「ウインドライダー」
原題:Windrider
(オーストラリア1986年公開、日本1989年ヴィデオ・ソフト化/1時間32分/M/ロマンティック・コメディ/DVD、Apple TV、Foxtel、Googleプレイ、Amazonプライムで観賞可能なほかABCアイヴューで無料配信!→ iview.abc.net.au/show/windrider/video/ZX0601A001S00)
監督:ヴィンセント・モントン
出演:トム・バーリンソン/ニコール・キッドマン
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オージー・オスカー女優ニコール・キッドマン(「愛すべき夫妻の秘密<Being the Ricardos>」「めぐりあう時間たち<The Hours>」※ほか彼女が出演したオージー映画一覧はこの画面一番下に掲載!)がデビューから3年後、まだハリウッド進出前の1986年、19歳の時に出演したロマンティック・コメディ。全編西オーストラリア州パースで撮影され、主人公P.C.役に本作の4年前の1982年に「スノーリバー/輝く大地の果てに(The Man from Snowy River)」の主役の座を射止め華々しく劇場映画デビューを果たしたトム・バーリンソン(「ファー・ラップ」)が扮し、キッドマンはP.C.が恋に落ちる相手役のジェイドを演じる。
最初はP.C.(トム・バーリンソン)にそっけなかったジェイド(ニコール・キッドマン)だったが…

父親の経営する大手システム・エンジニアリング会社でエンジニアとして働く典型的な苦労知らずのおぼっちゃまのP.C.はウインドサーフィンに夢中、会社でももっぱらサーフボードの開発に熱心で、実家ではなくビーチ・フロントの一軒家で悠々自適な独身生活を満喫している。ある日P.C.はウインドサーフィン中に360度の見事な回転に初めて成功、それを丘の上から見ていた若い女性に気づき、興奮気味に「今のを見たかい!?」と丘を駆け上がるも、女性は既にその場を立ち去っていた。それから間もなくP.C.がパブで友人と飲んでいると、パブに設置されたテレビにその女性が歌を歌っている姿が映し出された。彼女の正体はロック・シンガーのジェイドだった。ジェイドに一目惚れしたP.C.は以来、彼女に強引なまでの猛アタックをかけるが自身の音楽活動に熱心なジェイドはそっけなく…というストーリー。
ニコール・キッドマンがロック歌手ジェイド役を演じる

なんといっても最大の見どころは撮影当時18歳のニコール・キッドマンが初のヌード・シーンに挑戦した映画だという点。オーストラリアの成人年齢である18歳になったのと同じ年で、まだ10代だったキッドマンが脱ぐだけでなく主演のトム・バーリンソンとのセックス・シーンがある本作のジェイド役のオファーを受けた時に全く葛藤がなかったはずはない。しかも本作はシリアスな恋愛ドラマではなくあくまでもラブコメにすぎず、実際、全豪映画界で最も権威あるオーストラリア映画協会(AFI)賞(現オーストラリア映画テレビ芸術アカデミー賞)では本作は1部門も候補にすらなっていない。だが15歳の若さで芸能界入りしたキッドマンも(デビュー作が公開されたのは16歳の時)成人を迎え、そろそろ大人の女優として見なされたいと考えるようになり、ジェイドが自分の実年齢より上の20代という設定に引かれ出演を決めたとキッドマン本人が語っている。残念ながら映画の中でジェイドが歌うシーンはほかの女性歌手が歌ったものの口パクだが、後にキッドマン初のオスカー候補作となるバズ・ラーマン監督のミュージカル映画「ムーラン・ルージュ」(2001)でちゃんと歌える女優であることも証明する。いずれにしても10代にして挑んだヌード・シーンだけでも立派な女優魂を感じさせ、バーリンソンとのベッド・シーンだけでなく、愛し合った後でバスルームへ向かうシーンはたいていの映画では女優はバスタオルを身体に巻き付けていたりするがキッドマンはここでも全裸、見事なプロポーションの後ろ姿とプルンとしたお尻も披露。


対するトム・バーリンソンも、オーストラリア国内における当時の人気と知名度はキッドマンをはるかに凌ぎ、前述の通り1982年の劇場映画デビュー作「スノーリバー/輝く大地の果てに」でいきなり主役、翌1983年には実在の競走馬を描いた「ファー・ラップ」でも主役、本作の前年の1985年にはオランダのポール・ヴァーホーヴェン監督のハリウッド進出作でルトガー・ハウアー主演の「グレート・ウォリアーズ/欲望の剣(Flesh + Blood)」でも重要な役どころを演じるなど、金髪碧眼の正統派のハンサム男優としてノリにノッていた時期でもある。前述の、デビューから最初の映画3作がいずれも“時代モノ”だったのに対し、本作はバーリンソンにとって初の現代ドラマ映画となったが、時代モノで鍛えられた演技力から主人公P.C.を余裕たっぷりに、とても魅力的に演じている。また、“鍛えられた”という意味ではバーリンソンはメル・ギブソンやケイト・ブランシェットを輩出したオーストラリアの名門・国立演劇学院(NIDAの頭文字を取ってナイダと呼ばれ、大卒と同じ学位を取得できる)出身で、映画デビュー前は舞台での経験も豊富だった。
その他の主要キャラはP.C.の父親役のチャールズ‘バット’ティングウェル(「ザ・キャッスル」「英雄モラント/傷だらけの戦士」※ほか彼が出演したオージー映画一覧はこの画面一番下に掲載!)を筆頭に、職場でP.C.のくだらないジョークを受け流す堅物の中年女性秘書、P.C.と仲のいい社内の中年男性エンジニアの3人、いずれもAFI賞受賞または候補歴を持つヴェテラン俳優が主演の若手2人の脇を固める。P.C.のウインドサーフィンのシーンもスタント・パーソンによるものとはいえかなりの迫力で、ストーリーそのものも、そしてバーリンソンとキッドマンはもちろん上記3人の主要キャラを演じた中年俳優たちもとても魅力的だ。正直、いざ観るまでは40年近くも前の、それもこう言っては失礼だがハリウッドではなくオーストラリアのラブコメ映画だから今観ても大したことはないだろうと思っていたが、嬉しい裏切りで、最後まで楽しく観賞できる。
STORY(※本作のストーリーについては上記本文に掲載!)
●ニコール・キッドマン出演のその他のオージー映画:「LION/ライオン 〜25年目のただいま〜」「虹蛇と眠る女」「オーストラリア」「ムーラン・ルージュ」「ニコール・キッドマンの恋愛天国」「デッド・カーム/戦慄の航海」「ニコール・キッドマン in シャドウ・オブ・ブロンド」「ウインドライダー」「BMXアドベンチャー」「ブッシュ・クリスマス」
●チャールズ‘バッド’ティングウェル出演のその他のオージー映画:「ジンダバイン」「ザ・ウォグ・ボーイ」「ザ・クラック」「エイミー」「ザ・キャッスル」「クライ・イン・ザ・ダーク」「ウインドライダー」「英雄モラント/傷だらけの戦士」
映画「ウインドライダー」予告編


