ラスト・シーンですがすがしい余韻を残す名作アクション映画「マッドマックス 怒りのデス・ロード」

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※2024年6月17日更新

マッドマックス 怒りのデスロード

Mad Max: Fury Road

(オーストラリア、日本ともに2015年公開/120分/MA15+/アクション/DVDNetflixAmazonプライムApple TVで観賞可能!

監督:ジョージ・ミラー
出演:トム・ハーディ/シャーリーズ・セロン/ニコラス・ホルト/ヒュー・キース・バーン

(※以下、文中の紫色の太字タイトルをクリックすると該当作品の本コーナーでの紹介記事へとジャンプします)

 オーストラリアが世界に誇る映画「マッドマックス」シリーズ4作目「マッドマックス 怒りのデス・ロード」は、前作「マッドマックス/サンダードーム」(85)から実に30年ぶりとなる2015年に公開されるや1億5,000万ドルの製作費に対して全世界で興収3億8,000万ドルを超える大ヒットを記録、本国オーストラリア映画テレビ芸術アカデミー(※AACTAの頭文字から“アークタ”と呼ばれる)賞では主要11部門にノミネイトされ作品賞と監督賞を含み撮影、編集、作曲、美術、視覚効果、脚本、音響賞の合計9部門を受賞(受賞を逃したのは衣装デザイン賞とシャーリーズ・セロンの主演女優賞の2部門のみ)、米アカデミー賞でも10部門で候補となり作品賞と監督賞は逸したものの編集、衣装デザイン、メイクアップ&ヘアスタイリング、録音、音響編集、美術賞、と同年度最多の6部門を受賞した(作品賞と監督賞以外で受賞できなかったのは撮影と視覚効果賞)。

マックス(トム・ハーディ)とフュリオサ(シャーリーズ・セロン)
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 2024年5月下旬に日豪を含む全世界で劇場公開されたばかりのシリーズ5作目にして最新作「マッドマックス:フュリオサ(Furiosa: A Mad Max Saga)」は、今回紹介の4作目「怒りのデス・ロード」のヒロインである女戦士フュリオサの若き日、つまり「怒りのデス・ロード」より前の出来事を描いたスピンオフ映画で、時系列の順序としては「フュリオサ」を先に観てから「怒りのデス・ロード」を観たらより楽しめるかもしれないが、フュリオサを演じたのは4作目はシャーリーズ・セロン、5作目ではアニャ・テイラー・ジョイと別の女優だから、どちらを先に観てもそれぞれ楽しめるだろう。

 そんな本作「マッドマックス 怒りのデス・ロード」、タイトル・ロールであるマックス役は3作目までのメル・ギブソンに代わってイギリス人俳優トム・ハーディが、そして本作で初めて登場するもうひとりの主人公フュリオサ役に南アフリカ出身のオスカー女優シャーリーズ・セロンが起用され、オスカー受賞歴を持つハリウッド・スターが出演した数少ないオーストラリア映画でもある(※海外のオスカー俳優が脇役ではなく主役で出演したオーストラリア映画はメリル・ストリープ主演の88年公開の「クライインダーク」が最初で、その後も、本作と同じ2015年にケイト・ウィンスレットが主人公を演じた「リベンジャー 復讐のドレス」のみ)。

トム・ハーディ
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シャーリーズ・セロン
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 主人公2人以外も主要キャラクターはオール・スターで固められ、まず79年のシリーズ1作目で暴走族のリーダー、トーカッター役だったインド出身のオージー俳優ヒュー・キース・バーンが本作では悪の帝王イモータン・ジョーという全く異なる役柄で36年ぶりに再登場しシリーズ・ファンを喜ばせたほか、初めはイモータン・ジョー率いる白塗り戦闘集団ウォー・ボーイズのひとりだったのが、中盤以降はマックスとフュリオサ一行の味方となるニュークス役にイギリス人俳優ニコラス・ホルトが扮している。キース・バーンは本作の5年後、73歳で他界し本作が遺作となったが、メル・ギブソンやジョージ・ミラー監督同様、彼にとっても出世作にして代表作ともいえるシリーズが俳優人生最後の出演作品となったことは本望だったに違いない。

悪の帝王イモータン・ジョー(ヒュー・キース・バーン)
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ウォー・ボーイズのひとりで映画の中盤以降、重要な役割を演じるニュークス(ニコラス・ホルト)
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 ストーリー自体は単純で、核兵器による戦争で砂漠化し、環境汚染による疾病を抱える者も少なくない近未来、シタデルの砦を領土に君臨するイモータン・ジョーは、彼の健康な子を産むだけの道具として若く美しい5人のワイヴズ(妻)を幽閉していた。シタデルの女性大隊長フュリオサはイモータン・ジョーの信頼を得ていたが、シタデルから脱出する機会を狙っており、ワイヴズたちを密かに救出し、自ら運転する全3両編成の大型ウォー・タンクに匿って逃亡するのを、イモータン・ジョーがウォー・ボーイズを従えて追う。シタデルで囚われの身だったマックスも、ウォー・ボーイズのひとりで常に輸血が必要な身体であるニュークスの道中の“輸血袋”として連れ出され、追いつ追われつ繰り広げられる戦闘を、驚くべきことにCGは映画全体の10分の1程度しかなく、ほとんどは150人ものスタントマンを使って映像化した手に汗握る大迫力のアクション・シーンの連続で、2時間という上映時間の長さを感じさせない見せ方、そして、アクション映画でありながら、きちんと“人間ドラマ”も描かれている点は、さすが1作目から一貫して手がけ本作に対する思い入れが誰よりも強いであろうジョージ・ミラー監督。撮影はアフリカ南西部ナミビアのナミブ砂漠のほか、南アフリカのケイプ・タウン・スタジオ、シドニーのペンリス、そして大勢のエキストラを動員してのシタデルのシーンはシドニーのフォックス・スタジオに巨大なセットを組んで行われた。ちなみにジャパラリア誌上グルメ・コラム「オージー・レシピ」でお馴染み、本職は映画やTVドラマの衣装担当のネヴィちゃんことネヴィル・カー(「ハーモニー <2018年版>」「パルス」「ハウスオブボンド」「ドリッピングインチョコレート」「ワイルドボーイズ」「イーストウエスト101  」「バッドコップバッドコップ」)も本編ではないが本編撮影後にシドニーで行われた追加映像を撮影するポスト・プロダクションに携わり、シタデルのエキストラたちの衣装コーディネイターを務めた。

全編にふんだんに盛り込まれた手に汗握るアクション・シーン
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巨大なセットを組んでシドニーのフォックス・スタジオで撮影されたシタデルのシーン
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 ヒュー・キース・バーン以外にも、出番や見せ場は少なくともちゃんと“役名”やセリフのあるキャラクターにはオージー俳優も多数起用されていて、イモータン・ジョーの5人のワイヴズ(妻)は5人ともモデル出身の女優が選ばれた中、アビー・リーとコートニー・イートンの2人、イモータン・ジョーの息子で屈強なリクタス・エレクタス役に元プロレスラーから俳優に転身したネイサン・ジョーンズ、ウォー・ボーイズのひとりスリット役にジョシュ・ヘルマン、シタデルのオーガニック・メカニック(生体整備士)役にアンガス・サンプソン、といずれも日本語版ウィキペディアにも単独で名前が載るオージー俳優たちが扮している。

イモータン・ジョーの5人のワイヴズ(妻)たち
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イモータン・ジョーの息子リクタス・エレクタス(ネイサン・ジョーンズ)
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ウォー・ボーイズのひとりスリット(ジョシュ・ヘルマン)
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 ほかにもイモータン・ジョーに加勢する援軍を率いる2人、まず人食い男爵(The People Eater)役にはジョン・ハワード(「ジャパニーズストーリー」「月に願いを」「クライインダーク」「ブッシュクリスマス」)、武器将軍(The Bullet Farmer)役にリチャード・カーター(「華麗なるギャツビー」「イーストウエスト101   」「タップドッグス」)、そしてこちらはフュリオサとマックス一行の味方である鉄馬の女たち(The Vuvalini)のひとりで種を持つ老婆(Keeper of the Seeds)役にメリッサ・ジャファー(「マイマザーフランク」「ブライズオブクライスト」「恋に走って」)と海外での知名度はさほどないが大御所オージー男女優も脇を固めている。特にメリッサ・ジャファー演じる種を持つ老婆は感動的な見せ場あり。

イモータン・ジョー(ヒュー・キース・バーン:手前)とその息子リクタス・エレクタス(ネイサン・ジョーンズ:左隣)
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 最初は敵だと警戒し合っていたマックスとフュリオサが互いに心を開き、ついには完全に信頼できる仲間として、自らの命を危険にさらしてでも助け合うようになる姿も自然に描かれ、ラスト・シーンですがすがしい余韻を残す名作アクション映画だ。

STORY(※本作のストーリーについては上記本文に掲載!)

「マッドマックス 怒りのデス・ロード」日本版予告編

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