネイトされ、作曲賞を受賞した。ちなみに衣装デザインを手がけたのは別のオージー映画「プリシラ」(1994)で米アカデミー衣装デザイン賞をティム・チャペルとともに共同受賞したリジー・ガーディナー(「ア・フュー・ベスト・メン」「ウープ・ウープ」)。
退役軍人エリック(コリン・ファース)は還暦を過ぎてから17歳年下のパトリシア(ニコール・キッドマン)と出会い二人は恋に落ち…
クライマックス近くになって初めて登場する元大日本帝国陸軍通訳・永瀬隆の中年時代役を演じる真田広之
原作は日本でも「泰緬鉄道 癒される時を求めて」というタイトルの邦訳本が出版され、第二次世界大戦中、シンガポールで大日本帝国陸軍の捕虜となりタイへ移送され、日本軍が推し進めていたタイとビルマを結ぶ泰緬鉄道の建設に際し技術者として強制労働を強いられたエリック・ローマクスの中年時代役にオスカー受賞歴を持つコリン・ファース、戦時中の青年時代役を本作の2年前にスティーヴン・スピルバーグ監督の映画「戦火の馬(War Horse)」の主役に抜擢され華々しく劇場映画デビューしたジェレミー・アーヴァインというともにイギリス人男優が扮し、エリックが還暦を過ぎてから出会い恋に落ち再婚する17歳年下のパトリシアをオージー・オスカー女優ニコール・キッドマン(「愛すべき夫妻の秘密<Being the Ricardos>」「めぐりあう時間たち<The Hours>」※ほか彼女が出演したオージー映画一覧はこの画面一番下に掲載!)が、そして陸軍通訳・永瀬隆の中年時代を真田広之、青年時代を石田淡朗が演じた。
エリックの青年時代役のジェレミー・アーヴァイン
戦後何十年も経った今も突如、捕虜時代のフラッシュバックに悩まされるエリック(左は永瀬隆の青年時代役の石田淡朗)
陸軍通訳・永瀬隆の青年時代役の石田淡朗
もうひとり、エリックの軍友で同じく捕虜としての生活を共にしたフィンレイの中年時代役でハリウッドにも進出しているスウェーデン人俳優ステッラン・スカーシュゴード(※日本では英語読みでステラン・スカルスガルドと表記されることが多い)、青年時代役にはオージー男優サム・リードが起用された。また、上記主要キャラに比べると端役ということにはなるがトンプソン大尉役でユアン・レスリー(「デッド・ユーロップ」)、そしてヨーク少佐役でブライアン・プロベッツ(「マッドマックス:フュリオサ」)も出演。
戦時中、日本軍の捕虜として共にタイで暮らしたエリック(右)とフィンレイ(ステッラン・スカーシュゴード)は戦後も友情を保ち続けた
トンプソン大尉役のユアン・レスリー
ヨーク少佐役のブライアン・プロベッツ
撮影はタイのほかイギリスやオーストラリア各地で行われ、日本兵、それもエキストラではなくエリックを尋問する役でマサ・ヤマグチや、エリックに殴る蹴るの暴行を加える役で泉原豊といったシドニー在住の日本人俳優も起用された(※泉原豊は現在、日本拠点)。
映画は第二次大戦終結から35年後の1980年、退役軍人エリック・ローマクス(コリン・ファース)がイギリスの長距離列車内の向き合って座る座席で、旅行中だったイギリス生まれのカナダ人女性パトリシア(ニコール・キッドマン)と出会うところから始まる。車中、意気投合するも自分の目的地の駅に到着したエリックはパトリシアに別れを告げ下車するが、列車が発車してすぐエリックはパトリシアに恋に落ちたことに気づく。鉄道マニアの彼は、彼女がエリックと出会った際に向かっていた街から「次は来週の水曜にこの街に行く」と言っていた路線が日に2本しかないことを知っていたためそこへ出向き、列車から降りてきたパトリシアと再会する。彼女も初めて会った時からエリックに好意を抱いており、こうして61歳の新郎と44歳の新婦が誕生する。とまあ、ロマンティックな“熟年恋愛映画”のような最初の10分なのだが、新婚早々エリックは、戦時中の1942年に日本軍の捕虜となった後に日本兵から受けた拷問のフラッシュバックに悩まされるようになり、そこから先は一転して完全シリアスなドラマとなる。エリックは心的外傷後ストレス障害(PTSD)の典型的かつ深刻な症状を抱えていたわけで、映画は現代(1980〜90年代前半)と戦中の両方を交互に見せる手法で展開し、中年時代と青年時代どちらの俳優も全員、見事な演技力で観る者をグイグイ引っ張る。そんな中、紅一点のパトリシアを演じたニコール・キッドマンも素晴らしく、愛する夫エリックを救いたいと願いながらも夫が戦争体験を一切話そうとせず、戦争のことに関してのみ妻である自分に対しても頑なに心を閉ざすエリックを前に苦悩する役柄を、さすがオスカー女優の説得力で見せてくれる。
オスカー女優の余裕の演技力で紅一点としての存在感を示すニコール・キッドマン
苦悩する夫エリックに寄り添うパトリシア
戦後50年近くを経て、ついにエリックは永瀬と対峙する
泰緬鉄道建設にはイギリスだけでなくオランダ、オーストラリア、アメリカの6万2,000人の連合軍捕虜が動員され、実に1万2,621人が飢えや疫病、そして日本兵から受けた拷問により命を落としており、日本軍が侵略先でいかに捕虜たちを非人道的に扱っていたかが伝わり、日本人としては見ていてやるせない気持ちになるが、真田広之と石田淡朗が出演している(=脚本を読んだ上で納得して出演依頼を受けた)ことから決して日本に対するプロパガンダ的な内容ではない。エリックが体験した事実を誇張なく伝え、観る者それぞれに考えさせる。だが映画はそこで終わらない。エリックは当時の陸軍通訳の永瀬がまだ生きており、タイの、こともあろうにエリックが忘れたくとも忘れられない拷問部屋が残る憲兵隊戦争博物館で外国人観光客を相手に館内ガイドをしている事実を知り怒りを募らせ、永瀬への復讐のために単身タイへ飛び1993年、戦後50年近くを経て二人は再会する。コリン・ファースと真田広之がかつての拷問部屋で見せるクライマックス・シーンの演技に注目を。
STORY(※本作のストーリーについては上記本文に掲載!)
●ニコール・キッドマン出演のその他のオージー映画(テレビドラマ含む):「LION/ライオン 〜25年目のただいま〜」「虹蛇と眠る女」「レイルウェイ 運命の旅路」「オーストラリア」「ムーラン・ルージュ」「ニコール・キッドマンの恋愛天国」「デッド・カーム/戦慄の航海」「最も危険な悪女(おんな)」「ニコール・キッドマン in シャドウ・オブ・ブロンド」「ウインドライダー」「BMXアドベンチャー」「ブッシュ・クリスマス」
「レイルウェイ 運命の旅路」日本版予告編


