一度入ったら抜け出せないカルト集団の村落!?(映画「ウープ・ウープ」)

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※2025年9月3日更新

ウープウープ

原題:Welcome to Woop Woop

(仏カンヌ映画祭で1997年ワールド・プレミアの後、オーストラリア1998年公開、日本2000年ヴィデオ・ソフト化/106分/MA15+/コメディ/DVDで観賞可能)

監督:ステファン・エリオット
出演:ジョナサン・シェック/スージー・ポーター/ロッド・テイラー/レイチェル・グリフィス/バリー・ハンフリーズ

(※以下、文中の紫色の太字タイトルをクリックすると該当作品の本コーナーでの紹介記事へとジャンプします)

 ドラァグ・クイーンたちのオーストラリア大陸横断を描いたヒューマン・コメディ映画「プリシラ」(1994)で世界的な大成功を収めたオージー監督ステファン・エリオット(「フューベストメン」)が「プリシラ」の次に取り組んだ作品で、1997年のカンヌ映画祭でのワールド・プレミアの後、翌1998年に全豪公開されたオーストラリアとイギリス合作のコメディ映画。主人公のテディ役にアメリカからジョナサン・シェックを招き、相手役に日本人にはあまり馴染みがないものの、メル・ギブソンやケイト・ブランシェットなどを輩出した、大卒と同じ学位が取得できる名門校、頭文字を取って“ナイダ(NIDA)”と呼ばれるシドニーの国立演劇学院出身の正統派で、日本でもオンエアされたオーストラリアの連ドラ「ウェントワース女子刑務所(Wentworth)」シーズン6から8(2017〜2021)まで囚人マリー・ウィンター役でレギュラー出演したオージー女優スージー・ポーター(「ベターザンセックス」※ほか彼女が出演したオージー映画一覧はこの画面一番下に掲載!)、脇を固めるのはヒッチコック監督の「鳥(The Birds)」(63)に主演したことにより世界的に名高い大御所スター、ロッド・テイラーと、バズ・ラーマン監督のデビュー作「ダンシングヒーロー」(1992)に主演のポール・マーキュリオ(「ハーモニー <1996年版>」)、そしてどちらも前半部分に1シーンだけとはいえオスカー候補女優レイチェル・グリフィス(「ほんとうのジャクリーヌ・デュ・プレ <Hilary and Jackie>」「ミュリエルの結婚」※ほか彼女が出演したオージー映画一覧はこの画面一番下に掲載!)に、こちらも女装キャラ“デイム・エドナ”が海外でも知名度の高いバリー・ハンフリーズ(「キャス&キムデレラ」)という豪華オージー俳優たちが出演。豪華といえば、日本でも放映されたアメリカのシットコム「ギリガン君SOS(Gilligan’s Island)」シリーズ(1964〜1967)などで知られるハリウッド女優のティナ・ルイーズがオープニング・シーンで顔を見せており、といっても本当に端役も端役なので、ルイーズを起用したのはエリオット監督が単に彼女のファンだったからだろうかと思うほど。チョイ役ではほかに名バイプレイヤーのオージー男優フェリックス・ウィリアムソン(「華麗なるギャツビー」「ストレンジプラネット」※ほか彼が出演したオージー映画一覧はこの画面一番下に掲載!)もオープニング・シーンのギャング役で登場。

アウトバックをヴァンで旅行中のテディ(ジョナサン・シェック)は道中、アンジー(スージー・ポーター)を拾い
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ヒッチコック監督の「鳥」の主演で世界的に名高い大御所オージー俳優ロッド・テイラーが脇を固める
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プリシラ」同様オーストラリアのアウトバックでのロケに加え、アメリカNYロケまで敢行、また、「サウンド・オブ・ミュージック」と「南太平洋(South Pacific)」というともに有名なミュージカル映画から代表的な歌のシーンの一部を映像とともにそのまま抜粋、とまあ話題性のあるお膳立てがあれこれそろっていたが、結果としては大失敗に終わってしまった作品。「プリシラ」を凌ぐ作品をとエリオット監督が意気込んだであろうことは容易に想像がつくが、残念ながらあらゆる点で“空振り”してしまっている。ロード・ムーヴィーかと思わせた前半から一転して、中盤近くから先はアウトバックにある謎のカルト集団の村落“ウープ・ウープ”での非現実的な出来事が描かれ、ついていけなかった観客も多いはず。“謎のカルト集団”といってもコメディなので基本は怖い集団ではないのだが、そこに住む誰一人、好むと好まざるとにかかわらず一生そこから抜け出すことができないというのが怖い点で、自分の意に反して気づいたらウープ・ウープに連れて行かれていて、当然のようにそこから抜け出したい主人公というのがジョナサン・シェック演じるキャラクター、テディだ。ウープ・ウープから脱出するには昼夜問わず銃を手にした見張りの目をくぐって立ちはだかる岩山を乗り越えなければならず(逃げ出そうとする者は容赦なく射殺される)、前述の「サウンド・オブ・ミュージック」からの有名なナンバー「すべての山に登れ(Climb Every Mountain)」が本作のテーマ・ソングともいえ、エリオット監督の意図したところは十分、分かるのだが…。日本でもヒットとした「プリシラ」に続く作品でありながら、日本では劇場公開もされずビデオスルーだった。ヴィデオ発売されただけでもマシだろうが現在に至るまで結局日本ではDVD化はされずじまい。

知らない間にアンジー(スージー・ポーター)と結婚したことになっていたテディ(ジョナサン・シェック)
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テディはアンジーの姉妹でアンジーとは正反対の物静かなクリスタル(ディー・スマート)に引かれ
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 救いは主要キャラを演じる3人の俳優が魅力的である点。ジョナサン・シェックは本作以外では自身が主役という出演作品はほとんどないものの、オリヴィア・ハッシー主演版の「ロミオとジュリエット(Romeo and Juliet)」(1968)で名高い巨匠フランコ・ゼフィレッリ監督の「尼僧の恋(英題:Sparrow)」(1993)やトム・ハンクスが監督した「すべてをあなたに(That Thing You Do!)」(1996)などで準主役級の役どころを演じた経歴の持ち主で、ラテン系の顔立ちだがクドさはなく、本作ではむしろさわやかな印象を残す(オープニングのNYのシーンでチンピラ詐欺師という役柄であることがはっきり描かれているが、その後すぐにオーストラリアに舞台を移してからは好青年そのもの)。スージー・ポーターのイカれまくったセックス依存症的な役柄もポーターのキュートさで憎めないし、ポーターは本作の3年後の2000年にデイヴィッド・ウェナムと共演した「ベターザンセックス」同様、本作でも見事な脱ぎっぷり。イカれ度合いとしては本作と同じ1997年公開の映画「エイミー」にベン・メンデルソーンの妹役で出演した時のキャラとも被る。ポーターは20代後半当時のそれら“奔放ハッチャケ系キャラ”を得意としたイメージに縛られることなく、その後、クールな大人の女性役や穏やかで優しい母親役もこなせる女優へと見事に成長し、現在に至る。そしてもうひとり、ウープ・ウープのリーダーであるダディ・O(オー)役のロッド・テイラーも、若かりしころハンサムだった面影はないもののさすがはかつてハリウッドでも名声を得たオージー男優としての存在感たっぷりだ。

 脇役では、大御所バリー・ハンフリーズはテディが前半の旅の途中に立ち寄るガソリンスタンドのオーナーで視覚障害者というさほど印象に残らない役だが、オープニング・シーンで登場の、ケバいメイクに銃を手にした女ギャング役のレイチェル・グリフィスは、スージー・ポーターとはまた別の意味でイカれたキャラを好演。一方、ハンフリーズやグリフィス以上の出番がありながら、本作の5年前の「ダンシング・ヒーロー」でセンセイショナルに映画デビューしたポール・マーキュリオは、本作ではなんとも珍妙な情けない格好のヘア・ドレッサーとして登場していて、そういう役柄とはいえ、やや切ない。

オープニング・シーンにのみ登場のレイチェル・グリフィス
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“ウープ・ウープ”はオージー・イングリッシュで“誰も知らない遠くの土地”といった意味を持ち、本作では一度入ったら抜け出せないという点を踏まえると十分怖そうなカルト集団の村落の名称だが、なんとなく間の抜けた響きだ。要するに全編すっとこどっこいなコメディで、25年以上も前の映画とはいえストレス社会の21世紀にあってこそ、何も考えずにただ笑いたい時にはこの程度のギャグセンスでもちょうどいいのかもしれない。

アンジー(スージー・ポーター)が手にしているチョコレート・バーについては後述の【映画に登場する実在のオージー・ブランド】に説明
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【セリフにおける英語のヒント(その1)テディとアンジーが初めて出会った際、アンジーが「あなたはセッポーなのね(You’re a seppo)」と言う“seppo”はアメリカ人を意味するオージー・スラング。

【セリフにおける英語のヒント(その2)男女問わず何人かの登場人物が言う“F○○k me dead”は「マジ?」とか「ウソでしょ?」といった驚きを意味するオージー・スラングだが当然、決して上品な表現ではないので日本人はくれぐれも真似しないように!

【映画に登場する実在のオージーブランド(その1)アンジーが前半のシーンで何度か食べているチョコレート・バーは大衆チョコレート・ブランド、キャドバリー・オーストラリアが製造・販売しているチェリー・ライプ(Cherry Ripe)で、その名の通りチェリーとココナツをチョコでコーティングしたもの。最初に発売されたのは100年以上前の1924年、つまり日本人にもお馴染みの別のオーストラリアのチョコレート菓子ティム・タム(1964年販売開始)などよりはるかに古い歴史を誇り、現在もどのスーパー、コンビニでも売られているほどオージーたちの間で絶大な人気だが、日本人の味覚にはイマイチ合わないため、それが日本では一切知られていない理由ともいえるだろう。

【映画に登場する実在のオージーブランド(その2)映画の中で登場人物たちが飲んでいる黄色い缶に赤いロゴ入りの缶ビールはオーストラリアを代表するビールのひとつ「XXXX(フォー・エックス)」で、奇しくも前述のチェリー・ライプと同じ1924年に販売開始。

STORY
 NYのチンピラ詐欺師テディ(ジョナサン・シェック)は、鳥かごから逃げてしまった愛鳥のコカトゥ“パンプキン”を追ってオーストラリアへと飛ぶ。北部準州(ノーザン・テリトリー)のアウトバックをヴァンで旅する途中、テディはアンジー(スージー・ポーター)を拾う。テディが独身で彼女もいないことを確認するや、アンジーはテディを激しく求め、二人はヤリまくりの旅を続けるが、ある日、アンジーに突然パンチを食らったテディが目覚めたのはアンジーの父“ダディ・O(オー)”(ロッド・テイラー)が君臨するアウトバックの奇妙な村落“ウープ・ウープ”で、テディは知らない間にアンジーと結婚したことになっていて…。

●スージーポーター出演のその他のオージー映画(テレビドラマ含む):「しあわせの百貨店へようこそ」「パルス」「イースト・ウエスト101   」「リトル・フィッシュ」「タップ・ドッグス」「ベター・ザン・セックス」「トゥー・ハンズ/銃弾のY字路」「エイミー「ウープ・ウープ」

●レイチェルグリフィス出演のその他のオージー映画:「ケリー・ザ・ギャング」「トエンティマン・ブラザーズ」「エイミー「ウープ・ウープ」ハーモニー(1996年版)」「ミュリエルの結婚

●フェリックスウィリアムソン出演のその他のオージー映画:「パーム・ビーチ華麗なるギャツビーザ・レイジ・イン・プラシッド・レイク」「ストレンジプラネット」「サンク・ゴッド・ヒー・メット・リズィー「ウープ・ウープ」

「ウープ・ウープ」予告編

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