
※2025年4月28日更新
「アルヴィン・パープル」
原題:Alvin Purple
(オーストラリア1973年公開、日本未公開/95分/R/コメディ/DVD、Netflix、Stan、YouTubeムービー、Googleプレイで観賞可能)
監督:ティム・バーストール
出演:グレーム・ブランデル/ジャッキー・ウィーヴァー
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1973年に公開されるや大ヒットを記録したオージー・コメディ映画。翌1974年には続編の劇場映画「アルヴィン・ライズ・アゲイン(Alvin Rides Again)」が、1976年には再度「アルヴィン・パープル」のタイトルで全13話の連ドラが、さらには1984年に劇場映画第3弾となる「メルヴィン、サン・オブ・アルヴィン」まで製作・公開されたから、どれだけ人気だったかが分かるだろう。1973年公開当時はモノラル音声だったのが、後年DVD化されるに当たってステレオ、それもドルビー・デジタル5.1にリマスターされた事実も本作の人気の高さを物語っている。
グレーム・ブランデル演じる“全身フェロモン男”アルヴィン

ヒットの要因は一にも二にも、そして1970年代当時も今も、ポルノではない一般劇場映画としてハリウッドでは考えられないセックス描写にあり、日本で未公開なのも、これを日本で公開したら映画の半分近くはモザイク加工されて何が何だか分からなくなってしまったであろうからと思えるほど、その描写は大胆。主人公アルヴィン役のグレーム・ブランデルも多数の出演女優も脱ぎっぷりの良さはここまでやると健康的にさえ見えてくるほどで、アルヴィンも女たちもひたすら脱いではエッチする。
アルヴィンの性的魅力に一切引かれない初めての女性ティーナ役のエリー・マクルアは、若いころのオリヴィア・ハッシーを彷彿とさせる透明感ある美女

ということで、ジャンルとしては堂々の“セックス映画”ということになるが、当然、単なるポルノではないところにもヒットの理由がある。1960年代後半から1970年代にかけては、ロジェ・ヴァディム監督の「バーバレラ」(1967)に代表されるように、イギリスを含みヨーロッパでもこの路線(セックス・コメディ)が多数世に送り出されているが、それらはストーリーの発想そのものが“サイケデリック”とも呼べるような内容で、映像と音楽が盛り上げるエロティシズムは今観ても十分新鮮だし、それは本作も同様、奇抜でサイケな室内装飾などエッチシーン以外でも目を楽しませてくれる。全編メルボルン及びヴィクトリア州で撮影が行われ、当時のメルボルンの街並みや1970年代ファッションなども見どころだ。
1970年代前半にオーストラリアでセックス・シンボルとして名を馳せたイギリス出身の女優・歌手アビゲイルもオープニングのトラム(路面電車)のシーンに“シースルーを着た娘”という役で登場

主演のグレーム・ブランデル(「アリブランディを探して」「君といた丘」)は冒頭で触れた続編の映画版と連ドラ版にもすべてアルヴィン役で出演したものの日本ではほとんど無名に近く、海外作品では「スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐(Star Wars: Episode III – Revenge of the Sith)」(2005)のルウイー・ナベリー役がある程度で、ブランデル演じるモテてモテて仕方ない“全身フェロモン男”アルヴィン役は、本作で初めて彼のことを見る日本人にはさっぱりピンとこないだろうが“1970年代当時”ということを踏まえると、なんとなく理解できる。ザ・ビートルズのポール・マッカートニーや英国人俳優デイヴィッド・ヘミングスなどブランデルと同世代の当時の一部若手男性スターが持っていた、“ややトロンとした目”から漂う雰囲気には男臭さはないが若い女性たちの母性本能をくすぐり、そのハートを鷲掴みにしていたのも分からないでもない。
奥二重のトロンとした目が70年代当時の女性たちの母性本能をくすぐった(?)アルヴィン役のグレーム・ブランデル

そのほかの主演者陣では、後年2度のオスカー候補女優となる若き日のジャッキー・ウィーヴァー(「ペンギンが教えてくれたこと」「アニマル・キングダム」「ハーモニー <1996年版>」「ピクニックatハンギングロック」)が、アルヴィンの住むユニット(アパート)の隣人でアルヴィンにコーヒー用の砂糖を借りに来る2人目の女性、その名も“セカンド・シュガー・ガール”として登場、アルヴィンとのエッチシーンこそないものの大胆な全裸姿を披露している。“2人目”ということは1人目の“ファースト・シュガー・ガール”もいて、そちらはこちらも可憐な美人だった若き日のリネット・カラン(「ジャパニーズ・ストーリー」「マイ・マザー・フランク」「恋に走って」「君といた丘」)が演じ、カランも全裸シーンあり。ウィーヴァーは本作の2年前の劇場映画デビュー作で早々に全豪映画界で最も権威あるオーストラリア映画協会(AFI)賞(現オーストラリア映画テレビ芸術アカデミー賞)主演女優賞を受賞していたし、カランも1960年代から舞台での経験豊富な若手演技派女優だったから決して“駆け出し”というわけではなく、これが日本の女優だったら真面目なドラマ映画ならまだしもコメディ映画のヌード・シーンには応じなかっただろうが、オージー女優たちはある意味こういう点でもイージー・ゴーイングだったりして微笑ましい(※ウィーヴァーがAFI賞主演女優賞を受賞したのは本作と同じティム・バーストール監督の映画「ストーク」だったから、監督のために“一肌脱いだ”のかもしれない)。もう一人、アルヴィンと互いの全裸の身体にボディペイントし合いながら派手にエッチする相手役のクリス・マクエイド(「ホールディング・ザ・マン—君を胸に抱いて—」「ケリー・ザ・ギャング」「ベター・ザン・セックス」「ダンシング・ヒーロー」)は後年、日本でもオンエアされた連ドラ「ウェントワース女子刑務所(Wentworth)」シーズン1(2013)に囚人ジャックス・ホルト役でレギュラー出演した。
アルヴィンの隣人でアルヴィンにコーヒー用の砂糖を借りに来る女性役のリネット・カラン

とにもかくにも1970年代の性の解放を語る上で(その様子をかなりオーヴァーに描写としているとはいえ)、本作は真面目に、かつ大笑いしながら観るのが正しい観賞法といえる。ただし、決して子供には見せないでください。
STORY
ハイ・スクールの学生時代から本人の意志に反して女性にモテまくりのアルヴィン・パープル(グレーム・ブランデル)は、学校を卒業してウォーター・ベッドの訪問販売員になるや、今度はそれぞれの訪問先の家の女性にベッドの“試乗”に付き合わされて大忙し。そんなアルヴィンの“フェロモン”に目をつけた心理学者マクバーニー博士は、彼の診療所にカウンセリングに来る女性患者たちの“治療”と称してアルヴィンの“絶倫”な、いや、絶大な“才能”を利用することを思いつき…。


