NSW日豪協会主催の下、平安時代から続く宮中行事「庖丁式(ほうちょうしき)」が昨年11月20日、チッペンデイルのジャパン・ファウンデイションで開催された。
厳かな雰囲気の中で庖丁式を執り行った出倉憲秀さん

当日は、雅楽の典雅な音楽が流れる中、シドニー在住の料理研究家で日本食普及親善大使の出倉憲秀(けんしゅう)さん(※)が平安時代からのならわし通り宮中の男性が頭に被っていた烏帽子(えぼし)と、同じく男性の着衣である直垂(ひたたれ)を身にまとった庖丁師として、やはり当時の服装をした2人の男性介添人と巫女を演じた女性とともに招待客の見守る中、しずしずと会場に姿を現し、前方に設置されたまな板の上で厳かに式を執り行った。
庖丁式は平安時代前期の9世紀後半、優れた文化人で料理にも造詣が深かった光孝(こうこう)天皇の在位中に様式化されて以来、受け継がれるようになった宮中行事のひとつといわれ、食材に直接手を触れることなく、包丁とまな箸のみを使って魚を切り分ける厳かな儀式で、鎌倉時代以降、宮中だけでなく武家の間でも定着した。魚は本来は真鯛(まだい)や鯉(こい)などが用いられるが、オーストラリアならではということでTAS州産のサーモンが使用された。
招待客のひとりでシドニー在住の箏曲家・小田村さつきさんとにこやかに記念撮影に応じてくれた出倉さん

出倉さんは日本で本式の庖丁式の儀式手順を学び、25年前からシドニーでも再現するようになったとのことで、現代では日本食の料理人にもほとんど馴染みがない伝統と格式ある儀式を見事に再現、招待客全員、息をのむような静けさの中、出倉さんの包丁さばきに見入った。
式典の後はスモークサーモンを使ったフィンガー・フードや茶菓が振る舞われ、出倉さんは招待客一人ひとりとにこやかに談笑、帰りには全員に今回のイヴェントのスポンサーでもあるキッコーマンより同社製品が入ったギフト・バッグが進呈された。
※)「憲秀」は料理家としての名取名で、オーストラリアなど海外では本名の出倉秀夫(Hideo Dekura)さんとしてお馴染み
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●レストラン取材:スシトレイン・サリー・ヒルズ店
