「シドニーでの大学時代は1週間に
パン1斤と水だけという日々も(笑)」
弁護士(「山本法律事務所」代表)
山本智子さん
Tomoko Yamamoto
「地元小倉の大学の外国語学部英米学科だった3年生の時に1年休学して学生ヴィザでシドニーに来ました。その時仲良くなった同世代の女性が法学と会計を学んでいて、彼女から『あなたも法学とか会計とかに向いてると思うんだけど』と言われその気になり(笑)」
弁護士として26年のキャリアを誇り、シティのビジネス街に自身の法律事務所を構え第一線で活躍している智子さん。当初は1年間の語学留学のつもりで91年に来豪したが翌年にはNSW大学に入学、法学と会計を専攻した。休学期間の1年を過ぎたため在籍していた北九州大学は除籍となり、突然の進路変更に日本の両親からは半ば勘当扱いとなった。
「日本語教師のアルバイトでなんとか食い繋いでいましたが、シドニーでの大学時代は1週間にパン1斤と水だけという日々もありました(笑)。電気が止められたりも。若かったから生きていられましたね」
オーストラリアで弁護士になるには法学士だけでなく一般教養として別の学士も修めることが必要であるため、5年に及んだ大学生活の末に弁護士の資格を取得。大学5年生の時からシドニーの弁護士事務所でアルバイトを始め、卒業と同時にその事務所に正式に雇用された。学生時代に結婚した夫との子供を妊娠したのは就職から間もない時期だったが、オーストラリアでは産休の制度もしっかりしているため何も問題はないはずだった。ここまでは…。
「出産の数日前まで仕事して、『産後6週間で復帰します』と上司に伝えていざ娘を産んだものの、おっぱいも飲まないし、とにかく泣き止まない。最初はそういう赤ん坊もいると思っていましたし、医師にもそう言われ、精密検査も異常なしだったんですが、6週間で復帰なんてとても無理で仕事も辞めざるを得ず…。娘の首がやっと座ったのが生後9カ月で、原因が分からないまま1歳半になった時に診てもらった別の医師から遺伝子異常の研究チームがある小児病院をすすめられ、そこでの検査で初めて遺伝子に異常があることが判明しました」
夫の収入源で親子3人暮らしていくことはできたが、医師から娘には成長とともに発達障害や学習障害も出るだろうと告げられ、母親である自分にはそれを食い止めることはできないと悟った智子さんはどうしたか?
「私が献身的に娘の世話をすることで病状が良くなるんだったら何でもしたでしょう。でも治る病気じゃないんだったら自分を犠牲にしても私も娘も幸せにはならないと判断し、仕事を選びました」
こうして2001年に独立、既に移民法書士として活躍していた友人とともに事務所を設立、移民法と一般法務に関しての依頼を請け負うようになる。2003年には家族法に強い別の事務所に移籍しさらに仕事の幅を広げ、2007年に山本法律事務所を開業したが、これまで病気を持つ娘の育児をないがしろにしたわけでは決してない。
「娘はその後、脳と脊髄にそれぞれ異なる病気を発症し、7歳の時の開頭手術を含みこれまでに10回近くの大手術を受けています。小児病棟の時は親が同じ病室に寝泊りして身の回りの世話をすることが求められました。仕事も中断できないため病院にPCを持ち込み、手術・入院中も仕事してきました。退院後も介助が不可欠ですのでこれまでずっと夫との交代で行ってきました」
現在24歳のお嬢さんは3種類の難病を抱えながらもなんと母である智子さんと同じNSW大学に進み法学と文学を専攻、この年末に卒業予定という。
「術後の激痛は傍目にも凄まじく、退院後、痛みが続く中のリハビリも長く続きますが、娘には小さいころから『病気はひとつの特徴。あなたが何かをやらない、できないことの理由にならない』と言い続けてきました。そのせいか、本人、わりとのほほんとしてますね(笑)。でも弁護士になるよりもほかにやりたいことがあるようで、外国に目が向いています。法曹資格を取ったら一日も早く脱オーストラリアしたいようですので私と一緒に仕事をする、なんてことはないようです(笑)」
弁護士としての仕事について尋ねると「めちゃくちゃ地味な仕事です」と笑う。
「弁護士は下積みの長い仕事です。相当な根気と打たれ強さが求められると思います。目に見える結果や成果物の裏にはおそらく想像もできないような地味で時間のかかる作業やリサーチがあります。情報や知的財産は“タダ”、という考え方をお持ちの方も少なくありません。でも『山本さんに会えなかったら今の私はいません。山本さんのおかげです』などと言ってくださる方もあり、そうしたお言葉をいただいた時の喜びは筆舌に尽くしがたいものがあります。ここまでひたすら走り続けてきましたが、人生の折り返し地点を過ぎ、若いころはあくまで“ワーク”としてこなしてきたことを、今後は“ライフワーク”のつもりで、自分のためだけではなく、よりクライアントのための弁護士活動に取り組んでいきたいと考えています」
Yamamoto Attorneys
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