サラ・ブライトマン主演! 28年ぶりにオーストラリアで再演のミュージカル「サンセット大通り」

キャッツ」「オペラ座の怪人」「エビータなどで知られるアンドリューロイウェバー作曲のミュージカルサンセット大通りがイギリスの大スターサラブライトマン主演の下2024年5月から8月上旬までのメルボルン公演に続き8月下旬にシドニーに巡演11月1日までシドニーオペラハウス内ジョーンサザランドシアターにて絶賛ロングラン公演中!

左から執事マックス役のロバート・グラッブ、ノーマ・デズモンド役のサラ・ブライトマン、ジョー役のティム・ドラクスル
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「サンセット大通り」は1950年に公開されたビリー・ワイルダー監督による同名ハリウッド映画がオリジナルで、映画版は第23回アカデミー賞において作品、監督、主演男女優、助演男女優賞の主要6部門を含む11部門にノミネイトされ、脚本、作曲、美術監督賞の3部門を受賞した。サイレント映画時代の往年の大女優という設定の主人公ノーマ・デズモンド役を、実際に無声映画時代に名声を築き上げたハリウッドの大スター、グロリア・スワンソンが演じリアリティをもたらしたこともヒットの要因のひとつで、サイレント・スターだったスワンソンならではの目力ありありの迫真の“怪演”だけでなく彼女のターバン姿も強烈だったし、リアリティという点では実在の大手映画会社パラマウントが出てきたり、大御所映画監督セシル・B・デミルら多数が本人役で出演したことも説得力があった。

サラ・ブライトマンが衰えない美声とともに鬼気迫るノーマ・デズモンド役を熱演
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 同映画のストーリーを基にアンドリュー・ロイド・ウェバーが作曲したミュージカル版は1993年、ロンドンのウエスト・エンドでワールド・プレミアの幕を開け、アメリカでも同年まずLAで初演、翌94年にブロードウェイに巡演し、アメリカ版はどちらもハリウッドの大女優グレン・クローズがノーマ・デズモンド役を演じた(※グレン・クローズは2016年のウエスト・エンドと17年のブロードウェイ、と英米両国での再演の際にも同じ役で出演)。オーストラリア版は1996年に初演、メルボルンのみでの公演だったがもう一人の主人公ジョー・ギリス役に世界的に有名になる前のヒュー・ジャックマンが起用された。

ノーマはジョーが思いを寄せる若い女性ベティに嫉妬し…
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ノーマの屋敷のプール・サイドでくつろぐジョー
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 28年ぶりのオーストラリアでの再演に当たっては、ノーマ・デズモンド役にイギリスから日本でも名高いミュージカル界の大スターであるサラ・ブライトマンを招いていることが最大の話題で、オペラ・オーストラリア・オーケストラによる迫力ある生演奏をバックにブライトマンの衰えないソプラノ美声をたっぷり堪能させてくれる。ただ、ノーマ・デズモンドというインパクト大の役柄を考えるとブライトマンの声は少々甘ったるすぎるきらいがあり、また、ブライトマンは間違いなく才能豊かな“歌手”ではあるが、演技力の点ではノーマ・デズモンド役は非常に難易度が高く、正直、ブライトマンでは役不足だったかもしれない。ブロードウェイ版の初演が米アカデミー賞に8回もノミネイトされた演技派大女優グレン・クローズだったこともあり、ノーマ・デズモンド役でトニー賞を受賞したグレン・クローズと比べられると気の毒ではあるが、クローズの演技力には太刀打ちできない。

ノーマに忠実な執事のマックス
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ジョーは親友の婚約者ベティと互いに引かれ合い…
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 もうひとりの主人公で売れない脚本家ジョー・ギリス役にはオーストラリア人歌手・俳優のティム・ドラクスルが起用された。映画版ではウィリアム・ホールデンが演じ、男臭いホールデンと比べると童顔のドラクスルはやや頼りない印象があるが、親子ほど歳の離れたノーマが次第に男女の愛情を抱くようになるジョー役は、ドラクスルの母性本能をくすぐるタイプが合っているとも受け取れる。歌声は朗々としており、ソロ・ナンバーではところどころシャウトっぽく力を込めたりとメリハリを付けており見事。ドラクスルは、どちらも日本未公開だがオリヴィア・ニュートン・ジョンとレベル・ウィルソン出演の「フューベストメン」(11)やジェフリー・ラッシュとジュディ・デイヴィス出演の「スウィミングアップストリーム」(03)などのオーストラリア映画にも重要な役どころで出演している。

セシル・B・デミル監督に会いにパラマウント映画社のスタジオに乗り込むノーマ
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ノーマの屋敷を抜け出し友人とニュー・イヤーズ・イヴのパーティで過ごすジョー
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 さらにもうひとりの主要登場人物でノーマの屋敷で執事として働く、ノーマに忠実なマックス役のロバート・グラッブも大御所オージー俳優で、こちらはどちらも日本でも公開されたジュディ・デイヴィスとサム・ニール共演の「わが青春の輝き」(79)やメル・ギブソン主演の「誓い」(82)などの名作オーストラリア映画に出演、若き日のジュディ・デイヴィス扮するヒロインに思いを寄せる青年役を演じた「わが青春の輝き」でも晩餐会のシーンで美声を披露、オーストラリア映画協会(AFI)賞(現オーストラリア映画テレビ芸術アカデミー賞)助演男優賞にノミネイトされた。

パラマウント映画社のスタジオにて
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ノーマはジョーのために最高級のタキシードを仕立てさせる
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 映画版はシリアスな雰囲気が強かった一方、ミュージカル版はコメディの要素もふんだんに取り入れてあり、また、映画版でカルト的に有名になったノーマ・デズモンドによるいくつかの“名(迷)ゼリフ”はミュージカル版でも歌ではなくセリフで残されていて、同映画ファンを喜ばせている。舞台セットに衣装の豪華さは言うに及ばずで、ノーマ・デズモンドの古びた大邸宅や、パラマウントの撮影所、街のパブなどコンピューター制御により大型セットがスムースに転換する。コメディ色が強いとはいえ、ストーリーそのものは映画版に忠実で、自分が既に“過去の大スター”であるという現実を頑なに受け入れようとしないノーマ・デズモンドがクライマックスへと向けて見せる鬼気迫る表情に、哀れな女性像を重ね合わせることができるだろう。

STORY
 1949年、ハリウッドの売れない若手脚本家ジョーは、借金取りに追われ車で逃げていた途中、車が故障し、サンセット大通りにある古びた大邸宅の空いていた車庫に車を停める。その屋敷には、今では世間から忘れ去られたサイレント映画時代の大女優ノーマ・デズモンドが忠実な執事のマックスと暮らしており、ノーマはただの若者だと思っていたジョーが脚本家だと知るや、屋敷に住み込みでノーマが自ら書き起こした自身のカムバック映画の脚本を手直しするようにと半ば強引にジョーを雇う。ジョーに尊大な態度を取りながらも、ノーマは次第に親子ほど歳の離れた彼に恋愛感情を抱くようになる。そんなある日、映画界の巨匠セシル・B・デミル監督の秘書から電話が入る。ノーマは自分への出演オファーだと信じて疑わず、デミル監督に会いにパラマウントの撮影スタジオに乗り込むが…。

“Sunset Boulevard” – info

●会場:シドニー・オペラ・ハウス内ジョーン・サザランド・シアター(Joan Sutherland Theatre, Sydney Opera House) ●期間:2024年11月1日(金)まで絶賛上演中 ●開演:夜公演/火7pm、水〜土7:30pm、マチネ/水・木・日1pm、土2pm ●料金(※公演曜日・時間帯によって):*大人/プレミアム席$229〜$299、A席$189〜$259、B席$155〜$219、C席$119〜$179、D席$89〜$119、E席$69〜$79 *年金受給者・学生/プレミアム席$206〜$299、A席$170〜$259、B席$140〜$219、C席$107〜$179、D席$80〜$119、E席$69〜$79 *4人以上/プレミアム席$202〜$299、A席$166〜$259、B席$136〜$219、C席$105〜$179、D席$78〜$119、E席$61〜$79  opera.org.au

「サンセット大通り」2024年オーストラリア再演版予告編