ニコール・キッドマンの新春子供劇場?「BMXアドベンチャー」

bmx_posterBMXアドベンチャー
(※後に日本でソフト化された時の邦題は「ニコール・キッドマンのBMXアドベンチャー」)

BMX Bandits

(オーストラリア1983年、日本1985年公開/88分/G/アクション・コメディ)

監督:ブライアン・トレンチャード・スミス
出演:ニコール・キッドマン/ブライアン・マーシャル/アンジェロ・ダンジェロ/ジェイムズ・ラグトン/デイヴィッド・アーギュー

 

 今や押しも押されもせぬオージー・オスカー女優として知られるニコール・キッドマン(「LION/ライオン 〜25年目のただいま〜」「虹蛇と眠る女」「オーストラリア」)が16歳の時(撮影当時)に主演し、17歳になった1983年末に封切られた子供映画。そう、青春映画ではなくあくまでも小学生、せいぜい中学生までの子供を対象とした映画だ。とはいえ、同年度オーストラリア・アカデミー(AFI)賞(現AACTA賞)ではいずれも受賞を逸したものの悪者役のデイヴィッド・アーギュー(「誓い」)の助演男優賞候補を筆頭に、脚色、音響、編集賞の4部門にノミネイトされたから、子供映画と一蹴してしまってはキッドマンにも本作の関係者にも失礼というものだろう。

左からアンジェロ・ダンジェロ、ジェイムズ・ラグトン、ニコール・キッドマン
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 本作が公開された83年はキッドマンがデビューした年でもあり、厳密な意味でのキッドマンのデビュー作はほんの数日違いで先に封切られた別のオージー映画「ブッシュ・クリスマス」だが、「BMXアドベンチャー」が初主演作だ。いずれにせよデビューした年に2作もの劇場映画に出演したということで、キャリアのスタート地点から華々しかったことには変わりがない。キッドマンには10代の少女だった当時から既によっぽど光るものがあったのだろうが、果たしてそれが一体何であったのか、本作を観る限りでは誰にも想像がつかないのではないだろうか。もちろん可愛らしい。もともとキッドマンは“りんごちゃん”のような真っ赤なほっぺにチリチリ赤毛の女の子だったのだと思い出させられる。だが当時は本当にどこにでもいそうな女の子で、それ以上でも以下でもない。唯一、その後ハリウッドで大ブレイクしたキッドマンを見て考えられることだが、おそらくキッドマンの魅力は昔からどことなくツンとした表情にあり、本作で演じた役柄のように少々勝気なツンとした表情がよく似合う女の子を演じさせると抜群だという点に、ほかの女優にはないスター性を映画人が感じ取ったのかもしれない。

どこにでもいそうな普通の女の子だった16歳当時のニコール・キッドマン
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 本作のタイトルにあるBMXとはバイシクル・モトクロス、現在ではひとくくりにエクストリーム・スポーツと呼ばれるものの自転車版で、映画は中盤から延々と、悪者から追われて逃げる少年2人とキッドマンの3人のバイシクル・チェイスのシーンで綴られる(3人を追う悪者の大人たちは車でだったり自分の脚で走ってだったりする)。それ自体は大人が観てもそこそこ画面から目が離せない迫力があるし、子供が観たらもっとハラハラドキドキするだろう。娯楽用のプール施設によくある水の流れるトンネル式の滑り台を、3人が自転車を手に持ったまま滑っていく水中ジェットコースター・シーンなども観ていて楽しい。まだCG技術が皆無に等しかった80年代前半当時としてはカメラワークもそこそこ凝っているし、実際、これだけ長いアクション・チェイスの撮影は大変だったと思われるが、顔のアップ以外はすべてスタントというキッドマンたち3人にとっては本作の撮影は意外とラクだったかもしれない(キッドマンのスタント・シーンはキッドマンの背格好に似た女性が見つからず、18歳の男性スタント・パーソンがカツラを被ってこなした)。

悪者役のデイヴィッド・アーギュー(中央)が本作で豪アカデミー助演男優賞候補に
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 ストーリーには意外性がなく、子供向けなため残酷シーンもないし、悪者の大人たちは全員間抜けという子供映画にありがちな設定だが、日本でも2年後の85年に劇場公開されたぐらいだし、世界中の子供たちに共通してウケる映画だといえるだろう。撮影は全編シドニーで行われ、マンリーやノーザン・ビーチ、ワリンガ・モールなど、80年代前半のシドニーはこんなふうだったのかという風景描写も楽しめる。本作が本国オーストラリアで封切られたのはクリスマス直後の12月29日。日本の正月三が日の家族行事に飽きた子供たちがお年玉で新春映画を観に行くように、クリスマス・ホリデイに飽きたオーストラリアの子供たちも本作を観に映画館に足を運んでいたのだろうかと思うと、なんとなくほのぼのとした気持ちにさせられるというもの。

10代のころからツンとした表情がサマになっていたニコール・キッドマン(※キッドマンが手にしているドリンクについては後述)
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【セリフにおける英語のヒント本作で重要な小道具として登場するトランシーバーは、英語でも“tranceiver”という言葉が存在するものの、それは定置型の無線機のことで、つまり携帯式の無線機をトランシーバーと呼ぶのは和製英語。英語で携帯用無線機は、その機能をズバリ指す“ウォーキー・トーキー(walkie-talkie)”、そう、“歩きながら話せる”という意味を持つ赤ちゃん言葉なのだが大人にもその名称で呼ばれている。

【シーンに見るオージー・ライフスタイルニコール・キッドマンが紙パックのドリンクをストローで飲んでいるシーン(※上に掲載の写真)の飲み物は乳飲料で、日本ではこの形状の200ml入りなどの小型の紙パックは学校給食の牛乳などでしか見られないが、オーストラリアでは本作が公開された80年代当時だけでなく現在でも普通に市販されており、通常の牛乳のほかイチゴ、チョコ、コーヒー味が売られている。

Story

 BMXに夢中な2人の少年P・J(アンジェロ・ダンジェロ)とグース(ジェイムズ・ラグトン)は、ひょんなことから知り合った少女ジュディ(ニコール・キッドマン)と意気投合。自分たちの住む街にBMXコースを造ることを夢見る3人は、資金集めのために海で貝を採取してレストランに売ることを思いつくが、沖で3人が貝の代わりに見つけたのは海底に沈められた箱で、中には大量のトランシーバーが入っていた。実はこのトランシーバーは、ギャング団が次の犯罪のために密かに隠していたもので、3人はギャングの一味に追われる身となり…。

「BMXアドベンチャー」予告編

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