「アートは人と世界を繋ぐ架け橋」
アート・ガイド
浜田千恵さん
Chie Hamada
【※千恵さんの動画コメントありのアボリジナル・アート展「ヨルングの力」紹介動画はこちら!】

「夫の転勤でボストン、大阪、シンガポール、東京で数年ずつ暮らした後、2021年からシドニー在住です」
ザ・ドメインのNSW州立美術館と、ニュートラル・ベイに現存する20世紀オーストラリアを代表する児童文学作家メイ・ギブスが実際に住んでいたメイ・ギブス記念館「ナットコート」で来館者のための館内ガイドとしてヴォランティア活動を行っている千恵さん。大学卒業後、テレビドラマの制作会社に就職し5年間、最初はアシスタント・プロデューサーとして、その後プロデューサーとして多数のテレビドラマ制作に携わった。撮影が始まると連日、早朝から深夜まで仕事というのが当たり前の厳しい世界ではあったがやりがいもあり、結婚・出産後も続けたいと会社に願い出ていたが…。
「いざ出産したら、現実的に育児しながら番組制作の仕事は無理でした。それでテレビ業界は諦めざるを得ず、会計事務所で経理の仕事を、その後、夫の最初の転勤先のボストンでは英語の勉強に明け暮れ、大阪に移ってからは小中学校に海外から英語教師を派遣する教育機関で働きました」
とここまでの経歴は現在のアート関連とは何ら無関係なように見えるが、転機が訪れたのはその次のシンガポールだった。
「シンガポールにある3つの主要美術博物館で日本人の来館者の皆さんに案内するヴォランティア・ガイドを募集していて、応募したら採用され、2年間ガイドを務めました。日本だとアートってなんとなく敷居が高いイメージがあったんですが、シンガポールはもっと市民に開かれていて常設展は入場無料だし、また第二次世界大戦中の日本軍の占領についてなど、当然ですが日本人とシンガポール人では目線が異なり、とても興味深いなと感じました。キュレイターはどういう思いでこの展示をしているのかなあとアート業界の仕事にも興味を持ちました」
夫の次の転勤で東京に戻った際、一念発起して再度大学に入学し2019年、学芸員の資格を取得すると同時に川崎浮世絵ギャラリーのオープニング・スタッフとして採用された。
「私は学芸員の資格を取ったばかりでしたので最初は当然お手伝い的な仕事だと思っていましたが、私が雇われてすぐ一人しかいない学芸員の方が辞めてしまい、いきなり私に学芸員のポジションが回ってきて。学芸員としても経験ゼロだし浮世絵のことなど何も知りませんでしたので、浮世絵の専門家の方々について朝から晩まで勉強でした(笑)」
浮世絵は色落ちを防ぐため永続的に展示することはできず川崎浮世絵ギャラリーでは4週間ごとに展示作品を総入れ替え、そのたびに次はどの作品を何点、どんなふうに展示するか、展示作品脇のパネルに付ける説明文に至るまで一つひとつ千恵さんが手がけ、年に10回の展示入れ替えという忙しさの中でも充実した生活を送っていた。
「学芸員の仕事は本当に楽しくて、2021年に夫がシドニーへ転勤することが決まった際、私は日本に残りたいほどでしたが学芸員としてもガイドとしても、家族のサポートなしではなし得ませんでしたし、娘がオーストラリアへ行きたいというので娘の希望を尊重し、私もシドニーへ来ました」
人生の変化を潔く受け入れて、その時なりに精一杯生きる女性という印象が強い。シドニーでも2つの美術館・記念館でのガイドの活動を満喫している。
「州立美術館が所蔵しているものの、やはり色落ちの懸念からいつも展示されているわけではない浮世絵が何点もあり、私の浮世絵専門学芸員としてのバックグラウンドから予約制により10人ほど集まったら浮世絵作品約20点を一緒に観賞するプライヴェイト・ツアーも始めましたので、興味がおありの方はぜひ私までご連絡ください。私がシドニーでガイドになった2022年に州立美術館の新館がオープンしました。新館の一番下の階は第二次世界大戦中、軍艦の給油タンクだったのですが、それはシンガポールが日本軍に占領されたためシンガポールにあった英連邦軍のタンクが使えなくなったことから急遽シドニーに造られたという背景があります。新館は日本の建築家によってデザインされており、日本とシンガポールとシドニーの、過去を乗り越えた現在の良好な繋がりを知って、感動で鳥肌が立ちました。アートにも同じことがいえ、自分とは無縁だと思っていたことが実は繋がりがあることが分かったり、ガイドの活動を通じてつくづく思うのは、アートは人と世界を繋げる架け橋だということです。『一期一会』の気持ちを大切に、これからもガイドを続けていきたいと思っています」
【※お知らせ】千恵さんはご主人のシドニー駐在任期満了に伴い2025年11月に日本へ帰国しましたが、今後、東京でも「Chieとアート散歩 in Japan」と題して浮世絵摺り体験やお香体験(ともに有料)などを開催していくとのことなので興味のある人はぜひ千恵さんまで問い合わせを!(千恵さんのE-mailアドレス:ukiyoe.ichie@gmail.com)
日本語ガイド・ツアー – info
千恵さんのE-mailアドレス:ukiyoe.ichie@gmail.com
【NSW州立美術館(Art Gallery of NSW, Art Gallery Rd., The Domain, Sydney)】●新館(北館:North Building)常設展(完全無料):毎週日曜1pm(開始時間前に新館ロビーに集合) ●旧館(南館:South Building)常設展(完全無料):毎週金曜11am(開始時間前に旧館ロビーに集合) ●特別展「マグリット展」(入場料あり):2025年2月2日までの毎週日曜11am(事前に「マグリット展」のチケット購入の上、開始時間前に旧館地下2階「マグリット展」の入り口に集合) ●浮世絵プライヴェイト・ツアー(完全無料):千恵さんに問い合わせを *公式サイト:artgallery.nsw.gov.au(※浮世絵ツアー以外は千恵さんを含めた日本人ガイド・グループの当日の担当者が催行)
【メイ・ギブス記念館「ナットコート」(May Gibbs’ Nutcote, 5 Wallaringa Ave., Kurraba Point, Neutral Bay)】(入館料あり):*日本人ガイドは2人いるので日本語ガイド希望の場合、事前に千恵さんではなくナットコートまで連絡を *公式サイト:maygibbs.com.au
※浜田千恵さんが館内ガイドを行っている会場に実際に足を運ぶ前にどんな展示があるのか知りたい人は下記のジャパラリア公式YouTubeチャンネルのそれぞれの該当取材動画をチェック!
【NSW州立美術館新館(北館)】2022年末にオープン、建築デザインを手がけたのは日本が世界に誇る建築家ユニット「SANAA(サナア)」(※動画視聴はこちら!)
【NSW州立美術館旧館(南館)】150年前の1874年に開館、常設展に1893年開催の米シカゴ万博でのオージー画家と日本人画家の接点が!?(※動画視聴はこちら!)
【特別展「マグリット」】NSW州立美術館旧館で開催中のシュルレアリスムの巨匠マグリットのオーストラリア初の回顧展、閉幕間近!(※動画視聴はこちら!)
【メイ・ギブス記念館「ナットコート」】日本でも出版された「スナグルポットとカドルパイ」の作者の生前のアトリエ兼住居内部をそのまま一般公開(※動画視聴はこちら!)
(※動画視聴は↓以下の画像ではなく↑上の赤い文字をクリック♪)

【※ほかにもまだまだたくさんいる「輝く女性たち」のリストはこちら!】
