ラッセル・クロウとヒューゴ・ウィーヴィングの初受賞作品(映画「証拠」)

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OzFilm

※2025年9月25日更新

証拠

原題:Proof

(オーストラリア、日本ともに1991年公開/86分/MA15+/ドラマ/DVD、Googleプレイ、Apple TV、Amazonプライムで観賞可能)

監督:ジョスリン・ムーアハウス
出演:ヒューゴ・ウィーヴィング/ラッセル・クロウ/ジュヌヴィエーヴ・ピコー

(※以下、文中の紫色の太字タイトルをクリックすると該当作品の本コーナーでの紹介記事へとジャンプします)

 オーストラリアのお隣ニュー・ジーランド出身だが俳優としての初期の活動の場はオーストラリアだったオスカー男優ラッセル・クロウ(「人生は上々だ!ハーケンクロイツネオナチの刻印ブライズオブクライスト」)と、同じくハリウッドでもその地位を築いたオージー男優ヒューゴ・ウィーヴィング(「ロード・オブ・ザ・リング」三部作、「マトリックス」三部作/※ほか彼が出演したオージー映画一覧はこの画面一番下に掲載!)の2人が世界的に有名になる前に共演し、全編メルボルンで撮影された1991年公開のドラマ映画。全豪映画界で最も権威ある第33回オーストラリア映画協会(AFI)賞(現オーストラリア映画テレビ芸術アカデミー賞)において主要8部門にノミネイトされ、ウィーヴィングに初候補にしていきなり主演男優賞を、本作が3本目の映画出演だったクロウにも初の助演男優賞をもたらした記念すべき作品であるだけでなく、本作で監督デビューした女性監督ジョスリン・ムーアハウス(「リベンジャー 復讐のドレス」)も監督賞と脚本賞を、と作品賞を含む6部門を受賞(もう1部門は編集賞)、それも初受賞者が3人もいるという点も見逃せない(受賞を逸したのはジュヌヴィエーヴ・ピコーの主演女優賞と音響賞の2部門)。また、海外でも仏カンヌ映画祭や東京国際映画祭など名だたる映画祭に出品され高評価を得た。

左からラッセル・クロウ、ジュヌヴィエーヴ・ピコー、ヒューゴ・ウィーヴィング
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プリシラ」(1994)でウィーヴィングがワールド・ブレイクするのは本作の3年後、クロウは本作の前年、映画初主演作「ザ・クロッシング」(1990)でAFI賞主演男優賞にノミネイトされた期待の新人で、本作での助演男優賞受賞の翌92年の映画ハーケンクロイツネオナチの刻印で同主演男優賞を受賞し海外でも一躍脚光を浴びた。ムーアハウス監督も本作を機にハリウッドに進出、ウィノナ・ライダー主演の「キルトに綴る愛(How to Make an American Quilt)」(1995)などを監督している。2015年の監督作品でオスカー女優ケイト・ウィンスレットをイギリスから招いて撮影されたオージー映画「リベンジャー 復讐のドレス」ではウィーヴィングを主要キャラのひとりに、ジュヌヴィエーヴ・ピコーは端役だったが再度起用している。

視覚障害者マーティン役でAFI賞主演男優賞受賞のヒューゴ・ウィーヴィング
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20代後半だったころのラッセル・クロウが魅力的な青年アンディ役を好演しAFI賞助演男優賞を受賞
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受賞は逸したものの陰のあるシリア役でAFI賞主演女優賞候補となったジュヌヴィエーヴ・ピコー
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 マニアックな映画ファンであれば、本作がイタリアン・ホラーの帝王ダリオ・アルジェント監督の初期の映画「私は目撃者(The Cat O’ Nine Tails)」(1971)に通じるものがあることが分かるだろう。本作は純然たるドラマ、「私は目撃者」はジャッロ(イタリアン・ホラー・サスペンス)だが、両者とも主人公は視覚障害者で、本作ではウィーヴィング演じる視覚障害者マーティンが見えない目の代わりにカメラを持ち歩き写真を撮ることで彼の人生の“証拠”を得ようとし、「私は目撃者」は邦題がズバリ代弁しているが視覚障害者の男性が“目撃者”となって連続殺人事件に巻き込まれていくというもの。さらにもうひとつの共通点は、両作品とも主人公には彼らの“目”となって代わりを果たす“助っ人”が準主役として存在しているということ。本作ではその役アンディをクロウが演じる。やはりマニアックな話だが、本作中、マーティンがひとりでイタリアン・レストランに出かけるシーンは、アルジェント監督の最大のヒット作である1977年のオリジナル版「サスペリア」で、やはり視覚障害者のキャラクターがドイツ料理店でひとり食事をするシーンを彷彿させる。

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 本作は一人暮らしの視覚障害者マーティンと、彼の家の通いのハウスキーパーで、こちらは受賞を逸したがAFI賞主演女優賞候補となったジュヌヴィエーヴ・ピコー演じるシリア、そしてマーティンがひょんなことから出会う青年アンディ、この3人のみを主軸に描かれ、意外な三角関係へと発展していく。ウィーヴィング、ピコー、クロウ、3人とも素晴らしい演技を見せ、ピコーだけはハリウッドへは進出しておらず、オーストラリア国内での知名度も決して高くはないが、映画やドラマ以上に数多くの舞台に出演している。ちなみにムーアハウス監督の夫はトニ・コレット主演のオージー映画「ミュリエルの結婚」(1994)やジュリア・ロバーツ主演のハリウッド映画「ベスト・フレンズ・ウエディング(My Best Friend’s Wedding)」(1997)のP・J・ホーガン監督で、ムーアハウス自身も「ミュリエルの結婚」ではプロデューサーのひとりとして名を連ね、やはり「ミュリエルの結婚」にはピコーがミュリエル母子の万引きを警察に通報する意地悪そうな主婦役で出演している。本作ではラッセル・クロウとの絡みもある“憂いのある美女”役だったのが、本作からわずか3年後の「ミュリエルの結婚」ではどこから見ても魅力のかけらもない中年の主婦役に徹しており、そういう意味でも“演技派”である。

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 演技力とは関係ないが、若かりしころのラッセル・クロウは自分の裸のお尻が見えるシーン程度は全く抵抗がなかったようで、何本かの映画で惜しげもなく自慢の(?)お尻を披露していて、本作も同様。終始真面目な映画というわけでもなく、大笑いできるシーンも用意されているし、シリアのミステリアスな行動などにも注目。

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 3人以外の出演者の出番は少ないが、マーティンの若くして亡くなった美しい母親役にヘザー・ミッチェル(「パームビーチ」「ミュリエルの結婚」※ほか彼女が出演したオージー映画一覧はこの画面一番下に掲載!)が、そしてアンディとマーティンがドライヴイン・シアターで映画を観るシーンで2人に絡んでくる不良3人組のひとりに本作の翌年、ラッセル・クロウと再度共演した「ハーケンクロイツネオナチの刻印」で主要キャラクターを演じAFI賞助演男優賞候補となるダニエル・ポロックが扮している。

ドライヴイン・シアターでアンディ(ラッセル・ウロウ:中央)に絡んでくる不良役で出演のダニエル・ポロック(右)
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 視覚障害者のマーティンは誰に対しても心を閉ざし、カメラを自分の目の代わりにすることによってのみ、自分が見ることができたはずの“証拠”をつかむことができると信じ込んでいる。まだ幼い子供だったころ、マーティンが今は亡き母親に頼んで買ってもらったカメラで初めて撮影した写真に写っていたのは何だったのか? 意外な結末に、自然な涙が目に溢れるはず。

【余談】記者はラッセル・クロウと“会った”ことはないが、シドニーの街中で2度“遭遇”したことはあり、一枚だけ、ぼんやりとしか写っていないが記者自身がその際に撮影した証拠写真もありのラッセル・クロウ目撃談を紹介したジャパラリア公式YouTubeチャンネルのその投稿動画はこちら

STORY
 生まれつき視覚障害者のマーティン(ヒューゴ・ウィーヴィング)は、一人で暮らす家の中の自分の通り道にわざと物を置いてマーティンをつまづかせたりする意地悪な通いのハウスキーパー、シリア(ジュヌヴィエーヴ・ピコー)を、それでもクビにはせず、二人のよそよそしく冷たい奇妙な関係が続いている。ある日、レストランでキッチン・ハンドとして働く青年アンディ(ラッセル・クロウ)はひょんなことからケガをした野良猫をマーティンと一緒に獣医のところへ連れていくことなり、アンディの素直さを買ったマーティンは、アンディに定期的に会って自分が趣味で撮る写真に何が写っているかを一枚ずつ説明してほしいと頼む。マーティンは最近、愛犬を連れて一人で公園に散歩に行くたびに、鎖から放した犬が家に帰る時間になって名前を呼んでもなかなか戻ってこない事実を不思議に思っていたが、ある日、マーティンの散歩に同行したアンディが目にしたのは、不適な笑みを浮かべながら遠くのベンチに座り、犬の首輪をつかんで離さないシリアの姿だった…。

●ヒューゴウィーヴィング出演のその他のオージー映画:「リベンジャー 復讐のドレス」「虹蛇と眠る女」「リトル・フィッシュ」「ストレンジ・プラネット」「ベイブ(声)」「プリシラ「証拠」

●ヘザーミッチェル出演のその他のオージー映画:「パーム・ビーチ」「華麗なるギャツビー」「台風の目」「サンク・ゴッド・ヒー・メット・リズィー」「ミュリエルの結婚「証拠」

「証拠」予告編

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