全寮制の男子高と女子高を舞台にした学園恋愛ドラマ映画「ニコール・キッドマンの恋愛天国」

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OzFilm240

※2026年1月8日更新

ニコールキッドマンの恋愛天国

原題:Flirting

(オーストラリア1991年公開、日本1993年ヴィデオ・ソフト化/99分/PG/学園恋愛ドラマ/DVD、どちらも日本のApple TV、U-NEXTで観賞可能)

監督:ジョン・ダイガン
出演:ノア・テイラー/タンディウェ・“タンディー”・ニュートン/ニコール・キッドマン/ナオミ・ワッツ

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 シャーリーズ・セロン主演の「トリコロールに燃えて(Head in the Clouds)」(2004)やジョン・ボン・ジョヴィ主演の「妻の恋人、夫の愛人(The Leading Man)」(1996)などのオージー監督ジョン・ダイガン(「泉のセイレーン」)の1987年の青春映画「君といた丘」の続編として4年後の1991年にやはりダイガン監督・脚本により公開されたオーストラリアの学園恋愛ドラマ映画。日本では劇場公開はされず2年後の1993年にヴィデオ・ソフト化、その時点でまだオスカー女優ではなかったが既にハリウッド・スターとなっていたニコール・キッドマン(「愛すべき夫妻の秘密<Being the Ricardos>」「めぐりあう時間たち<The Hours>」※ほか彼女が出演したオージー映画一覧はこの画面一番下に掲載!)の名を冠した邦題が付けられたがキッドマンは本作の主役ではなく、主人公は「君といた丘」と同じノア・テイラー(「ヒーダイドウィズファラフェルインヒズハンド」「シャイン」)演じたダニーと、その相手役でイギリス人の父とジンバブエ人の母の下にイギリスで生まれ育った女優で後に「ミッション:インポッシブル2」(2000)のヒロイン役で知られるようになるタンディウェ・“タンディー”・ニュートンが扮した役名も同じタンディウェだ(※「ミッション:インポッシブル2」のヒロインに彼女を推薦したのは当時トム・クルーズと結婚していたニコール・キッドマンで、本作での共演が繋いだ縁)。映画のオープニング・クレジットにはテイラー、ニュートン、キッドマンの順に俳優ではこの3人の名前だけが登場するから、キッドマンは主演のその2人に次いで“3番目に重要なキャラクター”である準主役の役どころを演じた。やはり「君といた丘」同様「マッドマックス」シリーズのジョージ・ミラー監督がプロデューサーのひとりに名を連ね、全豪映画界で最も権威ある第32回オーストラリア映画協会(AFI)賞(現オーストラリア映画テレビ芸術アカデミー賞)では6部門にノミネイトされ(※本作が公開されたのは1991年だが第32回AFI賞授賞式はその前年の1990年に開催)、作品、美術、編集賞を受賞した(受賞を逸したのはダニーの親友役を演じたバーソロミュー・ローズの助演男優、音響、撮影賞)。

ノア・テイラー(右)とタンディウェ・“タンディー”・ニュートンが引かれ合う男女高校生役で主演
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女子高のツンとしたお嬢様ニコラ役のニコール・キッドマン
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 全編シドニー及びシドニーが州都であるニュー・サウス・ウェールズ州で撮影が行われ、1960年代半ばという設定の下、全寮制の名門男子高と、大きな湖を隔てて向こう岸にあるこちらも全寮制の名門女子高を舞台に、たまに開催される両校の交流の場を通じて出会う1組の男女学生の恋が物語の主軸となる。ダニー役だけでなく彼の両親役も「君といた丘」と同じ俳優が演じるが設定に若干の変更が加えられ、「君といた丘」ではいじめられっ子ではあったものの言語障害はなかったダニーが本作では吃音症という設定になっている。前作との関連性はほとんどないため前作を観ていなくても十分楽しめるが、ダニーが本に挟んでいる写真の女の子は「君といた丘」の主要登場人物のひとりでダニーが片思いしていたフレヤ(ロイン・カーメン)である。ダニーはここでもいじめられっ子、アフリカ人のタンディウェもアングロサクソン系ばかりの女子高にあまり馴染めず、そんな二人が次第に引かれ合っていく姿がとても自然に描かれる。といっても二人が恋に落ちるのは、両者がそれぞれの学校における“マイノリティ”だからというだけではない。名門校とはいえ男子も女子も大半は頭が空っぽな中、ダニーとタンディウェには知性があり、見た目もギーク全開なダニーも、全校生徒の中で唯一のアフリカ人であるタンディウェも、互いの外見など気にならず、最初は知性に引かれ、そしてどちらも芯は強いという性格に引き寄せられていく。ノア・テイラー、タンディウェ・ニュートンともにとても新鮮な魅力に溢れており、自然体の演技で説得力がある。ノア・テイラーは本作の5年後、ジェフリー・ラッシュがオーストラリア人俳優として史上初の米アカデミー主演男優賞を受賞したオージー映画「シャイン」(1996)で主人公の大人時代を演じたラッシュに対し、ラッシュに引けを取らない存在感の青年時代役を好演し海外でも注目を集め、アンジェリーナ・ジョリー主演の「トゥームレイダー(Lara Croft: Tomb Raider)」シリーズのブライス役などで知られるようになる。

ニコール・キッドマンとノア・テイラー
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父兄を招いての学校の出し物の練習でダンスを踊るタンディウェとニコラ9

 そんな中、女子高生のリーダー格ニコラ役のニコール・キッドマンも準主役としての輝きを見せる。1983年に16歳でデビューしたころからツンとした表情が大の得意なキッドマンは、ここでは役柄上も終始ツンとしており全女生徒の中でも筋金入りのお嬢様を演じる。意地悪そうに見えながらもダニーとタンディウェ同様ニコラも周囲の生徒たちを子供っぽいと感じていて、ダニーとタンディウェに対し冷ややかな態度を崩さず決して優しく接するわけではないが二人の関係を邪魔するわけでもなく、“かっこいいお嬢様”である。後半では深夜、タンディウェと部屋で二人きりの時に、ニコラが隠し持っていた酒をグラスに注ぎタンディウェにもすすめ、二人でちびちび飲みながら今まで誰にも話したことがなかった出来事を淡々とタンディウェに語って聞かせるシーンもあり、さすが後のオスカー女優といった演技力を感じさせる。ニコール・キッドマンは本作の2年前の主演作「デッドカーム戦慄の航海」(1989)が後に最初の夫となるトム・クルーズの目に留まり、クルーズの指名により「デイズ・オブ・サンダー」(1990)でクルーズの相手役に抜擢されハリウッドへ進出、1991年の本作を最後にもっぱらハリウッド映画ばかりに出演し、母国であるオーストラリア映画界からは長らく遠ざかっていたが、2015年の「虹蛇と眠る女」で24年ぶりにオーストラリア映画に出演したことが話題を集めた。ただ、厳密にはキッドマンはどちらもバズ・ラーマン監督の「ムーランルージュ」(2001)と「オーストラリア」(2008)、とオーストラリアで撮影されただけでなくこちらも合作とはいえ“オーストラリアも出資した映画”に出演している(ハリウッド色が強いその2作を除きオーストラリア映画界が全面的に主導権を握って製作された作品としては24年ぶりという意味である)。

女子高生のリーダー格ニコラ役のニコール・キッドマン(中央)7

 幸いダニーもタンディウェも校内で完全に孤立してはおらずどちらも親友がいて、タンディウェの二人の親友のひとりに後年「21グラム(21 Grams)」(2003)と「インポッシブル(The Impossible)」(2012)で2度オスカー主演女優賞にノミネイトされる無名時代のナオミ・ワッツ(「ペンギンが教えてくれたこと」「美しい絵の崩壊」※ほか彼女が出演したオージー映画一覧はこの画面一番下に掲載!)、そしてダニーの親友役を演じたバーソロミュー・ローズは本作出演者の中から唯一、AFI賞助演男優賞にノミネイトされた。

ともにタンディウェ(中央)の親友役のナオミ・ワッツ(左)とキム・ウィルソン
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ダニーの親友役でAFI賞助演男優賞にノミネイトされたバーソロミュー・ローズ(右)
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 本作公開と同じ1991年、やはり1960年代シドニーのカソリック系女子高を舞台にしたテレビミニ・シリーズ「ブライズオブクライスト」がオーストラリアで製作・放映されており、そちらではナオミ・ワッツが主要キャラの女子高生役で出ているだけでなく、本作でのもうひとりのタンディウェの親友でいつもワッツを含めた3人でつるんでいる女子高生役のキム・ウィルソンも「ブライズオブクライスト」では主要キャラの女子高生、さらにそこでもワッツの親友役。やはり本作でダニーをいじめる男子高生グループのリーダー格を演じたジョシュ・ピカーも「ブライズオブクライスト」に高校生役で出演している。女子高と男子高の交流の場である夜のダンス・パーティなど本作と「ブライズオブクライスト」には共通したシーンもあり、「ブライズオブクライスト」には「マイ・レフトフット」(1989)でオスカー助演女優賞を受賞したアイルランド出身の実力派女優ブレンダ・フリッカー、そしてナオミ・ワッツ同様まだ無名だったころのラッセル・クロウも出演、テレビドラマとはいえ非常に格調高い名作なので機会があればそちらもぜひ観賞をおすすめ。

左からナオミ・ワッツ、キム・ウィルソン、タンディウェ・“タンディー”・ニュートン4

ダニーをいじめるイヤな男子高生役のジョシュ・ピカー6

 男子生徒ではもうひとり、余計なことを言って別々のシーンでそれぞれのシーンの教師に「後で職員室に来なさい」と2度も注意を受ける役で、いくつかのオージー映画にチョイ役として顔を出しつつその後、芸能界からは遠ざかり2006年になんと東大で博士号を取得し、現在はアイルランド国立大学コーク校アジア研究学の教授という驚きのキャリアのキリ・パラモア(「ケリーギャング」「トゥーハンズ銃弾のY字路」)が、そして男子高の厳格な教師役にマーシャル・ネイピア(「デッドハート」「ベイブ」)が扮している。

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 終盤近くを除きほぼ全編、両校どちらかの敷地内のみで物語が進行し、1960年代オーストラリアの全寮制の名門ハイ・スクールはこんな感じだったのかという点でも最後まで興味深く観賞できる。

STORY
 1965年、17歳のダニー(ノア・テイラー)はニュー・サウス・ウェールズ州の田舎にある全寮制の男子高で学んでおり、ギークな見た目と吃音症のせいでいじめっ子たちの標的。大きな湖を隔てて男子高の対岸にあるこちらも全寮制の女子高に、ウガンダ人の父とケニヤとイギリス二重国籍の母を持つタンディウェ(タンディウェ・“タンディー”・ニュートン)が転入してくる。タンディウェはネイティヴ・イングリッシュを話せるが、心ない女生徒たちからは野蛮人を見るような目で見られる。だがダニーもタンディウェも低脳な男子や女子のことなど気にもしていない。ある日、両校の交流を兼ねての討論会が行われ、それぞれの学校の代表のひとりに選ばれ皆の前でスピーチしたダニーとタンディウェは、互いのスピーチからうかがい知れるそれぞれの知性に引かれ…。

●ニコールキッドマン出演のその他のオージー映画(テレビドラマ含む):「LION/ライオン 〜25年目のただいま〜」「虹蛇と眠る女」「オーストラリア」「ムーラン・ルージュ「ニコール・キッドマンの恋愛天国」デッド・カーム/戦慄の航海」「最も危険な悪女(おんな)」「ニコール・キッドマン in シャドウ・オブ・ブロンド」「ウインドライダー」「BMXアドベンチャー」「ブッシュ・クリスマス

●ナオミワッツ出演のその他のオージー映画(テレビドラマ含む):「ペンギンが教えてくれたこと」「美しい絵の崩壊」「ケリー・ザ・ギャング」「ストレンジ・プラネット」「ブライズ・オブ・クライスト「ニコール・キッドマンの恋愛天国」

「ニコール・キッドマンの恋愛天国」予告編

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