
※2025年7月27日更新
「テイク・アウェイ」
原題:Take Away
(オーストラリア2003年公開、日本未公開/1時間28分/M/コメディ/DVD、Googleプレイ、Apple TV、Amazonプライムで観賞可能なほか、YouTubeムービーで公式無料配信!→ youtube.com/watch?v=LWwvp8u6D98)
監督:マーク・グレイシー
出演:ヴィンス・コロシモ/スティーヴン・カリー/ローズ・バーン/ネイサン・フィリップス
(※以下、文中の紫色の太字タイトルをクリックすると該当作品の本コーナーでの紹介記事へとジャンプします)
オーストラリアならではのフィッシュ&チップスやバーガーなどのテイクアウェイ・ショップ(日本でいうテイクアウト・ショップ)を舞台に繰り広げられるコメディ映画。
メルボルン郊外の、通りに面してほんの数軒の店が並ぶ古い平屋建ての建物の精肉店を挟んで両端に、どちらも父親の代から続くテイクアウェイ・ショップを構えるそれぞれの店の2代目オーナー、トニーとトレヴことトレヴァーは、やはりどちらも独身の一人暮らしであるということ以外、性格も何もかも全くの正反対。朝の仕込みを終えると優雅にエスプレッソを飲むイタリア系2世または3世と思われるトニーは自宅も店も清潔に保ち身だしなみにも気を配る、女性にもモテそうなタイプで仕事にも情熱を持っている。一方、紅茶を飲む際いらなくなったティー・バッグをゴミ箱に捨てるのではなく天井に向かって放り投げるものだから天井には無数のティー・バッグが張り付いたままというトレヴは住む家も店も不潔極まりなく、仕事ぶりも大いに適当。だからといってトレヴの店は流行っていないかというとそうでもなく、どちらの店にも昔からの常連客が大勢いて連日それなりに繁盛している。目と鼻の先にある競合店同士ということもあって2人は互いを嫌っており、顔を合わせると口喧嘩ばかり。トニーの店でトニーの従妹ソニアがアルバイトを始めると知るや、トレヴも負けじとデイヴなる未経験の青年を雇う。
通りに面した同じ建物にどちらもテイクアウェイ・ショップを構えることから敵対心をむき出しにするトレヴ(スティーヴン・カリー:左)とトニー(ヴィンス・コロシモ)
4人の主要登場人物を演じた中で唯一、世界的に有名になり日本人にもお馴染みなのは紅一点のソニア役、当時まだ海外ではブレイクしていなかったが既に本作の前年の2002年に「スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃(Star Wars: Episode II – Attack of the Clones)」とマット・ディロン監督・主演の「シティ・オブ・ゴースト(City of Ghosts)」でハリウッド進出を果たしていた20代前半当時のローズ・バーン(「ザ・レイジ・イン・プラシッド・レイク」「マイ・マザー・フランク」「トゥー・ハンズ/銃弾のY字路」)だ。完璧主義に近い従兄トニーのことを時にはあきれたように見ながらも、聡明で愛くるしい笑顔が魅力的な若い女性といった役どころのソニアを自然体の演技で好演する。演技力の点でもバーンは本作の3年前の2000年に日本の川口力哉(旧芸名:RIKIYA/黒川力也)と共演した別のオージー映画「ザ・ゴデス・オブ1967」で視覚障害者のヒロインを演じ弱冠21歳にしてヴェネツィア国際映画祭最優秀女優賞を受賞した実力の持ち主でもある。本作の翌2004年には大作歴史映画「トロイ」でブラッド・ピットの相手役に抜擢され、2011年の「ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン」で大ブレイクへと至る。
トニー(ヴィンス・コロシモ)の店でアルバイトを始めるトニーの従妹ソニア(ローズ・バーン)
ローズ・バーン以外の3人の俳優も好感度が高く、頑固なトニーを演じるヴィンス・コロシモ(「華麗なるギャツビー」「トエンティマン・ブラザーズ」「ランタナ」「ザ・ウォグ・ボーイ」)、だらしないトレヴ役のスティーヴン・カリー(「ザ・ウォグ・ボーイ」「ザ・キャッスル)、ちょっとおバカなデイヴ役のネイサン・フィリップスそれぞれが憎めない愛すべきキャラクターたちを楽しませてくれる。
主要キャラ以外では映画の冒頭に、オーストラリアにおけるテイクアウェイの始まりとされる開拓時代のオーストラリアを描いたシーンに出てくる町の名士役にニコラス・ベル(「エルヴィス」「キャス&キムデレラ」「ザ・クラック」「シャイン」)が扮しているほか、その同じシーンで酒場に居合わせた客のひとりにドン・ハニー(「イースト・ウエスト101 ① ② ③」)が顔を出している。なお、そのシーン自体ジョークで、決してテイクアウェイという言葉がオーストラリアで生まれたわけではない。

商店街ではなく住宅街に昔からあるテイクアウェイ・ショップの建物の真隣に大手バーガー・チェイン“バーギーズ”が進出してくることになり、街の住人が一致団結して反対運動を起こすという設定は“下町人情モノ”にも通じる。そんな状況でもトニーとトレヴはまだ和解せず、だがバーギーズの本社に直訴するためメルボルンからシドニーへ2人で一緒に飛び、ホテルの同じ部屋に泊まる。結局シドニー行きは不首尾に終わり、すごすごとメルボルンへ戻った後、トレヴはとうとうとんでもない計画を思い立ちトニーを誘うが…というクライマックスで、最終的に2人を待つのはこれまたとんでもない結末ではあるものの、なんとなくほっこり温かい気持ちにさせられる。ネタバレになるのでここでは触れないが、ハッピーエンドとは呼べないはずなのに誰が見ても立派なハッピーエンドという不思議な映画でもある。

4人以外の出演者では、大手バーガー・チェイン“バーギーズ”のシドニー本社CEO役に「マッドマックス 怒りのデス・ロード」(2015)と続く「マッドマックス:フュリオサ」(2024)で人食い男爵(The People Eater)役を演じたジョン・ハワード(※ほか彼が出演したオージー映画一覧はこの画面一番下に掲載!)、バーギーズのイヴェントなどの際にバーギーズのキャラの着ぐるみを着て参加するのが仕事の2人組のうちのひとりに、オーストラリアの大ヒット・コメディ・シリーズ「キャス&キム」の娘の方であるキムの夫ブレット役が有名なピーター・ロウスソーン(「キャス&キムデレラ」)が扮している。
トレヴの不衛生な店で出されるバーガーやチップスは誰も食べたいと思わないだろうが、トニーが用意する本格的なフィッシュ&チップスはとても美味しそうで、本作はYouTubeムービーで公式無料配信されているから(こちら!)、ポップコーンの代わりにフィッシュ&チップスをテイクアウェイして食べながら観賞することをおすすめ。
【映画のタイトルの綴りについて】本作のタイトルである“テイク・アウェイ”は、日本ではアメリカ英語に準じた“テイクアウト”として一般的な言葉と同じ“持ち帰り”を意味するイギリス英語で、オーストラリアの飲食店ではもっぱらこの言葉が使われるが、通常は本作のタイトルのように間にスペイスが入った2ワードではなく“テイクアウェイ(takeaway)”と1ワードで綴られる。海外、特にアメリカで本作が公開される時のことを見越して、“Takeaway”ではアメリカ人には読みづらいだろうと配慮されて“Take Away”と区切ったのだと思われる。
【余談】本作公開の3年前の2000年、ローズ・バーンが出演した別のオージー映画「マイ・マザー・フランク」のプロモーションでメディア各社の取材に応じていた彼女に記者は独占インタヴューする機会に恵まれた。21歳当時のローズ・バーンがなんと可愛かったこと!(取材時の詳しいエピソードなどを紹介したジャパラリア公式YouTubeチャンネルの投稿はこちら!)。
STORY(※本作のストーリーについては上記本文に掲載!)
●ジョン・ハワード出演のその他のオージー映画:「マッドマックス:フュリオサ」「マッドマックス 怒りのデス・ロード」「ジンダバイン」「テイク・アウェイ」「ジャパニーズ・ストーリー」「月に願いを」「クライ・イン・ザ・ダーク」「ブッシュ・クリスマス」
※映画「テイク・アウェイ」はYouTubeムービーで公式無料配信!


